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超伝神トライブレイバー  作者: 窓井来足
第1話
8/22

「決意 その4」

前回、薬師池公園で蓮賢老師こと葉澄蓮と出会った郷。

はたして郷は彼から何を学ぶのか……。

「さて、さっきの伝承だけど。あれでみーちゃん、弁天様の使いってことのなっちゃっただろ?」


 売店の傍の椅子に座り、とりあえずという感じで缶珈琲を一口飲んでから、葉澄さんはそう話を切り出した。


「え? その話まだ続けるんですか?」


 さっき葉澄さんが俺がここに来た理由を確認してきたから、それについての話をする方に話を切り替えるために場所も変えたのかと思っていたんだけど。

 そうではなく、単にいつまでも立ち話したくないから座れる場所に移動しただけ……なのか?


「ん? この話の続き、気にならないのかい?」


 いや、そういわれると確かに、水槌様の過去とか気になるような……。

 うん。気になる話を中途半端にしたまま別の話をしても集中できないだろう。

 だから先にこっちの話をしてもらおう。


「いや、別にこのままで構わないですけど」


「そうかい、それじゃあ続きを話すけど」


「ええ。お願いします」


「弁天様ってのはほら、芸能の神で音楽とかにご利益あるじゃん。それでさ、あの子人間に弁財天の使いって事にされたから、それから結構熱心に琵琶の練習とかしてたりして」


「へぇ……琵琶?」


「うん。弁才天は琵琶を持っているからね。まあ、それで」


「水槌様はエレキギターとか弾いてそうなイメージだったんですけど……まあ、よく考えたら江戸時代の話ですからね」


 そうだよなぁ。

 いくら怪人の姿がメタルバンドとかそっち系のファッションに似ているからって、別に江戸時代にギター、しかもエレキなんてある訳が。


「あ、いや。今はどっちかというとそっち、エレキの方がメインというか。なんかバンドとか組んでるらしいし」


 って、今はマジでそっちで演奏してんのかよ!?

 確かに同じ弦楽器かもしれないけど、それでいいのか!?


「ほら、まあ。神様だって時代に合わせて相手の願いとか聞かなきゃならないし。今の時代、音楽絡みだったらギターとかバンドとかの方が多いから」


 なるほど、そういう事か。

 要は葉澄さんが見た目を変えた理由と同じで、時代に合わせたってことなんだろう。

 こういうところをしっかりやっていくのが神様をやる上での苦労だったり――


「あ、でも彼女の場合、なんかたまたま聴いたメタルにはまったのが理由だとか言っていたから、別に今の時代に合わせようとしたのとは関係なかったか、そういえば」


 そうなのかよ!!

 今ちょっと「水槌様ってああ見えて人間のために色々努力しているんだなあ」とか見直したんだが、その必要性はなかったじゃあないか!!


「というより、そもそも琵琶自体、その時の勢いでやったっていうか」


「勢い?」


「うん『せっかくだしやってみるか。面白そうだし』みたいなノリ」


 ……ギターどころか、そもそも最初っから趣味だったのか。

 神様ってそんなんでいいのだろうか? 


 まあ、でも。神様とかそういうのは兎も角。

 趣味で音楽始める理由なんて案外そんなものかもしれないな。

 別に上手いかどうかは趣味ならあまり関係がないだろうし。


「でもそんな理由で音楽を始めた結果上達して、それが結局あの子が境川の神に選ばれるになったんだから、世の中どうなるかわかんないよねえ?」


「え? そうなんですか?」


「ほら、境川って下流に江ノ島があるだろ? で、その江ノ島は弁才天を祀っていることで有名だからね。それで先代が一応あの川の神に相応しい者かのテストに楽器の演奏も入れていてさ。その結果、彼女が合格したってわけ」


