おまけ※愁のいない鈴木家
「ただいま、今帰ったぞー!!」
異世界から帰って来た鈴木一は、律儀に玄関から声をかけるが、玄関の扉を開けたわけではない。
その証拠に玄関の扉には鍵がかけられており、玄関の床にはほのかに魔方陣のあとが消えつつある。
一は元いた世界(異世界)にいっていた。
もちろん一が地元を懐かしみ帰省したわけではなく、数日前に突然姿を消した孫を探すために前に自身がいた世界を探してみたのだが…一の眉間の皺が深いことからそれも芳しくなかったようだ。
「あら、義父様、お帰りなさい」
一が居間の扉をあけると、一と同じ世界の元巫女姫(現在、息子嫁)、聖子がのんきに出迎えてくれる。
ソファーに座る一の息子、平ともう一人の孫である、力は、こちらをじっと見つめるが、一が首を振ると残念そうな顔をするがそれも一瞬、数秒後にはこちらものんきにテレビを見始める。
「一応聞くがお前たちは愁が心配ではないのか?」
「父さん、『あの愁』だよ。どこに行ってもどうにかしていそうじゃない?」
一の質問に平は逆に聞き返す。
「「愁(兄貴)だしね」」
ハモルように聖子と力がいうと、なぜかみんな納得してしまうのは、日ごろの愁のドタバタ劇場を見ているせいではないだろうか。
愁は母似の可愛い系の美少女+(プラス)低身長でかなり苦労してきた。
小学生から変態はもちろん誘拐未遂なんてことも年に数回必ず起きるような子供だったのだが、なぜかそのどれも愁は自力で切り抜けてきた。
変態にはこんこんとお説教モードに入り、いかにストーカーがとても罪が重いかとか、果ては変態が捕まれば変態の家族はこの先どうなるかなどなどきりのないくらい説教をすると、さすがの変態も涙ながらに土下座して謝らせて更生させていく。
ある日、近所の人が「大変だよ、愁ちゃんが変な車に乗せられて!これは誘拐だよ!」なんてことで騒いでいたら、数時間後に自力で歩いて帰ってくる始末。
運動神経に特化していないはずの愁が自力で帰ってこれるくらのオカンモードを発動したのか?とおもえば、どこかの家の2階に監禁されたが手足を縛られるのを自前の演技で回避したのち、雨どいやら電柱を伝ってトラックの荷台で帰ってきたと聞いた日には。
『愁はどこに行ってもやっていける』
と、家族全員…ついで近所の人々がそうおもったのは言うまでもない。
「そうだな。まぁ、何か問題があればわしの杖もあるし、愁ならそれを使って自力で還ってくるだろう」
一はそうつぶやくと、平と力が座るソファーの端に座る。
テレビではどこかの国の動物園で生まれた子狼がじゃれている様子流れ、異世界で大変な立場になっている愁の苦労など知らずほのぼのとした空気が鈴木家に流れていた。
補足★
「あ!そういえば、わし、愁に杖の使い方を教えていたかな?」
「「「………」」」
なんてことを一が発いていたが、家族の誰も答えることはできなかった。




