21 魔窟 その7-2
21 魔窟 その7-2
――よもや馬鹿息子の読みが、こんな下らぬ処で当たろうとは!
此処でこんな糞のような予言なんぞを当てずとも良いわ、馬鹿者が!
ギリギリ音を立てて優は砕けろと言わんばかりに奥歯を噛み締める。
県令の別宅にて最終的な策擦り合わせた時、優は真の横面張り倒し掛けた。
「巫山戯るな! その様な戯けた策など許せると思うのか!」
座を蹴り飛ばして真に迫る優を止めたのは、しかし、戰であった。静かな中にも重い決意を秘めた声音は、座して瞳を閉じたままでありながらも、歴戦の猛者である優の動きを止めたのだ。
「止めないか、兵部尚書」
「しかし陛下! 此の馬鹿息子の策は策にあらず!」
「兵部尚書、私も祭国で真からこの策を持ち掛けられた時は驚いた。しかし私を皇帝の座に就かせぬと画策する者のうち、必ず誰かが突いて来ると予測出来る事だ」
「しかし、しかしですぞ! だからと言って此の愚劣な言葉! 看過出来る筈が御座いません!」
ぎろり、と眦を裂いて遊は真を睨む。
凄まれた当の本人は、やれやれ、と呟きながらのんびりと後頭部の後れ毛をかき上げている。
「父上」
「何だぁ、此の馬鹿息子めが! 素直に斬られる覚悟がついたか!」
「ええ、お斬り下さい。其れで事が解決するとお思いならば幾らでも」
「良く言った! 後で吠え面かくなよ馬鹿息子!」
優が熱い手に柄を握ると、ぎちり、と不穏な音がなった。ぎょっ、となった克が立ち上がって優の背後に回り、芙が上目遣いに身構えながら真の前に飛び出した。
しかし真は、静かに膝を揃え直し背筋を伸ばした。
「父上」
「何だ!? 早速、命乞いか!?」
「私が口惜しく無いとでも御思いなのですか?」
一段も二段も、腹の底からぬめるように這い上がってくる息子の声など、優は初めて聞いた。
背後から優を羽交締めにしている克も、2人の間に割って入っている芙も。
そして戰も同様なのだろう。
真以外の者の、息を呑む音だけが深くなった夜の風に響く。
「此の様な愚かしい策しか思い付かない自分を、私は恥じています」
しん、とした空気が流れる。
誰も、言葉を紡げない。
皆、抵抗できない。
気圧される、威圧される、気合負けする――どれもしっくりとこない。
が、何故か勝てるとは思えない凄味が、真の背から滲み出ている。
「しかし、この世には想像を遥かに超えた悪意に満ち満ちております。卑劣で浅ましく賤陋な手段を講じて来る輩は確かにいるのだと云う心構えを持って挑まれべきです。其れだけでも違います」
「だがだからと言って!」
父上、と真は視線も向けず、腹に力を入れたままも低い声で優の横槍を止めた。
「戦場に於いて、下衆な輩が考案しそうなそろうな策であるから上申せぬ、と部下が口を噤んだら如何しますか?」
ぐ、と優は言葉を失う。
確かに、漢の風上にも置けぬ輩に落とすつもりかと言葉を塞いで軍議を開く意味が無い。そもそも、戦場において窮余の一策とは十中八九が下策であるものだ。ただ真正面から敵とぶつかり、被害が甚大であろうが構わず猛進するだけが策とするのであるのならば、武人は最も唾棄される存在に成り下がる。
「恨み辛みは後で幾らでも背負います。ですが、戰様の御気質を利用せんとするのであれば、此れは最も効果的且つ能率の良い攻撃法です。何方かが必ず仕掛ける、と定めて対処法を持って挑むに越した事は有りません」
漸く、優は力を抜いた。真と優の間に身体を入れていた芙も、背後から羽交い締めにしていた克も、ほっとして緊張を解いた。
「其れで、真」
「はい、戰様」
「勝つ為には、如何すべきだと思う?」
戰の声が何時に無く硬く強張っている。
はい、と真は戰を真っ直ぐに見詰め直した。
「敵が何方になるか。今現在の僅かな情報では分かりませんし、確定する事は逆に愚かでしょう。寧ろ、敵に戰様以外の全ての皇子様方である、と心しておかれねばなりません」
「うん、そうだね」
「怒りに任せて言葉を遮るのは得策ではありません。戰様を糾弾し追い詰め、とどめを刺したのだ、と思わせねばなりません」
「うん、其れで?」
「其処で必要となるのがあります……最も学陛下の疑い払拭する時に使った策の二番煎じなのですが」
