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第13話 シンシア、パーティ加入

「あの首輪……100年は朽ちる事のないミスリル銀を加工して作られたはず……それをあっさり。びっくり……」


 首に手をやり、確かにもう首輪がない事を何度も確かめるシンシア。


「あとで宿屋に戻ったらゆっくり説明するよ、俺たちのスキル」

「あ……ありがとう、ありがとうぅ!!」


 シンシアががばっとまた抱き着いてきた。今度はアメルごとだ。


「あなたたちは命の恩人だわ……!今日だけで二度!助けてもらっちゃった……!」


 ぎゅーっと抱きしめてくる。声が震えている……


 いつ自分の命が無くなるかもしれない、いつ爆破されるかも分からない首輪を今までつけながら生きる人生はどんな気持ちなのか想像もつかないが、シンシアはやっとそれから解放されたんだ。


 ちょっと気安いかもしれないけど、ぽんぽんと背中を叩いてやる。

 答えるようにまたシンシアは抱きしめる腕に力を込めてきた。


 そしてしばらくして身を離したシンシア、


「……パーティ、こんなわたしで良ければ。喜んで加わらせてもらいます」


 アメルの表情がぱあっと花のような笑顔になる。


「はい!今日は歓迎会を開きましょう!」

「そうだな。俺たちもついに三人パーティか」

「あ……ちょっとその前に、あの首輪。あんな所に捨てたままはちょっと」

「そうですね、ごめんなさい」


 確かに何かの拍子に爆破魔法が発動でもしたら大変だ。

 シンシアを絵に描いた時、鑑定情報で振動では作動しない性能なのは分かっていたが、誰かが拾って何の魔法かも分からず発動させようとしたらマズイ。


 どこかに埋めるか、また氷漬けにでもしてしまうか?


「わたしが平原先の湖に持って行って沈めてくるわぁ」


 そう言ってゴミ箱まですたすたと近づき、手をかざす。

 すると二つにちぎれた首輪がすうっと浮いてきた。


「これがわたしに使える唯一のスキル……『浮遊』、なの」



 ▽



 その後、湖に首輪のなれの果てを沈めて俺たち三人は、宿屋の俺の部屋に集まった。


 そして改めてそれぞれの自己紹介と、自身のスキルの説明をする。

 当然、夕飯はアメルのスキルでパンがふるまわれた。


「なるほど……【パン職人】さんのスキルも素晴らしいし【絵描き】さんも規格外ねぇ」


 シンシアが感心したように顎に手を当ててふんふんと頷いている。


「しかし【魔女】のスキルが一つだけってのも驚きだ。聞いていたような人類の敵になるジョブとは到底思えん」


 改めてシンシアの人物画ステータスを見る。



 【種族】エルフ 【名前】シンシア・リンドクィスト

 【体力】  35/35

 【魔力】  80/80

 【力】   3

 【素早さ】 6


  ・

  ・

  ・



 シンシアもずいぶんパンを食べているらしく、【87 58 89】という三つの数値もあった。


 そしてスキルは、『浮遊』のみ。


「そうなのぉ。わたしは飛ぶこと、モノを飛ばすことしかできない魔女のお姉さんなの。失望しちゃった?」

「いや、失礼ながら魔女のイメージ的に、もっと邪悪で攻撃的なものを想像はしてたんで……ずいぶん平和的だなって」

「わたしも、もっとこわーい魔法とかスキルが使えるのかと……ごめんなさい」

「謝る必要はないわよぉ」


 頭を下げるアメルをなでなでするシンシア。


「でも正直このスキル、いくらでも凶悪な使い方は出来ると思う」

「どういうこと……?」

「『浮遊』の影響範囲は周囲一メートル程度、持ち上げられる重さはシンシア自身の体重程度だったよな。ちょっとこのレーズンパンを食べてみてくれ」

「レーズン……私このパン嫌いなのよね。もぐもぐ……あら?これは案外おいしいわ」


 レーズンパンはスキル威力をアップさせる効果のパンだ。


「そのうえで『浮遊』を使ってみてくれ。力の効果範囲が変わってないか?」


 シンシアは自分から二メートル以上離れたところに置いてある、棚に飾られた花瓶へと手を伸ばした。普段なら届かないはずだが……花瓶はすっと持ち上がった。


「……範囲が広がってる!

 それに、感覚的な話だけど、自分より重いものでもさらに高く飛ばせそうな気がする」


 パンによるバフ効果を実感して、シンシアは驚きに声を震わせた。


「それでモンスターを天高く持ち上げて、落とすと?」

「あらあ……」


 シンシアが空から落ちてきた時を思い出す。位置エネルギーによるダメージは結構なものなのだ。


「怖い発想ですねえ!ダリンさんがシンシアさんを悪の魔女にしちゃダメですよ?」


 アメルが突っ込んでくる。そんなつもりは無いって。


「じゃあ怖くない方面で。ダンジョンを進むとき、たくさんの石つぶてをサークル状に浮かせながらパーティの周りに展開すれば、360度をカバーする盾となる」

「なるほど……その上、石つぶてを敵に飛ばしてやれば盾は攻撃にも転用できちゃう……」

「その通り」

「やっぱり怖いじゃないですか!」


 またアメルの突っ込み。


「それはしょうがないだろ、敵は攻撃しなきゃやられる……

 『浮遊』は消費魔力も少なくて済むようだし、ダンジョンを進むときは石の防御陣を展開しながらならある程度安全に進むことが出来ると思う」


 そしてスキル威力は食事を取りつつ適宜アップ。

 ダンジョンに潜る前には俺たちパーティ全員の絵を描けば全体バフもかかる。


「わたしたちパーティの、竜座のダンジョン攻略法が見えてきましたね……!」

「ああ。っと、今更で唐突なんだがここの宿は引き払って違う宿をとろう」


 突然の提案に首をかしげる二人。


「どうして?」

「ここはハーレイたち……俺を追い出した勇者パーティも部屋を取っているんだ。今はダンジョンに潜ってるだろうが、帰還すれば顔を合わせるハメになる。それはちょっと勘弁なんだ」

「わかりました。確かにそれは嫌ですもんね」

「ダリンちゃんほどのスキルの持ち主を放逐するパーティ……そうとう愚か者の集団なのねぇ」


 シンシアに高く評価されてるようで、ちょっとむずがゆい。

 ハーレイ……お前愚か者扱いされてるぞ。



 そして俺たちは新しい宿を取り、次の日に備えるのだった。

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