23 合従連衡 その6-3
23 合従連衡 その6-3
「おい、今、何時だ?」
「あぁん? ああ……恐らく、日出の正刻辺りじゃないのか?」
山中で休息を取っていた備国軍は、のっそりと重い腰を上げだした。
半時辰は身体を休めただろうか?
だが、此処までの行軍で掻いた汗が冷えた上に例の霧とやらが纏わり付く湿気が更に冷気を増幅させる。湿り気のある冷たさが、此処まで一気に気力と体力を奪うものだとは知らなかった。
「霧とやらが晴れてこなくとも、日の出の時刻が近づけば脚元はある程度明るくなるだろう、行くぞ」
休憩を取った時と同様に、誰からともなく出発を促すと備国兵は、動くのが億劫だと悲鳴と不満をぶちまける身体を無理矢理動かして立ち上がる。
霧により視界を完全に奪われていたとは言え、夜襲を仕掛ける策であったものを本隊からの連絡も無く進軍を中断させた後ろめたさもあり、動きは鈍重だ。
せめて、本隊も同様に動きを止めていてくれれば良いが、此方が仕掛けを遅らせたばかりに策が空転して敗北するような事態になれば一体誰が責任を取るというのか。
精神的な重圧もあり、備国兵の口も身体も白い霧よりも重い空気を纏っていた。
じっとりと重くなった身体を騎馬が運んで呉れるのを有難く思いながら、備国軍は山間を進んで行く。
半時辰ほど句国兵に先鋒を任せた行軍を続けていると、白い霧が徐々に薄らぎ始めた。
「おっ!? おおぉっ!?」
「見える! 見えるぞ、足元が見えるぞ!」
歓喜の声が上がる。
と、同時に、俄然、備国軍のやる気は一気に高まりを見せた。
冷え冷えとした空気の中にあった備国軍だったが、勢いがついた。此れまでの時間敵損失を補おうと、行軍の速度は熱に温めたれた空気のようにぐんぐんと上がる。
そしてそんな彼らの前に、突然、山の木々に隠れて建つ城が姿を現した。
「あれか!?」
「此処が、奴らの巣穴か!」
連合軍の砦を目にした途端、備国兵たちは熱い闘志を漲らせ始めた。
彼らの本能は、何処までも戦いを求め、戦いの上に全てが成り立っているのだ。
「構えぇい!」
「剣を抜け!!」
号令が発せられた。備国兵は一斉に剣の柄に手を掛け一気に引き抜くと、頭上で振り回し始めた。
「進軍開始ぃ! 敵は祭国郡王だ!」
「突撃!」
「突撃ぃ!」
備国軍は、山腹の城目掛けて雪崩のように進撃を開始した。
★★★
走り出せば、騎馬の民の本質が疼き出すのだろう。
備国軍の闘志に、猛然と火が点いた。
瞬く間に、猛烈な戦意が波となって山間を畝り、城目掛けて突っ走る。
山腹の城はあっと言う間もなく、備国兵に包囲された。
正に、鼠一匹逃れられない包囲網だった。
「城門を破れ!」
命令は、即座に実行に移された。いや、発せられるまでもなかった。
行軍中に切り出された巨大な枝付き丸太が、城門に向けて突き出される。
轟音が、周囲の木々を揺るがし、木の葉がばらばらと落ちる。ぎゃあぎゃあと喧しく不平煩悶の呪詛の叫びながら、鳥たちが暗い空に逃れんと我先に飛び立つ。
「いいぞいいぞ! やれやれ、もっとやれ! 此の煩い白い霧を払ってやれ!」
「おお!」
備国軍は門を早々に破ると、獰猛さを剝き出しにして城内に突入した。
が、しかし直ぐに立ち竦む。
「……な、何だ……!?」
「どういう事だ!?」
「何処だ!? 奴ら、何処に居る!?」
備国兵は叫んだ。
城の中は、蛻の殻だった。
6万を超えると知らされていた祭国と禍国の連合軍が、忽然と姿を消している。
「どういう事だ! 何処に消えた!」
「まさか奴ら、あの視界の悪さの最中に移動したというのか!?」
