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異世界転生は引退勇者の喫茶から  作者: 笑門一二三
7/9

深紅の女戦士とハニートースト

「あー、そういえばまだ名乗ってなかったな。私はジーナだ、よろしくな。ヴィルとは長い付き合いでさ、何度も共に死線をくぐり抜けて来たもんだ。対魔王戦争の時とかな。」

「ああ!懐かしいね!そうそう、ジーナは私のパーティーの一人だったんだよ。あのときは私も少しアレだったしジーナも今より怖かったから、雑魚モンスターは寄り付かなかったんだよ」

「ハッ、全然少しじゃねぇよ...」


ヴィルさんのパーティーメンバーだったってことは、

ジーナさんは勇者のパーティーにいたということで

つまりは相当な実力者だということは、転生者の俺でもわかる


というか、誰でもジーナさんがとてつもなく強いのは見ればわかる


「ちょっと耳貸せ」

ヴィルさんが奥に行ったタイミングを見計らって

ジーナさんが俺に小声で耳打ちをしてきた

「...あのな、ここだけの話、ヴィルも昔は尖りまくってたんだよ。でもな、なぜか老若男女に人気があってさ、私らパーティーメンバーはずっと不思議に思ってて、ある日ー」

いつの間にか戻っていたヴィルさんがジーナさんの肩に手をのせている

「秘密のお話かい?まさか私の昔の話ではないだろうね?」

「そ、そんなわけないだろ?な、」

ジーナさんの圧倒的圧力に気圧されて、頷くことしかできない

そんなジーナさんもジーナさんで、ヴィルさんの圧力に負けかけている

「頼むから、内緒な」

「はい!」

ジェスチャーと口パクで会話をする

「なにが内緒なんだい?二人とも」

やっぱりバレてたー...


「は、話を戻そう、私は勇者候補であるはずのお前がここにいる理由を知りてんだ」

「転生するときに召喚主がトイレに行ってて、寝てしまって、起きたら森で、ヴィルさんにたすけられ、ここで働かせてもらってるんです!」

「なる...ほど...、よくわからないが、それで期限切れして勇者候補から外されてたのか。」


ヴィルさんとジーナさん曰く、

今は、勇者を選定する試験に参加できるのは期日までに召喚され、王への謁見を済ませた者のみらしい

ちなみに、この条件が設けられたのはヴィルさんの殴り込みが原因で、

ヴィルさんが転生者の勇者候補達を戦闘続行不可能な状態までボコボコにしたときは、

試験官や、偉い人達が相当話し合い、例外として強さと勇猛さを認め勇者にしたという。


「まったく酷い話だ。パーティーへの参加を頼まれたときは心底嫌だった」

「今からは想像もつかないですね...」

「今はただのコーヒー好きのおっさんだからな」

「え、ジーナさっきからひどくないかい?」

「気のせいだ、気にするな」

ジーナさんがパーティー参加に乗り気じゃなくなるほど怖いというのは、

だいぶヤバそうだ...

いつかジーナさんから勇者時代のヴィルさんの話を聞きたい


「召喚主は一緒じゃないのか?」

ジーナさんは店内をキョロキョロ見回す

「召喚主と一緒じゃないといけないんですか?」

「言ってなかったのか、ヴィル...。あのな、転生者と召喚主とは命の繋がりが出来るんだ、簡潔に言うと、どっちかが死ぬともう片方も死ぬんだよ。」

「......え!?!?!?」

反応にタイムラグが生じるくらい驚いた

つまり普通は、転生者と召喚主は常に互いを守り合うために一緒にいるということか

「じゃあ俺は、ルナに何かあったら...」

「その場でぽっくりと」

「マジですか...」

「マジマジ」

ヴィルさんは、そんな大事なことをなんで言ってくれなかったんだ!?

そうか!なにか考えがあってのことなんだなきっと!

だって元勇者だぞ?それにこんなに優しんだもんな、


「すまない、私は勇者だったけど召喚主なんていなかったから忘れていたよ」

「確かに...確かにそうですけど...、ルナも手紙の通り自分で説明する気は無かったのか...」

そしてきっとユノ先輩は普通に忘れてたんだろう


「お前は何かと不運そうだな、なんというか...頑張れ」

「はい...ありがとうございます...」

これからは人を見た目とオーラで判断するのをやめよう

ジーナさんは思っていたよりいい人だった


カランカラン


「ただいまー!無事届けてきたよ!」

「おかえり、それはよかった」

「お疲れ様です!」

「ほんと疲れたよー...思いの外遠くまで行っててさーって、ジーナさん!?久しぶりー!」

「ああ、久しぶり」

さすがユノ先輩、ジーナさんとも仲が良さそうだ

抱きついたりハイタッチをしている


「はい、ハニートースト。甘いのすきだよね?」

「さすがヴィルだ、よくわかってるじゃないか。旨そうだな。それじゃあーっむ」

ハチミツがたっぷり染み込んだパンの上にはバターが乗せられ、

熱で美味しそうに溶けて、味に深みをだす

ジーナさんが口に運ぶ度にサクッといういい音と優しそうな甘いかおりが店内を満たす

「やっぱり旨かった、ごちそうさま。それじゃまたな」

ぺろりと食べ終えたジーナさんが席を立つが、

もう一度逆再生したかのように座り直した

「…やっぱりもう1枚ほしい」

よほど美味しかったのか、少し恥ずかしそうにおかわりをした

おかわりの1枚もすぐに食べ終え、今度こそ席を立った。

しかしすぐに

レジ横の美味しそうなクッキーの罠にもかかり、

持ち帰り用に買っていった


カランカラン


ジーナさんは大剣を背中に戻しながら手をふり、帰る

厳つい装備に似合わないクッキーを持ちハチミツとバターの香りをさせながら



「んー…もうすぐお昼だね、お客さんが増える前にさっきのハニートーストの残り食べてしまおうか」

ヴィルさんはもう少し食べていくと予想していたようだ、

予想外の棚ぼたに、さっきからハニートーストのにおいにノックダウン寸前だった俺とユノ先輩はお腹を鳴らした

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