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覇王の走狗(いぬ) ~皇華走狗伝 星無き少年と宿命の覇王~  作者: 喜多村やすは@KEY
七ノ戦 星火燎原

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23 合従連衡 その8-1

23 合従連衡がっしょうれんこう その8-1



 先程叩き割った奥歯から、新たに血が溢れ出していた。興奮により、血の巡りが良くなったのだ。

 滑りのある生暖かい血の味が、どくどくと音を立てながら口内に広がり鼻から抜けていく。

 しかし、弋はそんなものを味合わされている、と気が付く余裕など皆無だった。

 底無しの沼に落ちて行くような気分だった。

 味方同士で、備国軍同士で血みどろの死闘を続けさせられていたのだ、当然だった。

 郡王・戰が率いる祭国と禍国の連合軍が句国の領内に入りながらも一気に王都まで攻め上ろうとしなかったのは、深い霧が発生しやすくなる、今正に此の時期を待っていたからだ。


 ――郡王・戰。

 よもや、奴は、我が軍が堕落するのを待っていたのか?

 そうなのか!? いや、そうとしか考えられぬ!

 砂漠の生活と違い、此の平原での暮らしはまるで宝に埋もれて生きるようなものだ。

 彼らにとっては辛酸を嘗める生き様であったとしても、米と麦を常食とし、絹と綿を纏い、豚や鶏を喰らう生活など最底辺層とは呼べない。

 贅沢に溺れ華奢に流され、身体を鍛え己を律し常に琢磨するを忘れ、怠惰に身も心も委ねて堕落するであろうと、読んでいたのだ。

 ――そして、我らは其のままの生活に堕ちた。

 何という為体ていたらくか。

 今や、備国軍の中に、嘗ての凶暴さは見る影も無い。

 有るのは、傲慢に過ごした時間の分だけ緩んだ身体と駄馬の烏合の衆だ。

 相手が誰であろうとも、戦になどなるまい。自分自身もそうだが、平原の民などと高を括った竹箆返しを痛烈に喰らった形と言える。


 其れよりも恐ろしいのは、こうなると見込んで、待ち続けた郡王・戰だ。

 ――句国王・玖が討たれた直後から見越していたのか?

 だとすれば、郡王・戰は己が勝利を得た瞬間から既に罠を張っていたとしか思えぬ!

 全身の毛穴という毛穴が開き、どっと冷たい汗が吹き出る。

 其処までで遠くを見越し勝利を得んと、動かずにいられるものなのか!?

