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超伝神トライブレイバー  作者: 窓井来足
第1話
3/22

「覚醒 その6」

さて前回、川の神を名乗る女性、水槌から事情を聴いた郷ですが。

その後彼は――

 草戸(くさと)山。

 町田市で一番標高が高いところで、さっき説明したように標高は確か大体三百六十四メートルとか、そんなもの。

 先のキャンプ施設に近いこともあって、休日にハイキングなどに来る人も多い山なのだが。


 その山道を俺は。

 水槌様に言われた事に従って。

 山頂にある、祠に向かって歩いていた。


 祠……確か、昔行ったときにそんなのあった気がするけど多分あれの事だろう。


 水槌様が言うには、何でも。

 かつてからあの山頂に現在でいう町田地域周辺を護る武神の霊が祀られていて。

 祠も、それに影響されてあの場所に設置されているらしい。

 だから厳密には祠に祀ってあるというより、祀ってある場所に祠が造られたという感じらしいが。


 まあそんなことはともかく。

 水槌様の話では。


「そこに行きゃ、鎧とか召喚できると思うなぁ? どう?」


 という事らしい。


 こちらとしては「どう?」って言われてもというところだが。


 いや――というか。

 ノリが軽すぎないか? あの神様(ひと)。という気もする。


 まあ、実際の神様なんていうのは、偉すぎるせいで逆にあまり立場とか気にしてないのかもしれないし。

 あるいは人間相手に下手に威厳のある雰囲気で接してしまうと逆に警戒されるかもしれないから、あんな感じなのかもしれないが。


 だからと言って「水槌様じゃあ堅苦しいからみーちゃん……いや、みーたんと呼んで」はないだろう。


 そりゃあ確かに、人間の姿の時は美人のおねーさんという感じだったけど。

 神様の姿ってのか? あれ、どっちかというとなんかメタルバンドとかやってそうな感じだったし。特に服装とか。

 まあ、確かに美しいかと言われたらそういう気もするけど、少なくとも可愛い系ではなかったよなぁ。


 そんな見た目で、自身をみーたんと呼んでほしいとか……何考えてんだろう? あの神様(ひと)

 まあ、神様のセンスなんて人間には理解できないのかもしれないからあんまり気にしても仕方がないだろうけど。


 ともかく。

 そんなノリの軽い神様に言われるままに、俺は草戸山山頂に向かっていたのだった。


 ちなみに。

 俺が水槌様が勝手に選んだのに、ヒーロー役を引き受けた理由は単に。

 何でかは知らないが水槌様の事を、なんか放っておけない感じがしたから。

 で、ある。


 決して、彼女が美人だったからとか、ちょっと好みだとかそういう下心はない。多分。


 …………いや。

 流石に、全くないかと言われたら。

 むしろ相手を「恋愛対象としては全く魅力を感じないです」と否定しているみたいで逆に失礼な気もするので「多少あります」と答えるだろうが。


 そ、そんなところだ。うん。


 などと考えながら、俺が子供の時に何度も登っていた、木の根で凸凹とした山道を進む。

 しかし、この道、久しぶりに登ってみると。

 思ったより歩き甲斐のある感じなんだが、よくこんな道を子供の時に登れたな。


 まあ、とはいえ。

 全国歩いて回った今の俺にとってはそんなに苦労するような道じゃあない。

 それに今の俺は、化け物と戦うための力を手に入れに行くのだ。

 こんな道に苦戦している訳には――と。


「ここが山頂……だったな」


 石でできた鳥居と祠。

 俺の記憶が正しければ、そもそもこの山にこういう場所は一か所しかない。

 つまり、祠がある以上はここが山頂……あ、看板に「三百六十四メートル」と標高が書いてある。

 やはり山頂に着いたみたいだ。

 とはいえ。


「武神の力なんてどうやって呼び出すんだ?」


 当たり前だが、俺は祠やら神社に行って神様の力を呼び出したことなんてない。

 なので、呼び出すために来たものの、何をしたらよいのかさっぱりなのだ。


 まったく、こんなことだったらあの神様、水槌様に聞いとくんだったぜ。

 とは思ったが。


 こういう場合、なんか選ばれし者の証とかを祠の前で掲げたりしたら、それに反応したりするんだよな……ゲームとかなら。

 そして、今俺の左腕にはさっきのあの盾……いや、現在はどういう訳か普通のアクセサリーみたいな形になっているけど、ともかくあの盾が装着されている。


 ならば、これを――

 そう思った俺は、とりあえず祠の前に立ち。

 そして試しに、左腕を天に向かって掲げてみた。


 その時!!

 天が激しく光り。

 雷のようなものが。


 ……ん?

 この展開、さっきもあったような気もするが。

 これはあれか?

 なんかこの近くに武神の使いでも現れたっていう事か?


 さっきの蛇怪人と神様じゃあ違うものの気がするが。

 こういうのって、どれも似たような感じで現れたりするってことなんだろうか?


