表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

第9話

 下校時間になり、天川に絡まれないうちに、さっさと教室をあとにしようとすると、背中に声がかかった。


「あっ、日野君、ちょっと待って!」

「どうした?」


 振り向くと、双葉が慌てた顔をして駆け寄ってきた。

 本当に今日のこいつはどうしたのだろう?ぶっちゃけ心配になるんだが……。


「一緒に……帰ろっ♪」


 きゃるんっ♪とか変な効果音が出そうな笑顔を向けられ、なんともいえない気分になる。可愛いが……違和感!

 すると、奴がいつものように割り込んできた。


「じゃあ、ボクも一緒に帰っていいかなっ♪」


 くっ、出遅れたせいでまた捕まっちまった!

 天川は「逃がさないよ?」と言いたげな笑みを浮かべ、視線を双葉に向けた。まあ、双葉がよければ……


「ちっ、また邪魔……うんっ、天川君も一緒に帰ろっ、あ・ま・か・わ・く・ん・も!」

「ありがとっ」


 あれ?おかしいな……今一瞬だけ双葉が柄の悪い荒くれ者みたいに見えたんだが……でも、天川は特に気にしてないみたいだし、気のせいだよな?それに、やたら君を強調して「お前は男子だぞ」と言いたげなのも、気のせいだよな?

 とりあえず、俺達は教室を出ることにした。 


 *******


 一抹の不安を抱えながら、しばらく静かに歩いていたが、どうやら俺の考えすぎだったらしい。まったくヒヤヒヤさせやがって……。

 目をやると、二人は楽しげに会話を交わしていた。


「最近できた駅前のケーキ屋はオススメだよ。特にチーズケーキ」

「へえ、そうなんだ~。じゃあ今度一緒に行こうよ」

「そうだね。日野君も行こうよ」

「ん?あ、ああ……わかった」


 いきなり会話をふられて慌てそうになりながらも頷くと、双葉はニコッと笑みを見せた。


「じゃあ、ボク達のデートはいつにする?」

「そんな予定はいれないから心配すんな」

「え~!日野君のいけず~!」

「……先手を奪われた」


 双葉が何やらぼそっと呟いたみたいだが、目を向けると、さっきと変わらない笑顔を見せた。いかんいかん。どうやら疑心暗鬼に陥ってたみたいだ。さっ、楽しい楽しい会話に加わろう。


「そういや、双葉は俺に何か用事があったんじゃないのか?」

「えっ?あっ、でも……」


 双葉は言いづらそうに、ほんの一瞬だけ天川に視線を送った。奴の前では言いづらいということか。


「じゃあ、家帰ってからお前んとこ行くわ」

「うんっ、それで大丈夫だよ」

「むむっ」


 天川がわかりやすく頬を膨らませた。いや、だからそういうのやめろって、無駄に似合ってるからリアクションに困るんだよ。ほら、近くを歩いてる男子中学生が見とれてるだろうが。

 彼が真実を知る時は来るのだろうか、なんてどうでもいい事を考えながら、俺はそれなりに弾む会話を楽しみ、家に帰るとソッコーで服を着替えた。


 *******


 徒歩3分程度の距離にある双葉の家の呼び鈴を押すと、双葉母が出てきた。今日も若い。本当に若い。実年齢を教えてくれないもんだから、ぶっちゃけ姉の可能性もあると考えている。


「あら、いらっしゃい。純一君」

「こんちは、双葉は……」

「私も双葉よ」

「ぐっ……あの、やよいさんはいますか?」

「ふふっ、ちょっと待っててね。やよい~」


 このやりとりは、双葉家に来た時の定番となっている。双葉母は、俺にやよいの名前を呼ばせないと気がすまないのだ。まあそれはそれで可愛らしく思えるのが、この人の魅力なのだろう。

 それからすぐに私服姿のやよいが出てきた。


「あはは、ごめんね、ちょっと手間取っちゃって……」

「構わんよ。てか、お前んとこの母さん、相変わらず若いよな。本当に姉じゃないんだよな」

「え?あ、う、うん……」


 なんだ?ちょっと落ち込んだような顔して……いつものやりとりなんだが。

 だがそれ以外は特に何もなく、俺はそのまま彼女の部屋に通された。

 

 *******


 双葉の部屋は、彼女の見た目通り清潔感のあるシンプルな部屋だ。ぬいぐるみの一つも置いてないあたり、余計な物は置かない主義なのかもしれない。

 ……天川とかめっちゃファンシーな部屋だろうな。間違いなく。いや、どうでもいいけど。


「あ、あの、日野君……」


 双葉は小さなテーブルを挟んで真正面に座り、こちらをじっと見つめてきた。それに対し、何故か緊張感が高まってくる。てか、こういうシチュエーションなので、変な期待がまったくないといったら嘘になる……でも、そんな都合いいことが……


「天川君の事、どう思ってるの?」

「え?」


 こりゃまた予想の斜め上な質問。

 肩透かしにも似た気持ちになりながらも、俺はなるべく天川からのあれこれを思い出さないよう努めながら答えた。


「……不思議な奴、かな?本当に」

「不思議、か……よかった」


 双葉は何故か納得したように頷いた。あれだけで何を納得したというのか……あ、もしかして。


「お前、もしかして天川に気があるとか?」


 それは何てことのない一言のはずだった。

 半分くらいはからかってみただけだった。

 しかし……


「あぁん?」


 俺は一瞬で双葉に強引に押し倒されていた。





 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