不在の手紙
「おっと、その前に君のことはなんて呼べばいいかな」
「ら、蘭丸って呼んでください!」
「ランマルっていい響きよね!極東の言葉に似てる!」
「そんな目を見て言われると少し恥ずかしいです...」
「なんか、ランマルって可愛い...」
「え」
「それで、ランマル君、君はなぜ森の中にいたんだい?」
危険な目をしたユノさんをどかして
ヴィルさんが優しい物腰で聞いてくる
「転生して、目が覚めたら森の中で...歩き回ってたらモンスターに襲われて、いかにも雑魚モンスターって感じだったので勝てると思ったんですけど」
「確かに雑魚だが、戦い方を知らなければ強敵だよ」
「ああ!つまりはそこをヴィルおじ様が助けたのね!でも不思議、転生者が今この森にいるなんて」
ユノさんの言葉にヴィルさんも大きく頷く
俺はイレギュラーなことをしでかしたのだろうか...
「なにか普通と違うんでしょうか?」
「うーん...召喚主から説明は受けていないのかい?」
ショウカンシュ...?
聞いたことのない言葉だ
「召喚主って言葉を今はじめて聞いた感じです」
「むむむ...やっぱり転生されるまでのこと聞こ!じゃないと何もわからないよ?」
「しかしユノ、それでは死亡時の記憶まで呼び覚ますことに...」
「俺なら大丈夫ですよ、覚えてることは全部話します!俺が転生したときのこと」
あの日、俺は友人達と一緒に家に帰ってました。
もうすっかり暗い時間で、周りに他の人はいなかったんです。
そんな中、急に車が俺達に突っ込んできて、
でも痛みは無くて、気付いたら真っ白な部屋にいました。
最初はすごく驚いたんですけど、いくらびっくりして叫んだところで
一人だったので、だんだん「一人でなにしてんだろ」って気になってきて...
「...なんか死に際より、思い出したときのダメージが強そうだよ?」
「ユノ、一人ではしゃいだあとの虚無感は辛いものだよ」
「え?ヴィルおじ様、一人ではしゃいだことなんてあるの?」
…
「ゴホンッ、そこに召喚主がいるはずだけど」
「はい、でも誰もいなくて、置き手紙が置いてあったんです」
『女神お手洗い中、ちょっとそこで待っててね』と、
「で、待ってたのかい?って、ん?女神?」
「トイレならすぐに戻ってくると思ったので、まあ、かなり待った上、女神には会えなかったんですけど」
そう、それで待ってても来ないから眠くなってきて、寝てしまったんです。
女神様(実物は未確認)の前で寝た罰なのか、起きたら森の中で、また手紙が置いてありました。
『ごめんなさい、あまりに気持ち良さそうに寝てたから起こせなかったの。現世でのあなたは死に、この世界に転生したわ。あとはその辺の人に聞いてね。-愛を込めて、女神より-』
「なるほど...その子は女神じゃなくて、召喚主だよ。災難だったね。」
「ああ...あの子なら王都じゃなくて森に召喚とか、女神とかしそうだね...」
二人に同情の目を向けられる
俺を転生させた女神、もとい召喚主を二人とも知ってそうだ。
「あ、あの僕はこれからどうしたら」
「んーそうだね、今頃王都に戻っても勇者の資格はもうない可能性が高いし、この世界についてランマル君は何も知らないわけだし、どうしようか」
「ねー、どうしよ!」
何か企んでいるような顔が気になるんですけど!
コンコン
と、そのときドアをノックする音が聞こえた
「長月蘭丸様はこちらにいらっしゃいますか?」