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超伝神トライブレイバー  作者: 窓井来足
第1話
4/22

「覚醒 その7」

さて、前回。

大蛇に肩を噛まれた郷でしたが。

「力を求めるか?」


 ああ。


「戦う力か?」


 いや、違う。


「ならば、お前が欲する力とは何だ?」


 俺が欲しいのは。

 俺が欲しいのは誰も――誰も悲しませないための力。

 護るための力だ。


「そうか。ならばそれを授けよう、ただし――」


 ただし?


「力を授かるという事は運命を――」


 ☆ ☆ ☆


 …………ん?

 今のは。何だ?


 傷の痛みや、出血による幻覚……とか?

 まあ、いい。

 今はそれどころでは――いや、待て。


 痛み、出血。

 そんなもの、どこにもない。


 おかしい。

 だって、俺はさっきあの大蛇に肩を噛まれて、その傷からの血が腕を伝って手まで……。


「な、何だ? これは!?」


 さっき血で濡れていたはずの左手を見た俺は、そこに青い装甲があることに気がつく。

 いや、左手だけじゃない。


 右手も、腕も。

 いや脚や胸……もしかして全身か? 流石に顔までは確認できないが……とにかく。

 俺の全身に、青を基調とした装甲が着いていたのだ。


「これは……もしかして」


 武神の鎧って奴なのか?

 なんかデザイン的には子供の頃に見ていた特撮ヒーローとかに近い気もするんだが。


 これは、もしかしたら俺のイメージする「戦う戦士の姿」に合わせた形に鎧が変形したのかもしれないな。

 だったら、(いにしえ)から伝わっているはずの力によって纏った鎧が、今時のヒーローっぽいデザインなのもわかる。


 ――っていや。

 そういう事を気にしている場合じゃあない。


 傷と、そして痛みが消えているせいで気がつくのが遅れたが。

 俺に噛みついたはずの大蛇はどうなったんだ?


 後ろから大蛇の一方の牙で肩を貫かれたんだと思っていたんだが、今の俺にそんなものは刺さっていない。

 しかし、だとしたら……あの大蛇の牙は一体どうなって……。


 そう思い振り返って大蛇の方を見てみると、こちらを警戒している様子の大蛇、その片方の牙が折れていた。


 どうやら。

 この鎧が俺の周囲に生成されたことにより、刺さっていた牙が砕けたらしい。


 そうなると、俺に刺さっていた部分がどうなったかが気になるが。

 まあ、この鎧に治癒能力があるんなら、消えたか、取れたか――あ、足元に落ちてる。

 これはなかなか立派な……。


「え?」


 俺がその牙をよく見るために拾い上げると、手の中で、その牙は剣……いや、片刃だから刀に近いのか?

 ナックルガードがあるからサーベルが一番近いかもしれないが……。

 兎も角、大蛇の牙は俺が持った途端に、サーベルのような武器に変化したのだ。


「これは……」


 とりあえずそのサーベルを構えてみる。

 かつて剣道をやっていたものの、片手用の刀は初めて使うので上手く扱えるかやや疑問だったが……なんかしっくりくる感じだ。

 よし、これならばあの大蛇と戦える。


「ん?」


 俺が戦う対象を確認するために大蛇を改めて観察すると。

 さっきまで折れていた牙が、ゆっくりとだが再生してきていた。


 俺は大蛇がこちらを警戒してはいるものの襲ってこないのは、牙が折れたダメージで怯んだからだと思っていたが。

 これはもしかすると、自分の牙が回復するまでの時間稼ぎだったのかもしれない。

 だとすると回復までの時間を与えてしまった事は相手の思うつぼという事になる。


 ――が、こっちもさっき噛まれた時とは違い。

 鎧と、そして刀がある。

 だから……。


「水槌様ッ!!」


 とりあえず彼女に呼び掛けながら、刀を持った右腕を横に伸ばして背後の水槌様を庇うようなポーズをとりつつ、頭を横に振って後ろに下がるように伝える。


 それに対して、俺が大蛇に噛まれた事に動揺していた水槌様は「う、うんっ!!」と言って、今の位置よりやや後ろ、大蛇が頭を伸ばしても届かない程度のところまで下がった。


 よし。

 これで水槌様を巻き込むことはない。

 後は。

 あいつとの一騎打ちだ。


 あの大蛇は、こちらに飛び掛かる勢いをつけるために一旦身体を縮めるはず。

 だから。

 飛び掛かった瞬間ではなく、その前。

 縮み切ったところで――来る!!


