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第14話 望まぬ再会、そして決意

 次の朝。

 今日からダンジョンに潜る……前に、パーティを結成したのでパーティ名とメンバーの申請にギルドへ。


 パーティ名は昨晩に皆で話し合って<三つの星>に決めた。


 神託だの真実だのもっと圧のあるワードを使おうかとも思ったけど、そういうのは他のパーティがいくらでもやってるし。

 三人それぞれ輝くものを持っているという意味を込めて、<三つの星>。


「シンプルで良いと思います!」

「地味な気もしますが……まあ悪くはないですわ」


 皆の支持を得て、決定。

 ギルドにて必要な書類に記入し、提出、などの手続きを経て無事申請は通った。


「これで、俺たちは『正式』に冒険者パーティだ」

「感慨深いですね!みなさんよろしくお願いします……!」

「……」


 シンシアはそっぽを向いている。……もしかして、涙をこらえてるとか?

 回り込んで顔を見るなんて無粋はせず、しばらく待ち、


「……よろしくね!」


 そして三人の拳をこつんと合わせ、頷きあった。

 ここに【絵描き】【パン職人】【魔女】の三人によるパーティ<三つの星>が正式に結成された。



 その後ダンジョンに潜るために必要な物品を道具屋などで仕入れながら、王都を歩いていると……


「なんだあ?……女連れで悠々と歩きやがって。いつからそんなご身分になった、ゴミダリン」


 ハーレイに出くわした。げえ。パーティ結成のいい気分が台無しだ。わざわざ宿屋を変えたってのに。


「……新しくパーティを組んだんだよ」

「お前とでも組んでくれる冒険者が居たとはな。ち、お前は昔からそうだ。いつの間にか人の中心に……いや、んなこたどうでもいい」


 と、ここでハーレイがアメルとシンシアの顔をじっと見つめ、


「ん?おまえら……【パン職人】に【魔女】じゃねえか」


 知っているのか。


「なんかいろんなパーティから爪はじきになったり門前払いを食らってるやつの話を酒場で聞いてな。ははっ、そうか。『外れ』者だけで組んだってか!こいつぁ傑作だな!そりゃあお似合いなパーティだ!

 ゴミはゴミ箱、じゃなくてゴミダリンの元へ!」


 歪んだ顔つきで高笑いをするハーレイ。

 緊張感と怒りの気配を漂わせる後ろの二人を俺は手で制し、


「俺はともかく、二人を侮辱するな」

「お?なんだ睨みやがって。お前に俺をどうこうする力もねえくせに!」

「……」

「言い返せないよなあ?ははっ、ゴミどもにはふさわしい場所があんだろうが。王都の道を偉そうに歩いてんじゃねえよ」


 ぺっと唾を足元に吐く。そんなハーレイをじっと見つめつづけた俺はふうとため息を一つ。


「……お前の姿かたちは改めて覚えた。いつでも、お前を『描く』ことが出来る」

「は?何言ってんだお前は……絵描きならではの脅し文句かあ?俺の顔を描いた指名手配の嘘ビラでもまくってのか、アホか」


 妙な事を聞いて気が抜けちまったぜ、とハーレイはつぶやき、


「じゃあな。俺は二人のところへ戻るぜ……次の計画も練らなきゃな」

「ダンジョン、どこまで潜れたんだ?」

「……!チッ、お前には関係ねえよ!あと一歩で最下層だ!あと少し、あと少しでな……」


 ハーレイはそう言って立ち去った。


「……」


 あの様子じゃ、記録は更新できなかったようだ。もしかしたら途中で撤退したのかもしれない。

 俺の絵による支援効果も切れてるだろうし……


「うーん!あれがダリンさんの元居たパーティの勇者さんですよね、嫌な人ですねえ……」

「ほんとぷんぷん。なのでこっそり、その辺をうろついていたネズミを彼のポケットに入れちゃった」


 『浮遊』のスキルをそんなことに使ってたのか。

 しかし、そのうちギャーギャーと大騒ぎすることになるハーレイを想像して少し笑いが込み上げた。


「わたしのスキルがパンなら何でも生成できる、だったら鯖ピクルスブルーベリーサンドを無理やり食べさせてるところでした!」

「なあにそのゲテモノサンド……」

「おいおい、食べ物をそういうふうに使うんじゃないぞ」


 しかしこの二人が居てよかった。

 俺がまだ追放されて孤独のままで、またハーレイに会ってさっきのように言葉の暴力をぶつけられていたら。


 【絵描き】の力を衝動的に使って、ハーレイや他の連中に対して何かをしでかしてただろう。


 それだけのことはされたと思っていた。


 しかしアメルとシンシアに出会い、パーティを結成した今、復讐まがいの事をしたい気持ちはほぼ無くなっている。二人のささやかな仕返しを聞いて笑えるくらい、落ち着いているのだ。


 小さく離れていくハーレイの背中を見ながら、自分のさっきの言葉を思い出していた。


 (いつでもお前を描くことが出来る)


 俺は絵を描くのが好きで、そしてその絵を見た人にも幸せになってほしい。


 人に対して俺のこの力を使って、不幸な目、嫌な目には合わせたくない。


 俺は過去のハーレイを知っている。

 前向きで、向上心が強く、負けず嫌いで努力家の……


 しかしいつ頃からかお前は歪んだ道を進むようになってしまった。

 そのままでは、お前はいつか周りの人間を不幸に巻き込んでしまうだろう。


 だが俺はまだ藁にもすがる気持ちで、ハーレイがかつての自分を取り戻すことを期待している。


 しかし……

 お前がそのまま、歪んだ道を突き進み……一線を越えたと思ったら。


 俺はお前にしかるべき処置を、しなければならない。

 ……そんなこと、させないでくれよ……

お読みいただきありがとうございます!


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