 な、なるほど。


 いや、俺がそうなのか聞いたのは、神様に選ばれるくらいに上達したという部分についてなんだが。

 葉澄さんが言ったその江ノ島とか、そっちの方の話も興味があるな。


 ええと弁才天はインドの川の神様がルーツで、日本では蛇の神様と同一視されることもあるんだっけ?  そして江ノ島の弁才天は日本三大弁才天という……。


 まあ、これらの知識は江ノ島以外の三大弁才天に行った時にたまたま地元に近い場所の話題も出たから覚えていたんだけど。

 ……なんていう俺の事情は置いといて。

 確かに川の神様や蛇の神様と弁才天は関係があるから、そのあたりでは水槌様とも関係があるのかもしれない。


 とは言っても、彼女や葉澄さんの様子を見るに、この人達は有名な神様そのものというより、有名な神様と同じ名称の肩書で仕事をしている方達という事なんだろうか?

 結構、気になるところだ。


 が、それとは別に、さっきの葉澄さんの話で、気になることがある。

 それは、


「テストっていう事は、水槌様は何かの理由があってあの川の神様に就職……と言うかわからないですけど、ともかくなったんですか?」


 という事だ。


 俺は今まで神様ってのは生まれた時から神様なんだと思っていたが。

 どうやら、少なくとも水槌様が言っているそれは、仕事としての肩書に近いものな気がする。

 そして、水槌様のあの性格からして自ら川を管理する神様なんて役職に就くには何か特別な理由でもあるような感じもある。

 いや、案外ああ見えて彼女が人間の為にそういう役職に就きたいみたいなタイプなのかもしれないが……


「うぅん。まあ、彼女も色々あったからね。色々と」


 色々、か。

 ますます気にはなるが……この雰囲気。

 どうもあまり言えないような、少なくとも葉澄さんから話せるような話ではない……のかもしれない。

 いや、単に長い話だったりするから話すかどうか躊躇っているだけな可能性もあるけど。

 これについては水槌様から直に聴く機会があった時の方が良いのかもしれないな。


 ……って、今気がついたが。

 なんか場所を変えてからずっと水槌様の話をしている気がする。


 確かに、気になる話を残したまま別の話をするのはどうなのかと思っていたけれど、これはそろそろ本題に話を持って行った方が良いんじゃあないだろうか?

 丁度、葉澄さんが話しにくいような話題になったみたいだから、このタイミングで。


「ええと、そろそろ水槌様の事じゃあなくて、町田の歴史とか文化についての話をしたいんですけど……どうでしょうか?」


「うん?」


 俺に話の切り替えを持ち出されて、露骨なまでに首を傾げ、その上サングラスをインテリ眼鏡キャラがやるみたいにクイッっと指で持ち上げた葉澄さん。

 いや、そんなあからさまに意外そうな反応されても。


「だって俺、ここに町田の歴史や文化について知ったり、みんなに伝えたりするにはどうしたらいいかって話をしに来たんですけど……」


 そのあたり、水槌様から伝えてもらっていたんだよな?

 だって、さっき葉澄さん自身もそんな話を仕掛けていたじゃあないか。

 じゃあ、今の意外そうな反応は一体……


「いや、今もうすでにその件について話しているつもりだったんだけどなぁ?」


「え?」


 どこが?


 ここまで基本的に水槌様の過去についてしか話していないような。

 いや、その話が数百年くらいの事だから一応歴史とはいえるかもしれないけれど、この話はあくまで神様とかそういうのがいると知っている俺だからわかるんであって。

 一般の人に話しても、町田の歴史にはならないんじゃあ……?


