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第19話 7階フロアボスとの戦い

 魔晶核を拾って扉を開き、地下7階への階段がある部屋に入る。

 <彼方の海>だけが到達したという、未知の階層。

 ここからはさらに慎重に進まなければ……


 とりあえずダンジョン挑戦二日目の夜、またここで一晩を過ごそう。


 夕飯のパンを頂き、水分の補給。

 セーフティゾーンならではの落ち着いた時間。

 眠る前のひとときの語らい、アメルのなんとなくの一言から始まった。


「そういえば、ダリンさんが冒険者を目指そうと思ったきっかけってなんですか?」


 確かにお互い『外れ』であるにも関わらず冒険者になりたい共通点がありながら、理由については聞いたことがなかったし話したこともなかった。


「俺は……俺がいた孤児院、過去に結構偉大な冒険者が作ったものだったんだよな。

 そこで育てば、嫌でもその冒険者のあれこれが耳に入ってくる。活躍、功績、冒険譚。

 そのうち自然と自分も、そうありたい、そんな人生が送れればと願うようになったんだ」

「そうだったんですね」

「そして木刀を握って振り回してたな。結局適性は絵描きだったけど」

「男の子ねえ」


 頬杖をついて聞いていたシンシアがほっこりした感じで言った。

 ハーレイたちのことには特に触れないようにしておいた。いい思い出もあるが、それを台無しにされた思いがまだ強い。


「あたしは、おじいちゃんが冒険者だったんですよね。それで毎年、おじいちゃんに助けられた、世話になったという人が墓参りに来てくれるんです」

「アメルのおじいさんも偉大な冒険者だったんだな」


 アメルがそうなんです、とにっこりほほ笑む。


「冒険者っていろんな人を助けてるんだなあ……って。私も、そういう人になれればって」

「なるほど。わりと俺と似てる感じだな」

「ですね!シンシアさんは?」


 シンシアがちょっとうーん、といった感じで眉をよせた。


「わたしは冒険者になるつもりはなかったんだけどね。適正ジョブがそれっぽかったから」

「え?でも、魔女、なんですよね?」

「わたしの家、自分で言うのもなんだけど、結構な名家なの。リンドクィスト家。そしてこれはちょっと秘密なんだけど、家にはジョブ適性審査の儀式を、独自の魔方式で疑似再現できちゃったりするの」


 なるほど、自前で適性のフライング調査が出来るのか。初めて聞く話だ。

 リンドクィスト家、本当に力のある名家らしい。


「そしたら、わたしの適性は【魔法使い】と出ちゃったのよね」

「あれ?魔女じゃなく……」

「疑似再現だけあって、精度が甘い時があるのよねえ。そして実際に審査の儀を受けたら、【魔女】になっちゃって。家も追い出されて……こうなったらもう冒険者になってやるーって」


 シンシアも追放されたクチだったか……


「だからわたしの場合は結構やけくそ気味だったりするの。あはは」


 シンシアは明るく言うが、魔女対策の首輪もつけられたり追放されたり、一番重い人生を送ってきたのかもしれない……


「あらら、しんみりしないで。わたしはもう今はすごく幸せで楽しくやってるから。二人のおかげよ」

「シンシアさん……」

「……助けになれたのなら、幸いだ」

「ええ、ええ。とっても。ほんとに感謝してるんだから」



 そして次の朝。


 7階を慎重に探索していく。道行きはペースが落ちたが、パーティ絵やパンによるバフ効果もあるのだろう、モンスターとの戦いは問題なく対処することが出来ている……

 ……とはいかなかった。


「いやー!虫きらーい!」

「お姉ちゃん、もう、ダメ……」

「眠ったら(気絶したら)、虫にたかられて死ぬぞ……?」

「ひぃ!ダリンちゃんひどい!そんな怖い事言わないで!もー!」

  