 ――……どうして、も分からぬ。

 同士討ちを止めさせようと必死で声を張り上げる弋は、山腹の城を襲いに行った別動隊の異様さに目を眇めた。

 漸く、盆地で戦を始める前程度にまで霧が晴れてきている此の川面の周辺に犇めいている別動隊の表情が見え始めている。

 全員、目の焦点は全く合っていない。正気を失っているのだ。

 口元から涎の筋を幾本も垂らし、へらへらと笑う者。

 硬直した無表情でいる者。

 意味不明の怒号を発する者。

 様々であるが、誰も彼も皆、狂っている。

 人間とは思えない、何か、怪異な現象に取り憑かれたとしか、いや、そう思わねばとても正視出来ない不気味さだ。


 ――どうしたら、人間がこんな、獣以下に成り下がるのだ。

自分が率いてきた本隊は何とか平静を取り戻し始め、自国の兵士同士の斬り合いから身を引こうとし始めている。

 だが別動隊は、腕を斬り落とされ脚を折られ背中に槍や矢を突き立てたまま、此方に向かってくる。

「やめよ! 味方同士ではないか!」

 堪らず、弋は喉を裂いて叫ぶ。だが、幾ら腹の底からの声を掛けても、家臣たちの耳には届かない。

「生き屍人だ……」

 ぼそり、と何処かで呟きが漏れた。

 平原には、死者を蘇らせ恰も生きている禍国の如きに使役するいにしえの邪法がある、と聞き及んでいる。


「も、もしや……仲間たちは、生き屍人に……?」

「そうだ、そうに違いない」

「でなくては、斯様なまでに傷を負い、瀕死の状態でありながらも真っ直ぐに向かってくるなど有り得ぬではないか」

「そうとも、味方を識別出来ぬなど、おかしいではないか、あいつらはもう、味方でも仲間でもないのだ」

「生きておらぬ……さりとて完全に死してもおらぬ……生き死人だ……恐ろしい、生き屍人と成り果てている……!」


 平生の弋であれば、何を戯けた事を、と一笑に付したであろう。

 しかし、自軍から持ち上がった恐怖に彩られたざわめきに、弋すらも捕らえられてしまっていた。



 ★★★



 流石に騎馬の民の末裔すえと言えようか。

 剛国から句国までの道程は決して楽なものではない筈であるのに、闘を先頭に抱いた剛国軍は一兵たりとも遅れも疲れも見せずに、走り抜いた。

 軍馬の足は、藪や芝の茂る丘陵であろうと、枝の払われていない山岳であろうと、川底の泥や砂を浚っていない川や沼なども物ともせず、力強さを見せ付けた。


 こうして、闘が率いる3万の騎馬で編成された剛国軍は、王都まで一直線に駆け抜け、北の城門まで迫った。

 中堅国である句国の城門は、剛国よりは幾分、禍国の様式を取り入れた形式をしており、特に屋根の傾斜に其れは顕著だった。

 ほう、と闘は懐かしそうに目を細める。

 戰の郡王、そして椿姫の祭国女王の即位の式典に参列した日を思い出しているのかもしれなかったし、嘗て戰が句国王・ばんと王太子・みちを討ち取った戦に乗じて、句国領内にて備国王・よくとの戦を思い出しているのかもしれなかった。

「真よ、見えるか? 句国の王都だ」

「……は、はい……」

「郡王との戦以来だ、久しかろう。些か、感慨があるのではないか?」

「……」

 返答を求められた真だったが、疲れと酔いから声が出ない。

 真も、あの戦では戰と共に長く句国の王城に逗留した。多くの書物書簡を読む機会を得ただけでなく、田植えの作法を学んだり、投石機を解体して水力の踏臼ふみうすを作り上げて設置してみせたりと、彼の地で戰と農地を見て回り領民と触れ合ったのだ、懐かしくない筈がない。

 祭国の初陣の後、此の句国での戦から自分たちの歴史は動いているのだから。


 手綱を預かっていた芙は、平素であれば苦笑いと共に嘆息したであろう。

 が、侮蔑の色を含んだ烈の視線を跳ね返す方が先だった。

 無論、烈も気合負けなど念頭に無い。互いに一歩も譲らぬ痛烈さで、視線の矢を射掛け合っている。

 此処まで進軍中ずっと真を目の敵にし続けていた烈を、ふっ……と短く笑った闘は、芙が手綱を握る馬に寄せてきた。

「では、真よ。其の方の策通りとさせてもらうとするぞ」

「……」

 やはり、真からまともな返答はない。

 だが闘は構わずに、剣を引き抜くと高々と天に向けて掲げた。


「よいか! 備国軍は今、盆地にて祭国軍と禍国軍と戦っている! 王都、王城はがら空き状態だ! 赤子の手を捻るよりも楽々と我らの手の内に入るが、さりとて気を抜くな、よいな!」

「はい、陛下!」

 いの一番に反応したのは、当然、烈だった。

 まるで少年のように、純心無垢な瞳で闘を見上げる。

 烈の、闘の志に傾倒している、いうよりは信仰の対象に近い妄信的な忠誠を見せ付けられた斬は、未だ青さの残る面に些かむっとした顔付きをしてみせた。

 どうやら、先んじられたのが悔しい、というよりは妬ましく疎ましく感じたらしい。

 馬の首に縋り付きながら、真は、闘の忠臣である二人の間に飛び散る火花を覗き見ていた。

 要因である闘は、だが全く気にしていない。大きく腕を振り、気合と共に愛馬の腹に蹴りを入れる。


「――行くぞ!」

「陛下に続け!」

「続けぇっ!」

 一歩も遅れるものかと、烈が続く。

 慌てて斬も烈に従う。


 剛国軍3万の騎馬が、今や備国の王城と化した嘗ての句国の城目掛けて一直線に駆け出した。

 馬蹄の音も高らかに、剛国軍は王都へ入る北大門に総攻撃を開始した。



 ★★★



 王都を守るように残されていた備国軍は数千騎でしか無い。

 だが彼らには、恐れは微塵もなかった。定められた業務を遂行せねばならぬというのに、見張りの動きは実に怠惰であり、火急の際に到底役立つとは思えないだらけ具合と言えた。

 到底、一国の守護を任された部隊とは思えない。

 しかし仕方無い事であるかも知れなかった。

 備国軍に対して、句国の民は強い抵抗を見せなかったからだ。

 ただ、憤懣焦燥を溜め込んだ遣る瀬無い気持ちを、視線に込めて睨む程度が関の山だったからだ。


 こうなると、やることは一つだ。

 暇潰し、と称して、近隣住民を数人、適当な罪状をでっち上げて引っ立ててきては折檻や拷問を加えて、反応を見て愉しむのだ。

「なあに、奴らは金玉を抜かれた豚よりも従順だからな」

「違いない」

 備国兵たちはげらげらと下卑た笑い声を上げながら、今日も殆ど無抵抗の句国の領民たちを面白半分に引っ立てて来ては彼らの呪詛と懇願が入り混じった悲鳴を楽しもうとしていた。

