18.ヘイゼル王子
「わたしの名前はヘイゼル・フィルミーノ、フィルミーノ国の第一王子だ。で、君は誰なんだい?」
顔は笑顔ながら目が笑ってない(絶対零度の)視線でそう問われたとき、『僕もうオワッタ』と異世界にきて2回目の経験をした瞬間。
部屋の中央に立っている男に端にあるベッド上に転がされている僕。
「同じ顔をしているけど、君はリーリアではないでしょう?君は誰だ?」
「………」
再度僕は問われたが無言を貫いた…というか、いまだ猿ぐつわをしているので話せないのが現実なのだが、周りにいる5名ほどの兵士がヘイゼル王子のセリフに呆然としてて、外してくれないんだよね。
しびれを切らしたようにヘイゼル王子が「ピータン、そこの者を自由にしろ」と言ったときは、この王子は兎になんて命令をするんだ!馬鹿か!っとおもったけど、それは違う。
ブチっと縄が切れる…ついで猿ぐつわもブチブチっと切れる…ピータンさん、あなた人間の言葉を理解できるうえに、その歯で縄切りもきるのねっと感心してしまう。
僕はベッドから起き上がり正座をする。
深々とヘイゼル王子に頭を下げつつ、懐にしまってある手紙…若干しわができてしまった手紙を手で伸ばし献上する。
イメージとしては時代劇で殿様(ヘイゼル王子)に直訴するために土下座をしつつ手紙を渡しているような下級侍(僕)という感じだ。
僕は顔を上げるとまたあの冷たい視線にさらされそうで頭を下げたままだが、時折ヘイゼル王子がリーリア姫の手紙をカサカサ握りつぶす音が部屋に響いているような気が…。
兵士たちは何してるかって?僕に視線をガンガン飛ばしてますよ!
いまだ僕が姫ではないと信じてない者がいるようだが、ヘイゼル王子のセリフで間違いを指摘されたようなものだ、叱責されるのを恐れているようでブルブル震えている音も微かに聞こえる。
そんなこんなで数十分後に爆弾発言が飛び出す。
「へぇー、君はその見た目で男の子なの?勇敢にもリーリアの身代わりに『姫』となって大国に嫁いでくれるとは優しいねー」
「えっ!?身代わり?!嫁!?」「「「えっ!?男ぉ~!?」」」
僕と兵士たちの声が重なった。