 このフロアの回遊モンスターは巨大昆虫系ばかりなのだった。

 二人の戦意の下がりっぷりが半端ない。ひたすら岩の防御陣の中で目をつぶりながら震えている二人。


 仕方ないので出会う虫は全部俺がどうにかした……けど昆虫って複雑な模様や作りをしてて、作画カロリー高いんだよな。

 腕、ちょっと疲れてしまった。



 そしてなんとかフロアボスの広間への通路までたどり着くことが出来た俺たち。

 光物系、昆虫系は居ませんように……ってなんか輝きが見えるなあ、うわあ。


 広間に居たのは、全身炎で包まれた巨人だった。

 

「めらめらですねえ。熱くないのかな?」

「息も出来なさそう」


 そんなんじゃ生まれたとたんに死んじゃうよな……

 しかし二人ともフロアボスが巨大昆虫の類じゃなくてややほっとした様子だ。


 炎の巨人、光ってるとはいえこれなら描ける、かな?


 鉛筆を走らせ、羊皮紙に炎の巨人の姿を描く。

 炎自体は一定の形を保ってないが、その一瞬を捉えた形でなんとか描き上げてみる。


 一応大丈夫だったようで、描いた巨人の横にいつものようにステータスが表示された。鑑定成功だ。



 【種族】フレイムジャイアント 【名前】farojidz

 【体力】  1200/1200

 【魔力】  450/450

 【力】   500

 【素早さ】 30

   ・

   ・

   ・

 

  [命が尽きるまで消えることのない炎に包まれた巨人。

   炎吸収能力がある。魔法耐性がややある]



 相変わらずモンスターの名前は良く分からないが、まあ呼ぶことなんてないだろう。

 しかし初めてフロアボスの鑑定をしたが、やはりゴブリンなんかとは比べ物にならないステータスだな。パワーはすごいが(蒸し焼きビーフサンド3つ分に迫る)、素早さがないのでその点をついて対処するタイプだな。


「まあ、例によって氷漬けだけど」


 とか言って絵に描き加えたが、なんとフレイムジャイアントは氷漬けの状態から自身の炎の熱で復帰した。


 凍らせたら炎は消えるだろうと思ったけど、鑑定にあった「命が尽きるまで消えない炎」という概念のほうが強かったらしい。順番的にはジャイアントの命が尽きる→炎が消える、ということか。


 こちらに気づいたフレイムジャイアントが炎の弾を飛ばして攻撃してきた。

 シンシアが岩を浮かせて防御陣を展開。炎弾を全て防いだ。


 攻撃がやんだのを見計らい、アメルがトランショワールを巨人に向かって投擲する。

 頭の横を通り過ぎて、外れ……と思わせて、背後の壁に跳ね返らせて巨人の後頭部に直撃。

 頭を押さえてうずくまるフレイムジャイアント。


 その隙に雷を描いて雷撃。ダメージは……ステータス上あまりない。物理の方が通りそうだ。


 炎の巨人は、自身の胸に手を突っ込んだかと思うと、そこから燃え盛る炎の大剣を引っこ抜いた。

 巨人が使うだけあって、さしわたし10メートルはありそうな剣、ひと薙ぎで鎧で固めた戦士数人は吹っ飛ばせそうなシロモノだ。

 

「こっちへ来ますよ!」

「それなら、鉄球つきの足枷を描いてやろう」

 

 現実の巨人にも足枷が出現し、がくんと歩みが止まる。

 巨人は大剣を振るって足枷の鎖部分をぶった切った。

 

「なら手枷だ!」


 巨人の手首にも鉄球の手枷が出現。巨人がその重みで地面に手をつく。

 ぶった切られた足枷の鎖も、絵の上でも千切れてしまっているので修正、また足枷の鎖が復活した。


「いまね。鉄が溶けないうちに」


 シンシアによる岩弾の嵐。大質量による物理攻撃は巨人の大幅に体力を削りとっていく。

 とどめはアメルの盾だった。


 巨人が前のめりに倒れ、ついに炎は消えたのだった。

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