15.僕と大兎のピータンさん
リーリアさんの逃亡…もとい、恋のおっかけ作戦の決行は早かった。
僕は異世界初日ということもあり緊張して夜は眠れない…なんてことはなく、衣食住+仕事もなんとかなりそうなので、安心感からぐっすり睡眠できました。
それでも、ちゃんと早朝とはいかないけどちょっと遅めの朝っていうくらいには起きたはずなのに、宿屋の主人が話すにはリーリアさんは朝日が昇る前に宿屋を出立したそうだ。
リーリアさんがお兄さんに宛てた手紙は僕の部屋の扉に挟まっていたので、僕の懐に大事にしまわれている。
なくしたら一大事だからね!
それにしても、異世界で言葉も字も理解できるのはラッキーだった。
リーリアさんの手紙の宛名には『ヘイゼルお兄様へ』と書いてあるとき、泣いて喜んだよ。
力が行った異世界は、言葉は通じても読み書きはできなかったらしいからな。
ちなみに、僕は読むことはできたが、文字がアラビア風の文字で全く書くことはできなかった。
異世界生活がおちついたら文字を勉強しよう…心にメモメモ。
宿屋の食堂にて、テーブルをはさみピータンさんと同席しつつ朝食を食べています。
リーリアさんは大狼のアンさんに乗っていったのは当然予想できたが………なぜか、僕の目の前には椅子にチョコンと座る大兎のピータンさんがいたりする。
「なぜピータンさんがここに?」
僕の朝食はサンドイッチとスープにデザートのオレンジ、ピータンさんにもなぜか同じものがある。
あれ?兎ってサンドイッチのハムとか食べれたかな?スープも飲まないよね?
オレンジは皮ごとガブついてるよ!ここは皮をむいてあげるべきか?
突っ込みどころ満載の朝食…てか、突っ込んでも聞いてくれるのは大兎のピータンさんだけなんだけどね。
ピータンさんはリーリアさんに置いて行かれたのだろうか?
フームっと腕を組み考えてみるが、どうせリーリアさんの兄に会うのだからこのまま預かることにしようと、朝食を終えて2人(1人と1羽)で部屋に戻る。
本当は町の探索とかにいきたいが、都会っ子の僕が異世界のサバイバル的な町を歩いたら間違いなく無一文になる自信がある。
まぁ、その前に手持ちの現金がそもそもないが…。