第七話『心の中で』
犯罪者と断定された翌日は、案外呆気ないものだった。
覚悟していた中傷も校舎の中で偶に聞くくらいで、気になるほどでもなく、それを友人である八房太郎に尋ねれば、
「急にあんなこと言ってもさ……皆が皆、昨日みたいな与太話に近い話、信じると思う?」
と返ってくるだけだった。
確かに、神代自身も当事者でなければ他の生徒同様に、『犯罪者』と言われてる人物が居たとしても、素直に信じる事はしなかったかもしれない。
時間が経ち、更にその翌日ともなってしまえば、そこかしこに聞こえていた風評も完全に消え去り、神代を貶めた奈那美の話題も聞かなくなった。
奈那美と神代もクラス内ではあれ以上言葉を交わす事は一切無く、周りの生徒もその重い空気に八房を除く学級内の面々が話しかけてくることも無かった。唯一の例外として、奈那美の親友でもある藤沢ゆかりが一度だけ、
「私は神代君の事、信じてるから。奈那美ちゃんがいくら言っても」
そう言ってくれたのは、嬉しかった。
ゆかりだけではなく、八房もそういう奴だったから。
でも、ごめん。
止める訳にはいかないから、心の中で謝った。彼等を見るたび、嘘を吐くことに傷つきながらそれでも意思は変わらない。だからもう一度だけ心の中で謝った。
―騙してごめん。
そして、
二年進学初めての休みが始まる。
―人生一番最悪な日となる休日が。