 それともまさか……。


 俺は、雷らしきものが落ちたと思われる、祠の傍。

 展望台として設置されている四阿(あずまや)あたりに目を向ける。


 すると、そこには。

 俺の悪い方の予想通り……。

 いや、どころか。

 その予想以上の感じに。

 黒いオーラを纏った、蛇の怪物がいた。


 だがしかし、それはさっきの蛇怪人みたいのとは違う。

 言うならばそれは大蛇。


 四阿を包み込むような形で巻き付き、頭部を屋根に乗せているそれは、全身がまるで黒い金属のような鱗に覆われていて、胴には血のように赤い模様が描かれている。

 そしてそいつは、俺の方に顔を向け、鬼灯のように赤く鏡のように輝く目でこっちを睨んでいる。


 確か蛇ってのは視力ではなく嗅覚や温度で獲物を探る生物だった気がするが。

 この大蛇にそういう常識が通じるとは思えないから、あの目で俺を見ていると考えても良いだろう。


 いや、仮にあの目では全くこちらを認識していないとしても、あのドロドロと燃える溶岩のような目つき。

 ここからならば兎も角、もう少しでも近づいたら、恐ろしくてで身動きが取れなくなるかもしれないくらいだ。

 それじゃあまるで蛇に睨まれた蛙じゃあないか……俺は蛙じゃあないけど。


 ――などと考えている場合じゃあねえ。

 さて、この突如現れた蛇怪獣。

 こいつをどうするかだ。


 そもそも、俺はこいつと戦う必要性があるのだろうか?

 少なくとも、今すぐこいつとやりあう必要性は全くない……はずだ。


 そりゃあ、勿論。

 ゲームやらアニメみたいに考えたら。

 こいつが武神の力を守っている守護者だったり、あるいは俺が力を得るのを妨害しに来た魔物なのかもしれないけど。

 現段階では、確実にそうであるという保証はない。


 何せ、さっきのキャンプ場では何の脈絡もなく蛇怪人が出ているのだ。

 そういう感じで、たまたまここにこいつが出現しただけって可能性もある。


 いや、仮にもしこいつが俺の求める力に関係がある怪物だったとしても。

 さっきと違い、誰かが襲われているわけでもない以上、すぐに戦う必要性はないじゃあないか。


 勿論、このまま放っておけば誰かが襲われるかもしれないが。

 とは言っても今の俺があいつに挑んでも勝ち目はなさそうだ。


 誰かを助ける訳でもないのに勝ち目のない戦いをすることは単に犠牲者が増えるだけだから、賢い選択ではないだろう。


 つまり……不用意に戦うよりは、何か対策を練った方が良いんじゃあないだろうか。

 しかし、化け物を相手にする場合の対策なんて……あ、そうだ。

 水槌様に事情を話して、何かアドバイスを貰えばいいんじゃないだろうか?


 仮にこいつが武神の力の守護者だったら、水槌様も何か知っているだろうし。

 そうではなく、さっきの蛇怪人みたいな魔物でも、彼女は化け物を何とかするために活動しているはずだから何か知っているだろう。


 ……よし。

 一旦下山して、さっきのキャンプ場に戻って相談しよう。

 大蛇のやつは俺の方を見てはいるが、自ら襲い掛かってくる様子もない。

 ここは、そっと立ち去るように……


「おーい、郷君。大丈夫ー?」


 ん、この声は。

 俺が声がする方を向くと、その方向に水槌様の姿が。


 さっきのキャンプ場からこの草戸山山頂へ来るのには、俺が来たのとは別の道もあるのだが。

 どうやら水槌様はそっちから――

 ん?

 大蛇が。

 顔の向きを変えて……。


「キシャアァァァァァァァーーッ!!」


 ヤバい!!


「水槌様ッ!!」


 俺は、さっき怪人と戦った際に拳に力を集めたのと似たイメージで、脚に力を集めて跳躍し、水志様に向かって飛び掛かった大蛇から彼女を護――


「ガッ……」


 い、痛てぇ……

 なんだ……これ……

 俺の、予想より大蛇の速度が……

 肩に牙……貫いている……か?


「ちょ……え……ええ!? 郷!? 郷君!?」


 驚いた顔をして俺の名前を呼ぶ水槌様。

 どうやら、彼女は無事みたいだ。

 ……が、大蛇に肩を噛まれた俺は、かなりキツ……しかし。


「郷君!? 郷君!? しっかりして!!」


 水槌様。泣きそうな顔をしている……。

 ここで俺が倒れたら、マジで泣くかもな。

 いや、それ以前に。

 大蛇が彼女に襲い掛かるかもしれねえ。

 そうしたら――

 嫌だな。

 さっき会ったばかりとはいえ、俺を助けてくれたひとを悲しませんのも。

 そして俺が傷ついたことに悲しんでくれる人を救えないのも。

 嫌だな――

 もう、誰かを悲しませたり、

 助けられなかったりするのは――嫌だ。

 あの時から、俺はずっと……

 戦う力、それがあればきっと――


(続く)

巨大な怪物に襲われた郷。

はたして彼は無事なのか……次回に続く。

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