エピローグ
魂と物語は円環を描き、テンスイノ世界にふり積もる。
それが土台となり、世界は未来へと進む。
野に咲く花は誰かの生まれ変わりであり、過去の物語を孕んでいる。
円環の理は、ひとの手によって創られた魂にも、恩恵を与えてくれた。
アマネは死んだ。
だけど、その魂は消えることなく、円環の流れに乗った。
円環を司る世界蝶は、おれとアマネの物語を、空より見ていた。
世界蝶はアマネを不憫に思った。
なにひとつ物語を描くことなく、悪意に食われ、殺された女の子を憐れんだ。
だから、彼女の白き魂を救済した。
世界の理が、おれとアマネをつなぎとめた。
アマネは、旅をすると言った。
今度こそ、自分の物語を手に入れるために、世界をさ迷うと言った。
彼女は控えめに、君はどうするのか、と訊ねてきた。
おれは、こう答えた。
君とおれの旅は、まだ、終わっていないんだ、と。
テンスイノ世界を巡る旅。
物語と魂にまつわるお話。
『うたうたいのうた』と司書に名づけられた物語。
物語は円環を描きて永遠につづく。
冥府の狼は、白の魔術師と、今日も世界を往く。