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竜骨の言い伝え
纏わりつくような霧が唯一よけて通る場所がある
言葉として伝えられてきた時間が途切れた遥か先
生き物を拒む岸壁に囲まれてそれは眠りについた
骨は不思議と完全な死を示さないでいた
薬になるからと困難な採掘に挑んだ者が
欠けたはずの骨が元に戻っていたと言う
生きているのだ
元の姿を隠すかのように不規則に散らばりながら
しかしその巨大さだけが畏敬を貪るように集める
渓谷の風もその場所では重く支配され空洞を縫う
時折響く底無しに低い音の正体がそれだ
取り分けヒトを区別することなく
骨はあらゆる生き物の上にあった
支配の平衡感覚が奇妙に歪められていた
言い伝えを知る者がまた一人骨を少し削りに来た
朽ちた骨の質感ではない
年月を経たはずの外気に触れる層でさえ脆さを見せない
骨を削るときに僅かに染み出す液体と似たものが
山頂付近に時折姿を見せる赤黒い花から得られるという
敬い僅かに使えば薬になるのだと彼は言った




