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勇者の旅立ち:加勢 真木子 かせ まきこ

女性

58歳

DJ 

適応力:145


 女神からの声が頭に響く――


「時間がないからよく聞いて。


 あのね、これは夢じゃなくて、憑依転生っていう一時的なものなの。


 ちゃんと転生した期待の勇者はこれから旅立つ。でも、王様ったらなんかいろいろ出し渋ってるから、あなたは一般の兵士だけど、そこをなんとかするのが役目ってわけ!


 じゃあ――頑張って行ってらっしゃい」


憑依先:兵士


■■■テンセイ■GO■!■■■■■


(――え?)


 真木子が気づくと、彼女は豪華な広間に立っていた。

 西洋ふうの、まるで王城のような……


 青年の悲痛な声が聞こえる。

「そんな!? 王様、金貨2枚しか出せないってどういうことですか! 俺はこの世界を救うために転生してきた、伝説の勇者ですよ?」


 勇者――そう名乗った青年に、王が答える。

「悪いが、最近は転生勇者たちのメインストーリー進捗が極めて悪くてな。国庫から無駄金を浪費するわけにはいかない。こちらからの支度金はそれが精いっぱいだと思ってくれ」


(あ、王様のコスプレ? ……ううん、そういえば女神がなんか言ってたわ)


 真木子は思い出す。

 勇者の旅立ちをなんとかしろ、とか、そういう話を。


(あたし、明日の番組の打ち合わせ中だったんだけど……)


 自分の身体を見る。

 鉄製のような鎧を着た、兵士だ。


 ――男じゃん。

 真木子は思った。


(憑依転生って、これ、とり憑いてる感じ? 一時的……。本当であってほしいわ)


 そんなあいだにも、王と勇者が揉めだした。


「し、しかし……これではあまりにも少なすぎます。最初の町で一生働いて暮らせとでも言うのですか!」

「これより多い金貨を渡しても、実際そうなってしまう勇者がいかに多いことか……。あとで城下町を見てみるがよい。二ホンとやらにあった商店をこちらで開業している連中が山のようにいる。支度金を開業資金にしおって……。貴公も同じことにならんとはわたしには思えぬのだ。我が国の民が苦労して納めた税金を――」


「むざむざ、彼らの商売敵にばら撒いてしまうわけにはいかん。こちらから見れば、貴公などは、懸命に暮らしておる我が民たちよりも格下なのだから」


(ひどい言われよう。えっと、あたし、これをなんとかするのね)


 真木子は、王と勇者に向かって声を張り上げた。

「王! それではあまりにも勇者殿に対して礼を失しておりまする!」


(なんかへんな口調になっちゃった。……えっとえっと)


 まごつく真木子に王が激高する。

「貴様ッ、一兵卒の分際で何を申すか!」


(ま、そうなるわよね~)


(あたしだけどあたしじゃないし、イチかバチかでいきますか)


「我が王よ! 恐れながらわたくしは、王の民のひとりでございます! そのわたくしが申し上げることなので、どうか、これも民の言葉と思い、お聞きください!」


■■■オツカレ■サマ■デシタ■■■


 ――憑依者が元の世界へと戻り、そして神界。


「ここでタイムアップ!? ちょ~っと早すぎない?


 やっぱり起きてる人に無理やり憑依するのって大変よね。


 ……あたしが最初の説明に時間とられすぎ?


 はいはい、わかりました。もっと簡略化するわ」

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