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息抜き短編集  作者: 荒木空
佰物語系列
1/9

『我喰い』


 【今話概要】

 ジャンル:ホラー

   要素:オリジナル怪異(妖怪)

  その他:知り合いの女性を怖がらせようと即興で作った話のウケが良かったため、それを仕上げたもの。ホラーの執筆をして形にしたのは人生初。




 薄暗い部屋の中。部屋の中には女性が居た。

 女はゲームをしている。

 彼女はゲームに夢中になっていると、ふと、背後に何かの気配を感じた。


 気になった彼女は背後を振り返る。

 しかしソコには誰も居らず、彼女は疑問符を頭に浮かべながらもゲームに戻ることにした。




 夜。ベッドの中へと潜り込み2時間ほどの時間が経った頃の事だ。彼女は再び何かの気配を感じ、目を覚ました。

 感じた場所は自分の後ろ。それも、誰だかわからない者の息遣いが聴こえてくるような気がするほどの近くに感じた。


 彼女は身の危険を感じた。そりゃそうだ、この部屋に彼女以外の誰かが彼女の許可無く入ってくる事など絶対に有り得ない事なのだから。

 しかし、彼女の中で1つの感情が芽生えてしまった。即ちそれは『好奇心』という感情だった。


 彼女は意を決し、目を瞑りゆっくりと後ろを振り返った。そして一呼吸置いたあと、薄目を開けた。



 薄目を開けた先には何も居なかった。しかし、自分を見る何かの気配だけはまだしていた。

 だから彼女はこう考えた。考えてしまった。


 「電気を点けて何の気配なのか確認しよう」と。


 彼女は起き上がり、電気を点けた。






 すると、






 気付くと部屋中に生首が数えるのも馬鹿らしくなるほど大量に在り、全てが彼女の事を見ていた。

 宙に浮いているもの。足元に居るもの。机の上に居るもの。ベッドの上に居るもの。先程まで自分の頭が在った枕の上にまでビッシリと此方を見る生首が在った。


 彼等彼女等の目からは恨みや怒りや悲しみと言ったものは感じ取れない。ただただ彼女の事を見ているだけだった。


 しかし、考えても見て欲しい。寝る前からずっと何かの気配を感じていて、何かの気配を感じて目が覚め、そして電気を点けたら大量の生首が自分を見ている光景を。

 彼女は恐怖のあまりに声が一切出せず、そして腰を抜かしたかったが足元にまで生首が在るため、彼女は腰を抜かす事すら許されなかった。


 肉体は眼前に広がる狂気の光景に逃げようとしているのに、しかしその眼前に広がるもの達が理由で逃げる事が出来ず、精神は既に恐怖に支配されているためどうしようも出来ない状況に陥った彼女がパニックに陥るのも無理はなかった。


 パニック。混乱と呼び替えて良いだろう。人は混乱すると何事に対しても気付く事に遅れてしまうものだ。

 パニック故に気付くのが遅れたが、自分の視線の高さが徐々に上がっている事にある時彼女は気が付いた。


 気が付いたタイミングは、彼女の足が宙に浮き始める直前だった。

 高さはドンドン上がり、彼女の体は完全に宙へと浮いてしまう。


 首が絞まる感覚と共に息苦しさが彼女を襲う。新鮮な空気を求め(もが)けば(もが)くほど首は絞まり、更に肺の中の空気は外へと逃げていく。


 空気を求める体。更に高さを増す自身の体。肺の中の空気はほとんど逃げてしまい、脳に新鮮な酸素が送られない事で頭もボヤけ始める。



 徐々に薄らぐ中、彼女は自身が助からない事を悟る。だが、自身を苦しめる何者かを確認しないまま死ねないと考えた。考えてしまった。


 彼女は自身の首を絞める何者かが居るであろう頭上へと顔を向ける。




 ソコには、




 人の腸を連想させる何かを両手に持つ自分とよく似た存在が、ニタニタと嗤いながら自分を見ていたのだ。


 「コッチへ来い」

          「コッチへこい」

    「返して」       「カエシテ」

      「渡せ」  「ワタセ」

                        「寄越せ」

  「ヨコセ」

       「アケワタセ」  「アケワタセ」

      「ア   ケ   ワ   タ   セ」



 彼女とよく似た何かはこの世の者の声とは思えない声で彼女へ呪詛という言葉が似合う言葉を次々と紡ぎ出し彼女へと吐き掛ける。


 足は既に地を離れ、既に本来であれば天井に体が埋まっていてもおかしくないほどの高さ。自分を引っ張り繋ぐのは首に掛かる紐状の何かのみ。その何かを用いて自分を引っ張り上げるのは自分とよく似た何か。


 助けは無い。何故なら一人暮らしだから。

 助けは無い。何故なら自分にオカルトや霊感というものに強い友人知人は居ないから。

 助けは無い。そもそも何故こんな現象になっているのか、自分に全く心当たりが無いのだから。


 訳がわからない。何故自分は今、こんな目に遭っているのか。

 訳がわからない。何故自分なのか。

 訳がわからない。何故自分に白羽の矢が立ったのか。


 訳がわからない。訳がわからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからナいわからないわからないわからないわからないわカらなイわからないわからないわからないわからないわからないワカらなイわからないわからないわからないわからないわからないワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイドウシテワタシガナンデワタシガワタシガナニヲシタワタシノナニガイケナカッタワタシハナニモシテイナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ。



 気付けば彼女の体は既に無く、在るのは彼女の体とよく似た透明な何かだった。

 彼女を苦しめていた彼女とよく似た何かは、透明になった彼女の体をまるで団子を()ねるかのように()ねて一口サイズへと圧縮し、そして口の中へと放り込んだ。


 瞬間、何かの体の中から絶叫が轟く。



 「ド  ウ  シ  テ  ワ  タ  シ  ナ  ノ  !  !」



 彼女とよく似た何かの顔は、更に彼女の顔と似たものになっていく。


 こうして彼女は『何か』として永劫この世を彷徨う事となったのだ。







 『我喰い(われぐい)』。過去やパラレルワールドや別世界といったありとあらゆる自身とよく似た者の全てを喰らい、己の(腹の中)で飼い、最後の魂の叫びを永遠と喰らい楽しむ怪異。

 我喰いが喰うのは我喰いの顔とよく似た者のみ。それ以外は喰わないが、1度我喰いに目を付けられた者の未来はその時点で決まってしまっている。防ぐ方法は無い。


 これはとてもとても怖い、怪異のお話。



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