「馬鹿が! あんな中を動ける訳がなかろうが!」
確かに、波の様に押し寄せる雲の只中に放り出されたかのような状況下で、何万という軍隊が移動できる筈が無い。
有り得ない事態は、備国兵たちから冷静な判断を奪った。
熱り立ったまま、勇ましい叫び声が上がる。
「えぇい、敵が居らぬのなら、こんな城に用は無い!」
「そうだ、火を放て! 燃してしまえ!」
城内を探らせると見張り台用と思しき薪の束や、馬柵にでもするつもりだったのか、攻撃用の丸太は直ぐに見付かった。
備国兵は、興奮が命じるままに火を起こさせる。
そして、木の束に向けて火が放り投げられた。
瞬く間に、火は燃え盛る。
顔面に灼熱の炎の赤色を映らせた備国兵たちは、燃え移っていく赤い揺らめきを眺めている。恍惚とした表情は、狂気の面相だった。
「燃えろ、燃えろ、句国の物など、燃えて消えた処でどうという事はない!」
狂乱状態の備国兵が叫ぶ。狂気の叫び声は、燃え上がる炎の柱の熱と共に高みへと舞い上がる。
甲高い笑い声が響き渡る中、空気と大地を揺るがす音が、微かに、起こった。
★★★
其れは、ずずっ……ずずず……、と大蛇のような物が地面を這いずっているような音だった。
「おい……此れは何の音だ?」
「はぁん……?」
備国兵たちは首を傾げる。だが、次の瞬間、彼らは音の正体を身を以て知った。
低い音は、少しずつ少しずつ、音を大きくしていくではないか。
かと思うと、ある地点から突然、轟音の塊となって押し寄せてきた。
轟音は地面を揺るがし、熱湯の最中のようになっている城内をも上下左右に容赦無く轟かせる。
「うおおおおおお!?」
「な、何だ、何の音だぁ!?」
「ゆ、揺れる! 揺れるぅっ!」
「助けて呉れ、うおお!」
驚愕に、目玉が転がり落ちるかと思われる程、目を剥いて備国兵が口々に叫ぶ。
立っていられず、目眩を起こす勢いの揺さぶりに吐く者まで現れた。
そんな中、城の外に居た兵士が半狂乱の悲鳴を上げた。
「み、見ろ、あれっ…………」
答える声は、突然途絶えた。
答えようとした兵士は山頂方向へと指を指していたのだが、その姿のまま、答えの物体に何処かに吹き飛ばされていた。
「ぐおっ!?」
「ぐぎゃっ!」
叫び声は、新たな悲鳴と爆音とに掻き消される。
残っていた白い霧を突っ切って姿を現したのは、巨大な丸太だった。
切り出されたばかりの丸太が、斜面を滑って何本も落ちてくる。
次々と丸太は滑ってきて薙ぎ払った備国兵ごと城壁に衝突し、赤い血と肉片の飛沫と、爆音と土煙を上げ続ける。
とうとう、丸太の濁流は城壁を崩しきった。
城壁が消えると、丸太は今度は備国兵を薙ぎ払うように吹き飛ばし始めた。
勢いのついている丸太は、瞬く間に城内を悲鳴と怒号で埋め尽くす。
逃れようにも、滑り落ちてくる丸太の速度に備国軍自慢の騎馬の脚も敵わない。
いや、騎乗している兵士たちの動揺が伝播した馬たちは、皆一斉に暴れ出した。
口から泡を噴いて馬首を高く上げ、嘶きを発しながら兵士を揺さぶり落とし様に一目散に逃げ出す馬が続出した。
其れだけならまだましだった。
転がり落ちた主人の脳天や腹を蹄で割って駆け出す馬もある。
嘶きを掻き消す悲鳴が上がる。
身悶えし、のた打ち回りする備国軍は、今やすっかり山城に閉じ込めらていた。
誰も彼もが、自分自身を構うのに必死で状況を見ている余裕などなかった。
そんな時だ。
何度めかの、絶望の色に染められた叫び声が上がった。
「火がっ! 火がぁっ!」
「火が上がったぞお!」
「燃え移った! 火が! うわぁ、火が!」
「火が来る! 此方に来る!」