「おら、入れ、じじい

 老人の脹脛に鞭を入れながら、備国兵たちはにやにやと下卑た笑いを口元に浮かべている。

 今日の犠牲者を前に、どんな方法で此の老人を苦しめてやろうかと額を寄せていると、おい、あれはなんだ? と誰かが指を指した。


 まるで入道雲のような土煙が、街道の先に上がっているではないか。

 其れが、凄まじい土煙巻き上げながら此方に突進してくる横一列の黒い集団である、と気が付いた備国兵たちは、ぎょ、と目を剥く。

「な、なんだ、あれは!?」

「わ、分からん!」

 何らぬもなにもなかった。

 掲げられた軍旗が、黒色集団の正体を如実に物語っている。


「ご、ご、剛国軍だぁ!?」

「剛国だ! 剛国王・闘が攻めて来たぞおっ!」

「門を閉めろ! 早く閉めろ、閉めるんだ!」

 慌てて城門を閉めるようと動き出す。

 だが、遅かった。いや遅すぎた。

 蟻の子を踏み潰すよりも容易く、剛国軍は城門を突破する。


「蹴散らせ!」

 烈が剣を振るいながら、命令を下すまでもなかった。

 まるで、童が作った玩具の駒を倒して行くかのように、剛国軍は備国兵たちを倒していく。阿鼻叫喚宛らの地獄絵図が、北城門で展開された。



 ★★★



 句国王妃・縫が残した王妃の宝冠を、蜜はうっとりと眺めていた。

 歴代の王妃が戴冠の折に王から授かる冠ではなく、句国王・玖が即位の折、王妃・縫への愛情を示す為に特別に命じて創らせた品だ。


「なんて美しいのかしら……」

 碧玉、紅玉、青玉、水晶だけでなく、孔雀石や翡翠、緑松石まであしらわれている。

 王妃としての威厳に相応しい艶やかさの中に潜む慎ましい輝きは、本来の持ち主である縫の上品さと淑やかさと心ゆかしさを物語っているのだが、蜜はこの、物静かで楚々とした気品漂う宝冠を我が物とした事に夢中だった。

 ――そう、王妃の印たる此の宝冠は、妾にこそ、相応しいのよ……。

 傍で、(みち)がむずがって乳母を困らせている。

 弋の血が濃いのだろうか、月齢の割には大柄な赤子だ。

 つ、と蜜が視線を上げると、乳母が恐縮しきって小さくなっていた。

 ほほほ……、と鈴を転がすような笑い声を立てて、蜜は立ち上がると、腕を振り回し脚を蹴り上げて、全身で不平不満を表現している息子に手を伸ばした。


「坊や……妾の……路や……まあ、何と、我儘を申してはいけませぬ……」

 青褪めて肩を窄めている乳母から、奪うようにして路を抱き上げる。

 ずしりと重い我が子は、にこりともしない。そして母親である蜜に抱かれても、まだむずがっている。何処か棘のある鳴き声で、路は愚図愚図し続ける。

 まあ、ほほ……と笑いながら、蜜は息子の背中を軽く叩いてあやす。

 蜜にとって、路は復讐を貫徹させる為に必要な『()』であるが、同等に、愛しい我が子であるには違いない。

 それに先の息子であるみちを亡くした経験からであろうか、蜜は路をまるで蜂蜜漬けにでもするつもりであるかのように、べたべたに甘やかしていた。

 路もまた、まだ漸く歯が生え始めたばかりの言葉も操れぬ赤子ながらも、周囲が己中心に回っていると理解しているらしく、まるで小型の弋のように尊大不遜に泣くのだった。

「おやおや、何とまあ……。備国の次期国王陛下は、今日はとみにご機嫌斜めですこと」

 高価な薫香をふんだんに焚いて香を移している衣が、蜜が子をゆらゆらとあやしてみせる度に、ゆらりゆらりと室内に満ちる。

 礼拝を捧げる袖にぎょ、とした表情を隠しながら、蜜付きの女官たちは顔を見合わせた。


 閨での房事の最中に、弋は貴姬・蜜が産んだ王子を太子とすると何度も約している。

 だが、飽く迄も口約束に過ぎない。

 正式に立太子式を迎えた訳では無い。しかし、弋の寵愛は貴姬・蜜に集中していた。

 何よりも、此の句国を足掛かりとして平原の覇者として打って出る野望に火を付けた弋は、平原の情勢に詳しく助言を与えられる蜜を重宝していた。

 ――何れ貴姬さまが本国に居られし正妃さまを追い落として、王妃と国母の座を得られるであろう。

 女官や内官たちの間で、興奮気味にまことしやかに囁かれる噂話は、だが、武人を中心とした家臣たちの間では冷笑で返されていた。

 根幹に誇りを持つ武人たちにとって、国母となる女性おんなが素性の知れぬ卑賤の出身であろうなど言語道断であり、国王・弋に毛烏素砂漠に在る本国を捨てるよう、媚態の限りを尽くして甘い吐息と共に吹き込むような女性など、認められる訳が無い。


