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放課後の雪

作者: 浪日
掲載日:2016/05/28

 雪柄のクマのマスコットがついた、小さな手帳を拾った。

 放課後も半ば過ぎの廊下には人気がない。だが、HR棟から昇降口へ続くこの廊下を通るのは全校生徒であるため、持ち主を見つけるのは骨がおれるだろう。

 しかし幸いにも――いや、早く帰りたい俺にとっては不幸にも――持ち主とその居場所は大体の見当がついている。

「仕方ねぇな……」

 まだ帰っていないことを祈りつつ、足早にHR棟へ引き返した。



篠原しのはら

 閉館時間ギリギリの図書室の、一番奥の席。静かに読書を楽しむには最高な場所だ。

「あれ、こうちゃんどうしたの」

 いい加減そう呼ぶのはやめてほしいのだが、言ったところでこいつは聞かない。

「これ、お前のだろ」

「なんでこうちゃんが持ってるの!?」

 篠原はあわてて俺の手から手帳をひったくった。中を見られたくなかったのだろう、となんとなく思う。

「一階の渡り廊下に落ちてた」

「そ、そっか。ありがと、でもよくここにいるって分かったじゃん」

 別に分かったわけではない。コイツが行きそうな場所――空き教室やら中庭のベンチやら、特別棟の屋上へ出る扉の前やら――をいくつか回って、やっとみつけたのだ。しかし説明するのも面倒なので、まぁな。とだけ答える。

「特別棟じゃなくてよかったよ。あそこまで上がるの面倒だしな」

「屋上のドアのとこ?人来ないし、静かだし、空も見えるしいいとこだよ?」

 立ち入り禁止の場所だと分かっているのだろうか。

「でもこうちゃん、落とし物とか普段絶対拾わないのに。めずらしいこともあるもんだね」

 そうだ。なんでいつも落とし物なんか視界にも入らない俺が、廊下の隅に落ちていた手帳なんか拾ったのか。それは手帳に、

「それがくっついてたから」

 雪柄のクマのマスコット。それは、名前がユキだからちょうどいいと思って俺があげたものだ。しかも、まだ篠原のことを「ユキちゃん」なんて呼んでいた頃に。

 その時に、「雪」ではなく「幸」でユキと読むのだと教えられた。

「お前それ、必ず大事なものにつけるだろ」

「……なんで知ってんの?」

「何年一緒だと思ってんだよ」

 保育園からの付き合いだぞ。とつけたす。

「もう落とすなよ。じゃあな」

 時計を見ればもう閉館時間だった。最近は日が長くなったとはいえ、外は薄暗くなってきている。

「こうちゃん、あたしも帰る!」

「はいはい、二人乗りはしないからな」


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― 新着の感想 ―
[一言] 文章がとても優しくてわかりやすく、すっと頭に入ってくるおだやかな物語、大好きです 素敵な距離感の二人ですね 「 え? もう終わり? 続き読みたい~~~ 」 ホントにそんな言葉が出ました …
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