第18話 シンシアのデッキブラシ
「さて、次はシンシアの武器か防具だな」
「そんな都合よくいくかしら……」
「そのための幸運パン3つ重ね食いだ。足りなきゃまた食べるさ」
「いつでも出せます!なんならみんなで食べましょうか?」
アメルが手を挙げて意見具申する。
「しばらく何もなきゃそうしようかな?」
そしてしばしまた動く鎧の徘徊する6階をうろつく。
ドガガガガ……!
アメルのトランショワールぶん投げで、遭遇したそばから砕かれまくる動く鎧たち。
「アメルの独壇場だなあ」
円形のシールドがダンジョン通路を縦横無尽。
高速で跳弾しまくり、向かうところ鎧なし。
動く鎧の魔晶核がそろそろ持ち切れない、ってところで、鎧の一人が棒のようなものを残した。
「お。出たかな」
……しかし、どう見てもこれはデッキブラシ。一応武器、なのか?
鑑定。
【デッキブラシ】
[魔女御用達の品。空を飛ぶときのお供、乗るも良しまたがるも良し。
飛行能力を格段に上げる効果あり]
「魔女御用達……普通はほうき、じゃないかしら?」
「ですよね……絵本に出てくる魔女も大抵ほうきにまたがってます」
確かになあ。誰か有名な魔女が使っていたのかな?にしては二人も知らないようだけど。
ただデッキブラシもほうきも武器には思えない。杖に分類されるんだろうか?
「しかし飛行能力の強化か。とことん特化していくんだな」
「うーん、ここで妙な魔法の杖を拾ってファイアーボール撃ちまくっちゃったり即死魔法が使えるようになっちゃったら、
悪の魔女一直線、かもねえ」
「まあとりあえず、二人の武器?は手に入れられたということで。フロアボスに行ってみようか」
「はい!」
6階のフロアボスの広間。
5階までのボスはハーレイたちといた頃に経験済みだが、ここからは未知の領域だ。
慎重に近づき、広間をのぞき込む……
人の身長の二倍ほどの直径の、光って唸る球体が広間の中央に浮かんでいた。
「なんだあれ……」
「んー?ウィルオーウィスプかしら。話に聞いたことがあるだけで、たぶんだけど」
まあいつも通り絵に描いて鑑定すれば……
「うわっ。光る玉って鉛筆で描きにくい」
いつものように遠目から羊皮紙に描こうとした俺だったが、常に光って輪郭がぼんやりとうねうねしているものなんて、
今まで描いたこともないし表現の仕方が分からない。
「ダリンさんにも描けないものがあるなんて!」
「意外ねえ」
こういう弱点があるとは、ちょっと考えなかったな。
「じゃあ、あたしたちに任せてください!」
「アメルちゃんの盾に加えて、石つぶて攻撃ね。あら、デッキブラシの効果かもっと重いものでもいけそう」
アメルが盾を投擲する。
これでウィルオーウィスプ(仮)の体を通り抜けるようなら詰みかとも思ったが、ガスっと体に当たって光の玉がひるんだようにふわふわする。そして光の触手を多数伸ばしたかと思うと、触手の先から何か光の弾を飛ばしてきた。
「おっと」
身をかがめて避ける。その弾が当たった部分のブロックがじゅっと言って溶け出した。そういう系統か……!
ふたたびアメルの盾の投擲攻撃、本体に当たった後、壁に跳ね返りまた本体へ。なんと器用な。
そこへシンシアの石つぶて攻撃、いやもはやあれは岩だな。しかもいつもより高速で飛んでいく!
デッキブラシによる効果だろうか。
岩弾の嵐に巻き込まれ、ウィルオーウィスプ(仮)はばらばらに散ってしまった。
再び集まって復活するようなこともなく、どうやら倒したらしい。
魔晶核も落ちていた。
「おお、助かった。まさか絵に描けないモンスターがいるなんてな」
ハーレイたちと6階に到達した時はフロアボスまでは確認できなかった。
把握していれば光を描く練習とか出来ただろうにな。
まだまだ修行の余地はあるようだ。
「うふふ。もっとわたしたちに頼っていいのよ」
シンシアに身を寄せられ、なでなでされてしまった……ううむ、これはこれで悪くない?
アメルが自分もやりたそうな、それはおこがましいかなとか思ってそうな、そんな感じの表情で見つめてくるのだった。
お読みいただきありがとうございます!
「面白かった」「続きが気になる」「興味ある」と思ってくださった方、
下のほうにある☆☆☆☆☆に評価をお願いいたします。
☆一つからでも構いませんのでどうぞ採点してやってください。
ブックマークもいただけたなら、さらなるやる気に繋がります!
何卒よろしくお願いいたします。




