表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超伝神トライブレイバー  作者: 窓井来足
第3話
PR
21/22

「繭玉 その2」

さて、前回。小野路城址で何者かの活動の痕跡を発見した水槌。

彼女はそれを郷に報告するのですが……。

「って訳で、みーちゃん、一仕事してきました!!」


「いや『って訳で』とか言われてもな」


 あの調査から数日後の昼下がり。

 あたしと郷君は、仲見世商店街傍の喫茶店で。

 オレンジケーキと珈琲をいただきながら、例の小野路城址の事件について話していた。


 ちなみに、SNSなどではなく直に会って話している主な理由は。

 事件についての細かい説明にはその方が向いているだろうと思ったのと。

 郷君が町田でヒーローをやるにあたって、地元のお店を知っておきたいと言ったからというのがあるのだけど。


 まあ、それはともかく。


 あたしとしては調査の内容を熱意を込めて説明したというのに、どうも郷君は腑に落ちないらしい。

 これはあたしの伝え方が悪かったのか。

 それとも、自体が複雑で郷君には難しいのか……いや。


 郷君と最初に会った時の彼の、今時(このじだい)の若者的な理解力から考えたら。

「今までのと違う敵がいる」とか「そいつは地元にある民話や伝承みたいな物語を利用して怪物を生み出している」とかは、割とすんなり理解できると思うし。

 一体、郷君、何処が納得できなかったんだろ――


「いや、この場合『お疲れ様です』と返せばいいのか? 俺、まだ神様ってどんな仕事しているのかよくわからないし」


「………………」


 え? そこ? そこなの!?


 と、思ったけどよく考えてみれば。

 最近こういう世界に足を踏み入れたばかりの郷君は、まだあたしがどんな仕事をしているか知らないから、一仕事って言われても反応に困るのは当たり前か。


 よし、じゃあ。

 郷くんの方に話題を合わせつつ、あたしの方の説明をさせてもらおう。


「まあ、神って言っても色々あるから一概には言えないけど、あたしの場合は人間の常識の外のもの……人間にわかりやすく言えば妖怪っていうの?」


「妖怪?」


「あ、ここでいう妖怪は怪奇現象全般の事で、具体的な存在がいるとは限らないんだけど……兎も角、そういうものから人々を護るのがあたしの仕事になる訳」


「ふぅん」


「で、今のあたし本来の仕事としては、主に境川を中心にそういう事件を扱っているんだけど」


「今回は俺が言った事が気になって、調べに行ったらたまたまそういう事件っていうのか? それを見つけたっていう事?」


「まあ、そうなるね」


「いや、でも……仕事って言ったけどよ、そんなに頻繁にそういう事件って起こってんのか?」


「え?」


「確かに、ヒーローに選ばれてから俺も頻繁に不思議な存在に会うようになったけど、それまでは殆ど遭遇しなかった訳で。仕事になるほど事件って起こるもんなのかなって」


 あ、そうか。

 今まで普通の人間側にいた郷君からしたら、怪奇現象なんていうのは滅多にない事なのか。


 あたしとしてはずっとこっち側だったから、中々郷君の感覚は理解しにくいんだけど。

 さて、これを説明するには――。


「そうだ。例えば、今ここであたし達は普通に話しているけど、周りの人がこの会話の内容を聞いたらどう思うかな?」


「ん……まあ、常識に合わせてゲームかアニメの話か何かだと思うか、精々オカルト好きな人同士の会話だと思うんじゃないか?」


「ま、そうだね」


「でも、そもそも水槌様が人間の認識みたいのに作用するように何かの術で細工してあるから、周囲はこの会話をごく普通の日常会話みたいにしか感じていないんだよな?」


 郷君、あたしの質問に対しておよそこちらが考えていた通りの回答をしたけど、ついでにその後に話そうとしていた内容にまで触れてきたか。

 こっちとしては順番に話すつもりだったんだけど。

 ま、そこまで気がついてくれるなら。


「あたしが説明する前にその事にも触れてくれて助かるんだけど」


「助かる? 何が?」


「いや、その二つが主に普通の人間が怪現象に気がつかない理由だから、説明の手間が省けたって事」


「二つ?」


「うん。まず普通、怪現象や不思議な存在は何らかの力を使って、人間に認識できなくなっている」


「ええと、それは今のこの会話や、この前のソニさんの頭みたいに?」


 ん? ソニさんの頭?


