ヴィルケン先生の特別授業
ヴィルさんが黒板に図を書きながら、この世界のことを話始める
「この世界にはモンスターが存在するんだ、ランマル君を襲ったようなものから遥かに強いものまでね。その頂点に君臨するのが魔王だ。そしてそれを倒すのが勇者の役目」
「そして!その勇者を見つけるために、ランマルみたいに別の世界から可能性のある人材を転生させてるんだよ!」
ユノさんがどや顔で説明する
これでもかってくらい完璧などや顔だ
「ということは、俺みたいにまだ転生者がいるってことは魔王はまだー」
「いや言いたいことは分かるが違うんだ、魔王が存在し続けるのは当たり前のことなんだよ。モンスター達も王がいなくなったら、残ったものの中から新たな王を立て続けるからね」
そうか、魔王はモンスターの頂点。この世界の理論上はスライム一匹でも残ってたら、そいつが魔王なのか...
その考え方だと、いつかはモンスターを根絶やしにするつもりか…?
「いや、それも違う。モンスターを根絶やしにすることは不必要だし、不可能だろうからね」
な、なんでこの人俺が考えてたことがわかってるんだ?
その微笑み、怖いです…。
「…不可能はまだしもなんで不必要なんですか?危険があるなら出来るだけのことはした方が」
「モンスターも命あるものだよ、それを勇者が『モンスターを根絶やしにしてきてやるぜ!ヒャッハー!!』とか言ってたらちょっと、ね。それに勇者に対する民衆の支持は国としても重要なんだよ。なにかと防衛費、軍事費はかさむから」
「『勇者税』っていうのが王都含め、周辺地域にはあるんだよねー」
ユノさんは一通り掃除を終えたようだ
まいったまいったと話始めた
「で、魔王一代につきだいたい勇者は一人で、転生者。でも、ヴィルおじ様みたいに例外も存在するの!」
「例外?」
なぜか得意げなユノさんに反して、ヴィルさんは頭を抱えている
「ヴィルおじ様はこの世界の住人ながら転生者との圧倒的な力の差を見せて勇者に選ばれたの!しかもヴィルおじ様は国王の推薦とかじゃなくて、試験会場に殴り込みをして勇者の座を奪い取った強者なの!」
どうやら勇者時代のヴィルさんはそうとうヤンチャしてたっぽい
何はともあれ丸くなった後でよかった...
「しかもヴィルおじ様の代で倒した魔王は三代!まるで普通じゃないんだよ...」
「話を盛るな。あれは、騎士団の実力もあってこその結果だよ、たぶん...んん、ではなくて、転生者として選ばれるものは特殊なスキルを持っているんだよ、そして私も同等のスキルを持っていたが、もともとこの世界にいたから転生者として王都に召喚されなかったんだ。それでちょっとイラついてて...ありゃ?」
「結局試験会場に殴り込んでるじゃないですか!?!?」
「...否定できない、すまない」
やっぱり今は優しいマスターって感じのヴィルさんも昔は違ったらしい
ん、待てよ...
「えっと、俺も転生者ってことは何か特別な能力があるんですか!」
「転生者だから、それはあると思うけど、転生者は召喚主の加護を受けないとスキルが解放されないの。私達この世界の住人は成長とともに発現するんだ」
「そうだなぁ、ランマル君のスキルとか勇者の資格、あとは服とか色々買うものもあるし今夜にでも王都に出掛けようか」
「やったー!!私夜の王都大好き!お出かけ♪お出かけ♪美味しいものたくさーん♪」
よほど嬉しいのか回転したり飛び跳ねたり踊ったりと大騒ぎしている
「王都はねー、森を抜ければすぐだよ!でも、歩いても行くにはちょっと遠いかな、ルナとロイズにも会いに行くんだよね!」
そうか、ルナ達は王都に住んでいるのか、仕事でこの辺に来たって言ってたけど
召喚主って仕事なのか?気になる...会ったら聞こ
「ところで、スキルってどういうものなんですか?」
「んー、実際に見た方がわかりやすいよね?ちょっとお店の外に出ようか」
そう言うとユノさんは両手を上に出して構えた
「フレイム」
手のひらに赤い光が集まり渦巻く
次の瞬間火炎放射機のように火が放たれた
「あち!」
「私は火の魔法が使える〈赤魔法〉っていうスキルなの!これでもまあまあ強いんだからね?」
まさか、この目で魔法を見られる日がくるとは...
ちょっと前髪の毛先燃えたけど気にしない...
「私のは〈暴君〉というスキルなんだが、ここで使える規模で発動しても地味だから止めておこうか」
さっきのエピソードを聞いたあとだと、
〈暴君〉というスキルが似合う気がしてきてしまう
殴り込み...
「まだ知りたいことはあると思うけど、そろそろ開店時間だからこの辺にしておこうか。接客とか色んな手伝いを頼んでいいかい?」
「はい!頑張ります!」
「わからないことがあったらユノに聞いて、一応ランマル君の先輩だから、多分頼っても大丈夫だと思う」
「先輩...ゴクリ」
ユノさんが任せろ、とジェスチャーしている
「よろしくお願いします、ユノ先輩!」
「せ、先輩...ユノ先輩...なんかいい、かも...」
さっきまでとはうってかわって、少し危険な表情になっている
「開けていいかな?ランマル君も準備できてそうだ、私の着ていたやつだがエプロンも似合っているね」
「私も似合ってると思う!」
エプロンのリボンを締め、気合を入れる。
「さあ、今日も元気にやっていこうか」