「そこだアァァーーーッ!!」


 さっきと同様に、しかしさっきよりも素早く頭を伸ばしてきた大蛇の動きを先読みした俺は、一歩前に踏み込んで相手の頭の下に潜り込み。

 そしてそこから斜め上に向かって突きを放つ。


「グ……ッ!!」


 だが、刀は刺さったものの、これだけでは大蛇の致命傷にはなっていない。

 ならば。


「喰らえエェェーーーッ!!」


 刺さった刀を今度は左腕も使って押し込む!!


 おそらくだが。

 左腕にはあの盾になるブレスレットが着いているから、チャージできるエネルギーが右手より大きいはず。


 いや、それ以前に。

 今の俺の戦っている理由が「大蛇を倒す」ではなく「水槌様を護る」である以上、刀より盾の側にエネルギーを乗せやすい気がする。


 まあ、実際どうかは知らないが。

 確かめている暇がない以上、やってみるしかないだろう。


「うおぉぉぉォォぉぉぉーーー!!」


「ググ……グゲゲ……」


 よ、よし。

 さっきより刀が深く刺さっている。

 後は――


「これで……終わりだッ!!」


 盾に溜めたエネルギーを、刀に向かって一気に送り込むッ!!


 こんな化け物、単に串刺しにしたり、斬ったりしたところで致命傷になるとは限らない。

 だが、さっきの蛇怪人と同じなら、エネルギーを流し込むイメージで攻撃すれば倒せるはずだ。


 つまり、これなら――

 いける!!


「ググ……ガッ……グギャアアァァァァーーーッ!!」


 よし!!

 やった!!

 大蛇はさっきの化け物みたいに黒い煙となって消失した!!


 俺はそれを確認してから、すぐに水槌様の方に駆け寄りながら変身を解こうとする。

 解き方なんて聞いていなかったが、どうやら「変身を解きたい」と思えば変身解除できるらしく、鎧は簡単に外れ、元の格好に戻った。


「水槌様ッ!!」


「え? あ、郷君……」


「なんとかあいつを倒して、武神の力も手に入れたぜ。ついでに、刀……ん?」


 気がつくと、俺の持っていた刀は木刀になっていた。

 俺がその木刀をしげしげと見ていると、水地様は、


「ああ、それはあの腕の盾が普段はアクセサリーみたいになっているのと同じようなもんだよ。人前で持ち歩きやすくするためのカモフラージュみたいなやつ」


 と、口にする。

 なるほど。確かに刀なんて持ち歩いていたら問題になるから木刀……って、


「木刀も常時持ち歩くのは無理があると思うんだけど?」


「ん? あ、そっか。そういえばそうだね? ……ちょっと貸して」


 言うが早いか、俺から木刀を取り上げた水槌様は、何か印を結んで切るような動作をした。

 すると木刀の柄に何やら文様のようなものが浮かぶ。


「はい。これで普段は異空間に収納できるから、取り出したいときに呼び出せばオーケー」


 なるほど。

 さっき水槌様は、自分の住処は異空間にあるみたいなことを言っていたけど、多分それの応用だろう。

 などと思いつつ、木刀を受け取った俺は早速、異空間に収納したいと念じてみる。


「あ、消えた」


 案外簡単にできたんだが。

 さっきの変身解除といい、この武器の出し入れといい、なんかできて当然みたいな感覚でできるものなんだな。

 まあ、ただでさえ戦うのが大変なのに、その上そういうところで苦労していてたら体力……が……あれ?


「ちょ、ちょっと郷君!? 大丈夫!?」


「あ……ああ。大丈夫大丈夫」


「いやいやいや、どう見ても疲れているからね」


 そ、そうなのか?