「ほらここまでの話で、この薬師池に大蛇の伝説があること、その蛇が弁天様の使いと呼ばれた事、境川の下流に江ノ島があってそこで弁才天が祭られている事、弁才天は音楽に関係があること……とか話したじゃあないか」


 なるほど。確かにその部分は歴史や文化と言えるかもしれない。

 だが、


「ええと、歴史や文化ってそういう感じのでいいんですか?」


 というのが俺としては疑問だ。


 ここに来て、葉澄さんに直に会ってイメージが変わったとは言っても、紹介された際に蓮賢老師という名称で紹介されていたためか、俺はてっきりなんか歴史講座みたいなのをするのかと思っていたんだが。

 これだと単なる雑談じゃあないのだろうか……。


「いいかって聞かれると……」


「聞かれると?」


「いいんじゃあないか?」


「そう、ですか」


「だって君、今の話は興味あっただろうし、それに面白いとも思ったろう?」


「まあ、確かに」


「それならいいんじゃあないかな? 大体の人は興味があることや面白いことを学んだ方が熱心に学ぶからね」


「……まあ、確かに」


 そうかもしれない。

 さっきの水槌様の琵琶の話じゃあないけれど、結局、誰しも好きな事や楽しい事、あるいは興味を強く持ったことを学んだり覚えたりする方が、より良いだろうしな。


 ……ん? もしかして、琵琶の話を例えに葉澄さんは俺にそういう事を教えようと……


「ま、単に僕がいかにも授業っぽい事とかするの面倒だから、適当に雑談していたいってのもあるんだけど」


「そうなのかよ!!」


 ……と、思わず大きな声を出してしまったが。

 これもまた、自分が好きな事の方が教えやすいという……いや、考えすぎかもしれない。


「ええと……それじゃあ、今後もこんな感じになるんですか?」


「ん? 何が?」


「いや、自分はもっと本格的な勉強とか、あと戦士としての修業? みたいな事とかするんだと思っていたんですけど……」


 葉澄さんが、本当に自分に何か教えるつもりでこういう対応なのか、それともそうではないのかが怪しくなってきたので、一応確認してみることにした。


 すると、葉澄さんは「修業……ね」と言いながら立ち上がり。

 そのまま武術の構えのような姿勢に……いや、姿勢だけじゃあない。

 いつの間にか、葉澄さんの姿が人間のそれではないものになっていた。


 その姿は、仮に特撮番組か何かに出てきた場合、水槌様のと比べたら怪人よりヒーロー寄りの雰囲気な見た目だが、俺の変身後と違って顔などは有機的な印象を受ける。

 鎧を着たヒーローよりは肉体が変化したタイプに近い感じの容姿だ。


 まあ、葉澄さんは、人間の姿よりこっちの方が本当の姿の可能性もあるから、その表現が正しいかは兎も角、少なくともそう見える。

 そして、全体的な印象としては……神々しい? というのだろうか? 確かにこの見た目ならば「蓮賢老師」という名称にも合いそうだ。

 まあ、お爺さんというよりはオジさんに近い雰囲気なのはさっきと変わっていないのだが。


 それは兎も角。

 そんな姿に変身した葉澄さんが、こちらに武術のような構えをとっているのだが。何故?


「修業って聞いて、折角だから戦いの稽古? ってのをやろうかなって」


「なるほど……って、いや唐突過ぎませんか?」


「うん。まあ、ほら。座学だけだと退屈するだろう?」


 いや、確かにそうかもしれないけど、そんな理由でいきなり戦いの練習とかするものだろうか?

 と、いうよりこんな人気(ひとけ)のある公園で戦ったりしたら危ないんじゃあないだろうか?

