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第7話


「純一君……」

「お前……なんつーラッキースケベ」

「いや、こ、これは……違……」


 やばいよ!やばいよ!いや、落ち着け!普通に振る舞えばいいだけだ!


「きゃー、日野君に押し倒されたー、誰か助けてー」


 火に油を注ごうとしているのか、天川は俺の下で棒読みでふざけた事をぬかしている。

 俺はすぐに飛び退き……この後、どうしよう?

 このまま立ち去るのは後味が悪い。俺は悪くないけど。何より、周りからは俺が悪いようにしか見えないだろう。それは今後のリア充ライフの為にも避けたい。

 無難なのは、声をかけるか手を差し出すかだが……こいつに手を差し出すのは危険すぎる……と、とりあえず……


「悪い……大丈夫か?」

「うん、平気だよ……あはは……」


 天川は弱々しい笑みを浮かべながら体を起こす。胸の中にざわざわと罪悪感が芽生えてくるが…………騙されるな、俺。

 気を強く持とうとしていると、天川はこちらに向け、白い小さな手を伸ばしてきた。萌え袖なのがポイント高……危ない危ない!


「はい、お願い♪」


 天川は弱々しい笑顔のまま言ってくる。くっ、周りの目もあるから断れねえ……。

 俺は観念して、その手を引いた。


「ありがと…………あっ」

「っ!」


 天川は俺が手を引くと、あたかも俺が引き寄せたかのように抱きついてきた。

 華奢な体と甘い香りがぴったりと押し付けられ、思考回路が働かなくなると同時に、周りから黄色い歓声が上がった。

 しかし、それがどういう内容なのかはよくわからなかった。


 *******


「あ~……今日も酷い目にあった……」

「そだねー」

「お前が言うな!!ってか、何でついてくるんだよ!」

「まあまあ」


 天川は悪びれもせずに、美少女顔を最大限生かしたアイドルスマイルを向けてくる。可愛い……違う違う!!

 こいつのせいで、俺はクラスから『天川優ファンクラブ会員番号1』とか、『天川ファンの敵』とか言われるようになってしまった。どっちなんだよ。


「ボクは楽しかったよ?今日1日日野君をからかえたし」

「もっと緩めのからかいをお願いできませんかねえ!?」

「アハッ♪」


 からかい下手な天川くんは、俺の怒りを軽やかにスルーし、距離を詰めてくる。


「日野君って優しいよね」

「な、何だよいきなり……脈絡なさすぎて嬉しさより怖さが勝っているんだが……」

「あははっ、思った事を言っただけだよー♪あんな騒ぎがあっても、ボクに怒らないし」

「いや、あの場で怒っても俺の逆ギレにしか見えないからね?お前の小細工のせいで怒るに怒れなかっただけだからね?」

「それに、こうして一緒に帰ってくれるし」

「お前が勝手についてきただけだろうが。それに帰る方角が一緒だから、嫌でも遭遇する確率高いし」

「ねえ……もう一度、キスしない?」


 おもいっきりずっこけてしまった。


「あははっ、どしたの?驚かせないでよ~」

「そりゃ、こっちのセリフだ!!脈絡なさすぎてわけわかんねえんだよ!!」

「しないの?」

「するか!」


 何なんだ、こいつは……いや、今のうちに聞いておこう。


「なあ、お前って……俺の事「好きだよ」早っ!まだ言い終えてねえよ!って……え?」


 今、こいつ……お、俺の事……す、す……!

 こちらの動揺を余所に、天川は当たり前のように答える。

 春の夕暮れだというのに、やけに暑く感じた。


「やだな~、好きでもない人にキスしたりしないよ?好きに決まってるじゃんか」

「な、何で……会ったばかりなのに……」


 俺の言葉に天川は、少しだけ寂しそうに目を伏せた後、やわらかな笑顔を見せた。

 あれ?俺、何か不味い事言ったか?

 すると、天川は急に腕を絡めてきた。


「なっ!?お、お前……!」

「さっ、今から日野君の部屋にお邪魔しよっかな!」

「だから何でそんないきなり……」

「レッツゴー!!」


 *******


「日野君……天川さんと腕、組んでる?」

 

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