 あれについては彼が頭まで人の姿に化けるのを面倒くさがって、普通の人に対しては幻を見せるだけで誤魔化しているっていう事情があって。

 こっちとしては万が一のことがあるからちゃんと化けて欲しい反面、相手には相手の言い分があるから下手に指摘できないっていうのがあるんだけど……。


 ま、それは今は関係ないから置いといて、話を続けよう。


「そうそう。で、そしてその上、仮に何らかの方法で認識できたとしても、常識的な判断が働いて、異常な出来事を自分達の常識に当てはめてしまう」


「この会話を聞いてもゲームの話題か何かだと思ってしまうっていう感じか」


「そう。まあ、そんな訳で基本的に怪現象に気がつく人はいないし。仮にいたとしても」


「いたとしても?」


「変な人だと思われるのが嫌だから怪現象について言い出さないか、逆に周囲に話して変人扱いされるか……だね」


「変人ねぇ……」


 まあ、実のところ。

 怪現象について口にしたところで、周囲の人がまともに相手をしない事もまた、一般人が怪現象に気がつかない理由の一つではあるんだけど。


 それについては――いや。

 この話はあたしが話したい本題に繋がるか。

 よし、ならば。


「で、大抵の場合、今言ったような事情で怪現象の情報は広まらないか、広まっても嘘偽りの類だと思われる訳だけど」


「だけど?」


「もし意図的に怪現象の情報を広めようとするヤツがいたら、結構拙いっていうか」


「拙い……ってのは、あれか? 人間社会の秩序が乱れるとか、混乱が起きるとか」


「それもあるけど、それ以上に拙いのは怪現象の情報が広まる事で、怪現象の力がより強くなっちゃうって事なんだよ」


「え? 何でそうなるんだよ?」


 うん。

 まあ、いきなりこんな事を言われたら唐突に感じるんだろうなぁとは思うけど。

 あたしとしてはこの辺りの事情を郷君に深く知られると、あたし自身の計画に支障が出るかもしれないから隠しておきたかったってのはある。


 けどまあ、今は状況が変わったからこの辺りも説明した方がいいだろう。


「いや、あの手の怪物の力になりやすいものの一つが人間の恐怖心とか、あるいは怒りや憎しみだったりする訳でさ」


「え? そうなのか? ……いや、考えてみたら」


「ん?」


「俺も〈人々が町を想う気持ち〉からエネルギーを集めて強くなるんだから、善悪は逆かもしれないけど、人の気持ちを力にしている事は同じか」


「うん、そうそう。同じ〈精神エネルギー〉を使って戦う存在だけど、あたし達とあいつらだとプラスとマイナスで逆……みたいな」


 本当はこの辺り、もっと複雑なんだけど。

 郷君が納得してくれれば今回は構わないから、あたしも彼の理解した形に話を合わせるとして。


「で、ここで最初の話題に戻るんだけど。あたしが何で例の小野路城址の事、気にしているかっていうと」


「なんかの術で怪物を生み出すような頭が回るヤツなら、エネルギーを集めるために意図的に情報を広めて、人々に不安や恐怖を植え付けたりする可能性もあるって事か?」


「あ、それは予想がつくんだ」


「ほら、あれだ。こういうのってヒーローものの悪の組織とかだと定番っていうか」


「定番ねぇ……まあ確かにフィクションではよくあるかな」


「だろ?」


「とはいえ、まだ例のヤツがそういう悪役と同じような奴だと決まった訳ではないけど、それでも――」


「警戒するに越したことはないって事か」


「うん。まあ、とは言っても当面は表立って人前で暴れたりはしないと思うよ? 力をつける前にそんな目立つ事をするほど相手もそんな馬鹿じゃないだろうし」


「まあ、そうか」


「だから相手について警戒して情報を集めつつ、いざというときの為に力をつけておくってのが、今のあたし達にできる事になる訳だけど……まあ、情報収集は専門家であるあたしに任せてもらうとして郷君には」


「力をつけておいて欲しいって事だな」


「そうそう。だから、今後もよろしくって事で――」


「あ、ちょっと待って」


「ん? どうしたの?」


 話もキリが良く終わったし、注文した珈琲やケーキも食べ終えているので、そろそろ店を出ようかと椅子から立ち上がったあたしを呼び止める郷君だけど、一体何――


「いや、力をつけるっていうので思ったんだけどよ。今の俺には戦うのに色々足りないんじゃないかって」


「ん? それってあれ? 覚悟とか心構えとか?」


「いや、確かにそういうのもあるかもしれないけど、そうじゃなくてもっと具体的な感じっていうか。俺の持っている武神の鎧の扱い方、みたいな」


「扱い方ねぇ」


 なるほど。

 確かに力をつけるっていったって、具体的に何をすればって話になるか。


 まあ、これが普通の人間の場合なら、身体を鍛えるとか、新しい武器の扱いを練習するとかになるだろうけど。

 あの鎧の場合はそれだけでは足りないだろうし。


 だったら……あ、そうだ。


「郷君、ちょっとこの後一緒にソニさんのところに行かない?」


(続く)

こうして、二人はソニさんの元に行くのですが。

果たして水槌は一体何を考えたのか、次回に続く!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