 まあ、ちょっと頭がふらついて、ぼんやりしている気もするけど。

 そんなに問題はないと思うんだが……。


「もう、初めて変身して戦ったんだし、それに回復したって言っても大蛇に思いっきり噛まれたんだから、今日は無理しないで帰って休んだ方がいいって」


 俺の考えとは違い、水槌様は俺にそう勧めてくる。

 言われてみると怪物との戦いなんて初めてだし、傷がふさがったと言ってもダメージは受けたんだから体力は使っているかもしれない。

 が、しかしこっちとしては聞きたい事も多いし……、


「いや、確かに疲れているかもしれないけどよ、俺としてはもっといろいろ事情とか聞きたいから――」


「はい、これ?」


「ん? 何?」


 水槌様が俺の方に伸ばしてきた手。

 そこには……スマホ?


「連絡先教えておくから、質問とかはこれでよろしく」


「よろしくって……」


 神様、スマホ使うのかよ。

 まあ、アニメとかで神様やら妖怪やらがスマホ使ってんの見たことあるような気もするけど、スマホの契約の手続きとかどうしてんだろう?

 まあ、そんなことはいいか。どうでも。

 とりあえず、俺は水槌様とSNSでやりとりできるように、友達申請して……ん? なんか送られてきた……って、これ。


「このスタンプ……」


「それ? あたしがモデルだけど? どう?」


「どうって……」


 この(ひと)、SNS用に自分のスタンプまで作ってんのかよ!!

 どんだけ自分大好きなんだよ!!


 ……まあ、いいや。

 気にしないことにしよう。

 だって、もう疲れているしな。うん。


 と、こうして。

 水槌様との連絡手段も手に入れた俺は、二人で下山し。

 そして、キャンプ場のロッカーや冷蔵庫に置いてあった荷物を回収し。

 この日は帰路につくことにしたのだった。


 今後、俺がどうやって化け物と戦って人々を護っていくのかについて、まだわからないことだらけだが……まあ、何とかやっていこう。


 ☆ ☆ ☆


「ちょっと、あれどういうこと?」


 郷君が立ち去ってすぐに、あたしはあいつに確認する。


「あれとは?」


「あれって、あたしは郷君を傷つけないようにっていったじゃん」


 そう。

 あたしは郷君が噛まれて、出血なんて展開は聞いてなかったし。

 そもそも、そういうのは無しの方向でってこいつに言っていたのだ。


「はて? 私は『なるべく傷つけないで』と言われたと記憶していますが?」


 ああ、もう。

 それは「かすり傷とはそういうレベルなら仕方がない」ってことで。

 牙が肩を貫通とか、そういうレベルの傷は駄目に決まっているじゃん。


 なんて、こいつに言っても仕方がないのかもしれないけど。

 どうせこいつは。


「それにあの程度の傷ならば、武神の力さえ手に入れば回復は可能だと、お互い事前に知っていたはず。ならば問題ないでしょう」


 ほら、そういう事をいう。

 そして。


「何より、この件に彼を巻き込んだのはあなたなのです。戦いの中に引き込んでおきながら『傷つけてはいけない』では筋が通りません」


 こいつの言う通り。


 ここで郷君が怪我をしなかったとしても、こういう世界に引き込んだ段階で、あたしも彼を傷つけたのと同然なのだ。

 そんなことは分かっている……けど。


 やっぱり、何も知らない人を――

 いや。

 いやいやいや。

 迷う訳にはいかない。


 あたしが、数百年待ってようやく手に入れたチャンスなんだ。

 それに、上手くいけば郷君自身は無事で済む。

 彼自身は……だから。


「兎も角、彼は武人の力を開放し、盾と鎧を手に入れました。武器についてはあなたの予想通り、彼の力では生み出せなかった訳ですがそれも、こちらが用意した刀を与えたから問題はないでしょう。つまり」


 つまり、これで。


「あなたの、そして私の計画は無事に開始されるという事です」


 そう。

 あたしの計画は、ここからが始まりなのだ。


(第1話・完)

こうして、武神の鎧を手に入れた郷。

彼の進む道の先に待ち受けるのは、はたして――

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