絶叫は、絶望を伝えていた。
先程、薪を燃した火が、山津波宛らに襲ってきた丸太に灯ったのだ。
ごう! と轟音を立てて、炎は火焔と変化した。
酸鼻極まる阿鼻叫喚の地獄絵図が城内で展開される。
「逃げろ! 早く逃げろっ!」
「城から出るんだ!」
「急げ! 早く、早くしろ!」
備国軍は雪崩を打って城門へと殺到した。
★★★
必死になって城門から山を下る。
脇目も振らずに我先にと備国軍は突っ走り、只管に山を下る。
未だに爆音を立てて燃え盛る城を、漸く離れて仰ぎ見る位置にまで逃れてきた備国軍は、ほっと一息入れると同時に気が付いた。
熱い空気と灰を吸い込んで鼻と喉をやられた備国軍は、皆、殆どが息切れと目眩を起こして倒れ伏す寸前にまで追い込まれていた。
言葉も出ない程脱力しているのは、だが、炎に追い立てられただけではなかった。
熱波に宛てられたと云うのに、どの兵士の身体にがたがたと振るえが来ている。
此の振るえの元は、興奮の局地にあるからでも、無論の事、恐怖心から来るものではなかった。
身体を動かす為の熱量、食事量が絶対的に足りないせいだった。
肌寒さを感じる季節になると起き抜けや小便をした折に身体が勝手に震える事がある。これは、身体が足りなくなった熱量を求めて反射的に身震いを起こしているのだ。
今の備国兵たちの身体に起こっている震えは、正にそれだった。
身体を芯から冷やす霧の最中の行軍に加え、無我夢中で山を下った。
身体を動かす為の余剰の力が何処にも無い状態となっている。
其れでも身体は、必死で最低限の活力を保てるようにしようとしている、全身の震えだった。
そして此の震えは一時的には活力を齎すが、その一時を超えると途端に指一本も動かせぬ程の強い脱力を生む。
それこそ、何も考えられない。
身体の芯と奥が強い飢餓状態に陥った備国軍は、ほぼ全員が倒れ伏し、呻き、昏倒する寸前という猛烈な疲労感に苛まされた。
此の、人体の限界を超える力を使い果たした証拠である震えは、だが経験した者にしか意味が分からないし、解決方法も分からない。
今、備国軍を襲っている震えが如何に危険なものであるかを知る者は、だが不幸な事に、備国軍を率いる者の中には皆無だった。
「畜生、身体がやけに震えやがる」
「全くだ、何だってんだ、特別寒い訳でも無いと云うのに……」
そんな中、怠そうに首を擡げた周囲を見渡している者が居た。訝しげにしている男を気にする者が、声を掛ける。
「おい、どうした? 何か気に掛かる事があるのか?」
「……いや、その、な……句国の奴らが……」
「句国の奴ら、が、どうした、と云うんだ?」
「何処へ消えたか、知らんか……? 姿が見えんのだが……」
「何? 句国の奴らが居らぬ、だと……?」
「そ、そう云えば……確かに」
1万もの句国兵が居ない、と今更ながらにやっと出た指摘に、常の備国兵であれば怒り狂う処であるものを、彼らは深い溜息を吐くと億劫そうに手をひらひらとさせるのが精一杯だった。
「句国兵だぁ? あんな奴がどうだと云うんだ」
「そうだそうだ、あんな奴らの事なんぞ放っておけ」
「どうせ鈍間な奴らの事だ。あの丸太に、荷車に轢かれた蛙のように押し潰されているだろうさ」
「そうとも。あんな奴らに何が出来る。丸太から逃れられたとしても、あの炎の中で家守の黒焼きのようになって干からびているだろうよ」
こんな時であっても、嘲笑するのは忘れないのは備国兵の骨頂と云うべきものだろう。
「ああ、ああ、放っておけ。奴らを気に掛けるよりも、今は我らの身の心配をせねばならん」
