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息抜き短編集  作者: 荒木空
私の脚にキスしなさい!~『スデゴロ最強』に魅せられた伯爵令嬢の闘争譚~
7/9

ロマンとは


 供養です。




 男は生まれた時から不治の病に侵されている。

 人はソレをロマンと呼ぶ。

 ロマン。そう一言で片付けるには些か対象が多過ぎることだろう。


 剣の造形にロマンを求める者。


 絵画にロマンを求める者。


 探検にロマンを求める者。


 物の能力にロマンを求める者。


 敢えて不利な条件からの一発逆転というロマンを求める者。


 ギャンブルに勝利したあとの大金持ちな自分というものにロマンを求める者。


 中には道徳的には褒められないような事に対してロマンを覚える者も居るだろう。


 みんなみんな、男は何かしらの形でロマンを求める。

 中には「自分はロマンなんてものを求めていない」と宣う者も居るかもしれないが、此処で言うロマンとはつまり『叶うか叶わないかわからない夢』の事をロマンと呼んでいる。現実を忘れ現を抜かしてしまうほど夢中になれるものの事を言っている。他の全てを捨ててでも手に入れたいものや、ただ友人達との話に出すちょっとした目標の事を指している。


 あぁ、男はロマンという不治の病に侵されている。


 では、女はどうだろうか?あぁ、勿論女も夢を見る。物語に登場する英雄のような男と結ばれたいというのもロマンだろう。将来のまだ見ぬ夫との結婚後の生活を夢想するのもロマンだろう。

 しかし大抵の女は現実主義者だ。男のように馬鹿にはなれない。いや、馬鹿にはなれても必ず何処かで現実を意識している。馬鹿にはなりきれないと言えば適切な表現だろうか。

 だから女はロマンという不治の病には侵されていない。



 しかし女でも男のように不治の病に侵される者は少人数は世界を捜せば必ず居る。


 その少人数である1人1人の女がどんな事にロマンを覚えるのかはわからない。わからないが、私ことルルーシュリア・ウェンゴットス・ウェラゴーラ・ベッドスはその少人数の1人であり、男が追うロマンの1つにこれでもかと魅せられた女である。


 私が魅せられたのは、人間がこの地に生まれた頃から続く超原始的なもの。私以外の貴族の子女が見れば『野蛮』と切って捨てるようなもの。




 即ち『ステゴロ最強』。




 男も女も子供も大人も関係無い。人間という動物がこの世に生を受けた時からその本能に刻み込まれ今この時まで継承し続けて来た最もシンプルな1番最初の闘争方法。

 素手と素手。作られた武器は持たず、己の拳や脚、時には歯という牙や爪なんかまで使った人間に最初から備わっている武器だけで戦う超原始的戦闘方法。


 護身術なんていう技術など要らないのだ。


 体捌きなんてものは数を重ねて体で覚えれば良いのだ。


 それこそ子供の喧嘩のように泣き喚き拳を奮うだけで良いのだ。


 むしろソレが良いのだ。


 ソレを大人というある程度体の完成された者達が行うぶつかり合いこそが熱いのだ!


 そしてそのぶつかり合いに勝利し、頂点に立った時の快感など、想像するだけで絶頂を迎えそうなほど興奮するのだ!!



 私は『ステゴロ最強』というロマン(不治の病)に侵された女だ。


 あぁ、私は肉体と肉体のぶつかり合いが見たい。

 あぁ、私は肉体と肉体のぶつかり合いをしたい。



 あぁ、だから私は、今日も己を鍛えるのだ。

 来るべき、武闘大会での優勝を目指して。



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