 ――喩え、句国の甘い汁に慣れようとも、備国の根幹は、飽く迄も毛烏素砂漠を駆ける騎馬に在り。

 砂漠に生きる矜持を捨ててはならぬ。

 しかし、国王は自分たちの憂慮など気に掛ける様子もない。

 焦りを覚えた家臣たちは密かに動き出し、独自に本国と繋ぎを取り始めていた。

 目に見えぬだけで、武人と文官たちの意識のずれ・・は、日に日に増大している。


 そんなざわめきの中で、郡王・戰が率いる祭国軍と禍国兵部尚書・優が率いる禍国軍を迎え討たんと、国王・弋は出立した。

 王城内の勢力は今、蜜を中心とした一派と本国を仰ぐ武人の一派の2色にはっきりと分かたれていた。



 ★★★



 城内が突然、騒然とし始めた。

「……騒々しい……一体、何事なの……?」


 添い寝をし、子守唄を聴かせて漸く寝かし付けた路が、また、愚図愚図とむずがり始める。

 ぎらり、と黒目を動かして女官たちを睨む蜜には、凄惨な色香があった。

 思わず見惚れながらも、女官たちは顔を見合わせあった。

 確かに内官たちが礼節も忘れて右往左往しているのであるが、自分たちは何一つ聞かされていない。

 答えようがなく、身を縮めながら礼拝を捧げて下がるしか無い。

 女官たちの仕草から事の次第を察した蜜は、目を細めながら回廊の方を見やり、ふん……、と小馬鹿にしたように鼻で嘲笑する。


 ――何があったのかは知らないけれど……何て無粋なのかしら……。

 此れだから……武張るばかりしか脳のない男は……嫌いなのよ……。

 とはいうものの、句国の王城を預かる身だ。喧騒を捨ててはおけなかった。

「何事なの……? ……此処におわす王子は次期国王陛下……玉体と等しき身……お気を煩わせるなど……許される事ではありませぬ……」

 口元を袖で覆い隠しながら蜜が小言めいた咎めの言葉を零すのと、宦官が慌ただしく駆け込んで来るのとは、ほぼ同時だった。

「何事……か……」

「何れ太子様に立たる御方の前で、何と無作法な、控えよ」

 女官長と乳母が金切り声で、頭ごなしに宦官を非難する。

 しかし、貴姬の権勢を傘にきてあたら居丈高に振る舞う阿呆な女二人に構っていられない、とばかりに、宦官は飛び掛からんばかりの勢いで蜜の前で平伏した。


「恐れ乍ら貴姬さまに申し上げます! 王都の北大門が……!」

 だが、興奮しすぎていたせいか、肝心な処で宦官は激しく咳き込んだ。

 明白な嫌悪感を顰めた眉で示しながら、蜜は先を促した。

「大門が……どうたというの……? はっきりと、お云い」

 は、はひ、と息継ぎをするように嘔吐きつつも、宦官は必死で叫んだ。

「お、お、恐れ乍ら、申し上げます! 北大門が、敵の手に落ち、火を掛けられまして御座います!」

「何ですって!?」


 蜜の絶叫に不満を申し立てるかのように、路が大声で泣き叫始めた。

 ぎゃあぎゃあと喧しく喚く鴉のように鳴く路を、蜜が窘めるように、おお、よしよし、とあやし出した。

「……泣かずともよい、路や……お前が案ずる事など……何も無いのですよ……ええ、何も……」

 涙と鼻水と涎でべたついた頬に自身の紅い其れを摺り寄せながら、蜜は息子に優しく語り掛ける。

 何時までも愚図る路を抱き上げた蜜は、此れへ、と宦官に声を掛けた。


「北大門が落ちたとは……解せぬ……我が陛下が鍛えられし備国の軍は、無敵の筈……。何が起こったのか……陛下が留守を任されている此の妾に、解るように話しておくれ……」

「は、貴姬さま。恐れ乍ら申し上げます。その、北大門を警固しておりました一軍は、突如として現れた剛国軍の攻撃を受け、敢え無く……」

「……剛国軍……?」

 蜜は眉を顰め、不愉快さを声に滲ませる。


「――何故……? ……いいえ、いいえ……何時の間に、此の備国の領土内に剛国軍が……そもそも、剛国の軍勢は如何程なのです……? ええ、そもそも……何故……見張りの兵たちは気が付けなかったのです……?」

 じっとりと水分を含んだ重い声音で、蜜はゆっくりと宦官を締め上げていく。

 全身を大量の汗で湿らせた宦官は、ひく、と喉をひくつかせた。



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