まともに立ち上がる事もままならない、地べたに倒れ伏す誘惑に負けそうになる身体を奮い立たせながら、備国軍は隊を整えだした。
「ともあれ、国王陛下が率いて居られる本隊に合流すべきだ」
「確かに」
疲弊しきった頭では、事態を報せる伝令を走らせるという考えも浮かばない。のろのろとした動きは、愚者の行進のように見える。
下山を終えた備国軍の耳と腹全体に、今度は、先程の丸太の濁流を受けた時とは明らかに違う、規則的な振動が伝わって来た。
「……な、なん……だ……?」
「今度は何だってんだ?」
ともすれば閉じようとする目蓋を必死でこじ開けながら、備国兵は顔を上げる。
彼らの、薄っすらと空いた視界の先に、黒黒とした影が、熱を孕んだ殺気の塊が、現れた。
「うおっ!?」
「何だと!?」
備国兵たちは恐怖の叫び声を上げた。
殺気の塊は中央に、祭国軍万騎将軍・克の名を縫取った軍旗を掲げていた。
★★★
連合軍が陣取っている山腹の城から火の手が上がったという報せが届いた。
「陛下、あれなる山の端を御覧下さい」
「何だ?」
弋が首を捻ると、確かに、山肌が赤く染まっている。
白々と開け始めている空の下、第二の太陽のようだった。分隊がやっと本来の目的を果たしたか、と弋は眸を細めて薄く笑う。
「成程。霧に視界と行く手を阻まれていたであろうが、奴らは見事にやってのけて呉れたという事か」
徐々に徐々に消えて行く白い霧を睨み据えながら、弋は、ふん、と鼻を使って嘲笑する。
――愚王めが。少しは思い知ったか。
どんな面構えでしょぼくれておるのか、見てみたいものだ。
覇王の運気がどうだこうだと言われておったとしても、我が軍勢の前には、この白い霧の如きものよ。
弋が考えている事は家臣たちもとっくに感じている事だ。
にやにやと下卑た嗤いを隠そうともしない。其れが弋をより喜ばせるのだと知っているからだ。
しかし、弋に気になる点が無い訳ではない。
別働隊に送った伝令は未だに戻らない。
火の勢いから激戦になっているのであろうが、別働隊がどのような攻撃を仕掛け、そして追い出された連合軍は何時頃に此の盆地に到達するのか。
「目算が立てられぬのな」
ぼそりと弋は呟いた。だが、既に山腹では戦闘が行われているのだ。
「陛下、如何になさいますか」
「遅かれ早かれ、敵は此の地に到達する。早々に陣を張れ」
弋の命令には迅速に実行された。備国軍が鶴翼の陣を展開させていると、日の出が近くなった。と、同時に、あれほど厚ぼったく地面を覆っていた霧が晴れ出した。
「おお!」
備国軍から歓喜の声が上がる。
視界さえ取り戻せば、未だに連合軍が山腹から下っておらずとも此方から軍を動かせる。
「よし、天候も此方に味方し始めておるぞ」
「正しく、陛下の前には天帝も屈したように御座います」
俄然、備国軍は勢いついた。だが、取り戻した視界の先に、何か、薄っすらと見え始める。
いや、見える、というよりも巨大な気配の塊が在る。
「何……だ? 一体、なに……が、ある……んだ……?」
白い霧が風に流されて急激に姿を消していき、視界は格段に良好になろうとしている。
備国兵たちは気配の塊をの正体を見定めようと、霧の先を凝視する。
そして、遂に正体がはっきりとした。途端、備国軍は恐慌をきたした。
「――うっ、げぇっ!?」
「な、何ぃ!?」
備国軍の眼前には、軍旗がはためいていたのだ。
祭国郡王・戰。
禍国兵部尚書・優。
そして。
句国王・玖の大軍旗が。
★★★
「祭国郡王の軍旗だと!?」
弋が唾を飛ばして怒鳴る。
――奴め、一体何時の間に此処まで移動して来た!?