 そもそも怪人やらヒーローやらがいたら、目撃者とかが出てまずいような――


 ん? いや。

 なんか、気がついたら周囲に人がいない……というか、何だ? 空の色が妙な感じになっているというか。

 さっきまで清々しい青空だったのが、淡いピンク? みたいな色に……


「ちなみに、今僕たちがいるのは僕が術でさっきまでいた公園をコピーして作り出した亜空間だから、変身して思いっきり戦っちゃって大丈夫だよ」


「え? あ……そうなんだ」


 そうか、そういう事なら――


「超・伝・神!!」


 俺は左腕に着けているアクセサリーに自分で考えた変身時の台詞を言いながら力を込めて、それを盾の姿に変化させてからポーズを決める。

 具体的にはまず、腹というかへその前あたりを通る形で勢いよく左腕を右下に下ろし。

 そこから肘を軸に回す形で左腕を左側に戻して、最後に天に向かって左拳を突き上げるような動作になる。


 これ、折角変身するのだから何かポーズがあった方がと思って、昨日鏡の前で色々試して考えたやつなんだが。

 今考えると、腰のひねりとか、右手を引くタイミングとかをもっと考えるべきだったかもしれない。

 ……次回までに色々試してみよう。


「へぇ……いいね!! 僕も折角だからなんかポーズ考えてみようかな?」


「考えるのか……」


 葉澄さんの場合、元の姿に戻るとか、あるいはそもそも本来の姿なんて存在しないようなタイプだと思っていたから変身ポーズはいらないと思うのだが。どうなんだろう?

 などと思っていると。


「隙有りッ!!」


 と言って、葉澄さんはいつの間にか持っていた杖のような武器で俺を突く。


「ぐっ……」


 装甲を纏っているからか大したダメージではないが、流石にいきなり突かれると驚くな。

 というか。


「武器、有りなんですか?」



「うん。君も基本的には剣と盾を使うらしいし。こっちもそれに合わせて……ね?」


「『ね?』 と言われても……」


 葉澄さんのは杖だから、鎧の上からなら攻撃しても多少痛い程度で済むかもしれないが。

 こっちのは刃物だから、それを使っても良いのだろうか?

 まあ、一応召喚して……あ、そうか。


 この剣、昨日トライブレイドと名付けたこいつは、そもそも普段は木刀の姿をしているから。この状態ならば練習に使っても問題ないのか。

 よし、それじゃあ早速――


「っと、危ない危ない」


 !?

 避けられた?

 さっき不意打ちをされたから、こっちもと思っていきなり突いたつもりだったんだが……あれか? ちょっとした俺の動きから突いてくると察して避けた……のか?


「ふうん。突きかぁ……あれかい? 沖田総司みたいな」


 沖田総司? 新選組のか?

 なんでそう考えたのか知らないけど、俺が突きを主体にしているのは単に剣と盾を使っている関係で、俺としては突きメインの方がやりやすいというだけだったりする。


 勿論、今のは相手が先に突いてきたから、それに対する反撃として似たような動きが咄嗟に出てしまったというのもあるだろうが。

 基本的に、盾で相手の攻撃を防ぎながら接近して、間合いに入ったら突くというのが俺の考えている基本的な戦闘スタイルになる。

 まあ、実戦はこの前の大地沢ぐらいしかないから、あくまで予定だが……そんな感じで――っと。


 !?

 またかわされた!?


 しかもさっきといい今回といい、殆ど歩かず、半身になったりわずかに後ろに引いたりするだけでこちらの攻撃を避けている。

 これは……。


「どうしたんだい? さっきから僕に当てられないみたいだけど」


「当てられないって……それはそっちが避けているんじゃあ」


「その戦士の具足の力なら、この程度の回避になら問題なく当てられるはずなんだけどねえ?」


「え? そうなのか?」


 こちらにそれを確かめる(すべ)はないが……仮にそうだとしたら、俺はこの力の性能を引き出せていないってことなんだろうか?

 言い方からしたらこの武器が木刀のままだからという訳ではないようだし、なら一体、何が性能を引き出せていない理由になっているんだろう?


「うーん。あ、そうだ。とりあえず僕に一発当てられたら今日はお終いって事で」


「い、一発……」


 そう提案するってことは、葉澄さんはかわし続けられる自信があるのだろうか?

 正直、こうもあっさりと二回も避けられている事もあって、こちらからしたら当てる事が出来るのか、ちょっと疑問だが。


 やるとなったら、やるしかないだろう。

 って、訳で気合を入れて――


(続く)

こうして、郷の修業が始まったのですが――

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