山腹の城で交戦状態に在るのではなかったのか!?
「では……ではあの山城の炎は何なのだっ……!」
呻きながら、弋は山腹を睨め付ける。
まるで幻影のように見える赤い点灯は、確かに戦いが行われているという証だ。
なのに、どうして祭国と禍国の全軍が此の地に揃っている!?
だが、此れは現実だった。
連合軍は祭国軍と禍国軍とを二手に分けて、既に布陣を完璧に整えて、後はもう突撃の号令を待つばかりとなっている。しかも、其れだけはなかった。
「しかも……句国王の軍旗も、だとぉ~……!」
ぎりぎりと音をたてて奥歯を噛みしめる弋の眼前で、国王の大軍旗が悠々と大空に舞っているではないか。聞いてはいたが、実際に甞て倒した筈の男の軍旗を目の当たりにすると、当時の怒りも加算されて胸の内が滾り出す。
「おのれ愚王め! したり顔で面憎い事を!」
鶴翼の陣の中央に配した句国兵たちが、大いに動揺しているのが分かる。
連合軍は、いや祭国郡王・戰は、此度の戦で備国を打ち破り、句国の領土を己が所有物する気でいるのだ。
でなくては、句国王の軍旗を持ち出しはしない。
祭国郡王の大軍旗がはためいている下から、信じられぬ体躯の黒馬に跨り烏の濡羽色に輝く甲冑を纏った、巨躯を誇る堂々たる武人が進み出てきた。
――奴か!? 奴が祭国郡王・戰か!?
果たして、先頭を陣取る黒馬の馬上に在る武人が、すらり、と鞘から剣を抜き放った。
高々と剣を天に掲げる。
残された霧を払う燦然たる輝きが、剣は発しているように、誰の目にも写った。そして、馬に鞭を入れつつ声を張り上げる。
「全軍突撃! 目指すは備国王が首、ただ一つ!」
黒馬は高く前脚を掲げて、まるで雷の如き嘶きを発すると背中に乗せている主人の命令を忠実に実行に移した。兜ほどにもなろうかという巨大な蹄が土を荒々しく削り、捲り上げる。
「全軍突撃!」
「目指すは備国王が首!」
背後に控えていた一軍が唱和し、黒馬の後に続く。
地鳴りは地響きとなり、蹴られた土は煙となって霧宛らとなる。
備国軍が目を見張る前で、武人は恐れを見せずに高らかに叫ぶ。
「我が名は戰! 禍国皇子にして祭国郡王である!」
中央にある句国兵たちの間から、おおおおおおお! という雷鳴のような地鳴りのようなどよめきが走る。
「句国王・玖の盟友として、仇を取る為にやって来た!」
「えぇい! 黙れ! 聞くな! 奴の言葉など聞くな莫迦者ども!」
怒りを抑えきれず弋は叫ぶが、句国兵は耳を貸さない。
背筋を伸ばして叫ぶ郡王・戰の声に、句国兵は聞き入る。
「句国兵よ! 祖国を思いながら生命潰えた己が主君の非業の死を真実に悼むのであれば、我が軍と共に戦え!」
「喧しい! 祭国愚王め!」
「彼の王の御印たる軍旗に弓を引くか! 其れとも我らと共に主君に仇なした奴らを討たんと立つか!」
「何をほざくか! 貴様も句国王の軍旗を奪った盗人であろうが!」
「句国王の軍旗のもとに集い、立て! 句国の民よ! 恐れるな! 前を見ろ!」
「黙れ! 祭国愚王! 貴様の素っ首、此の私が討ってやる!」
二人の王が激しく叫び合う中、連合軍と備国軍は真正面から激突した。