真の声音が、何時もののんびりとした調子に戻るが、苦味の成分ばかりとなる。
戰にとって、祭国其のものが、苦労を重ねて手に入れた大切な家族だ。
最愛の妃の不貞と婦徳の汚れに息子の血筋を疑われるものとして挑め、というのは戰には過酷過ぎる。
成る程そうか、その手でいくのか、と答える戰の声が刺々しいのは当然と言えた。
――ですが……。
堪え切って貰わねばならない。
怒りを爆発させる場所を間違えてはいけないのだ。
――戰様、此の様な浅はかな小細工しか思いつかぬ至らぬ私を、どうかお許し下さい。
罰は後に、幾らでも頂戴します。
「戰様」
「……何だい、真」
「お堪え下さい」
分かっているよ、と答える戰の後ろで、解ってたまるか、とまだ優は怒気に身を焼いていた。
★★★
あの時は、まだ実感がなかった。
皇太子・天、二位の君・乱。
彼らの母、徳妃・寧と貴妃・明。
その後ろ盾となる大司徒・充と今大令・兆、先大令・中。
従う門閥貴族と彼らを盾にしてくる兄弟たち。
彼らに好かれているなどと思った事は、一度たりとてない。
寧ろ逆だ、命の危険ばかりを身に沁み、そして心に痛みとして感じていた。
其れは剣で滅多斬りにされるとか、矢面に立ち矢衾となるとかのような、全面的な、そしてはっきりとした痛みでは無い。時季外れの寒風に凍てた五月雨がぽつりぽつりと身を打ち、じわじわと浸食してくる寒気に似ていた。
痛み、というよりも哀しみ、だったのかもしれない。
怒りに身を焼き我を忘れる、とは如何なる境地であるのか。
戰は知らなかった。
祭国でも、王都に入る前にも、真があれ程何度も何度も、口を狭めて戒する言葉を繰り返してくれていたと言うのに、心の何処かではまだ其処まではすまい、という一種の漠然とした余裕めいたものがあったのだ。
だが戰は此の時、産まれて初めて、瞋恚の炎に身も心も魂も焦がしていた。
――椿と、星を、辱めるか。
敵として定めたのであれば、何故、私だけ狙わぬのだ!
何故、私では無く椿と星を蔑める!
戰は、はっとした。
句国との戦いの前に、義理妹である薔姫を卑しめた代帝・安に、真が怒りをみせた意味が漸く我が身に重なった。
――人間、己の身に降り懸からねば真実には悟れぬものなのか。
羞恥と、そして弁解の余地がない己の愚かしさに唇の端を噛む。
――済まない、真、薔。
ふと、戰は背後から視線を感じた。義理の母親である蓮才人が、はらはらとした面持ちで此方を伺っている。
「……皇子や。……大丈夫、ですか……?」
紅を塗っても青紫色に代わったのが見て取れる唇が、小さく動く。切なくなるほど、戰を案じているのがありありと伝わってくる。
戰は、短い間隔で深呼吸を繰り返した。
軽く、目蓋を閉じる。
祖国を離れて、遠く、身寄りの無い国の後宮に収められて10年以上。
産みの母に成り代わり、陰に日向になり身を挺して護り続けて呉れた女性だ。
恐らくは、彼女も不当に賤しめられ貶められてきた筈。
其れをおくびにも出さず、自分に接する時は朗らかな人柄を保ち続けて呉れた。
どんなに心を痛めようと気持ちを挫かれようと、自分の為に背筋を伸ばし続け視線を下げることなく、暖かい言葉をかけ続けて呉れたのだ。
――応えねば。
あの時、薔の為に怒って呉れた真に。
此処まで育て上げて呉れた母に。
「大丈夫です、義理母上様。どうぞ御心を乱されぬよう。此処は一切を私にお任せ下さい」
そう……? とまだ心配げな面持ちで蓮才人は眸を細める。瞳には涙の膜がかかっている。
もう一度、小声ながらも、大丈夫です、と力を込める。
己に力が無いばかりに大切な人々を不当に傷付けさせてきたのかと、今更ながらに思い知った戰は、ゆっくりと礼拝の姿勢を解く。
――力無きが罪無き者を咎に落とすというのであれば、私は力を欲する。
力を得る権利が得た力を行使せねばならない義務が、私には有る。
でなくて、何を皇子と名乗れようか。
★★★
立ち上がった戰が纏う威風堂々した迫力に、哄笑し続ける安は気が付けなかった。
王の間に参列する皇太子・天と二位の君・乱の各一派、そして皇子たちが、じり、と沓裏を鳴らして後退し或いは息を呑み、又はがくがくと膝を内股にして打ち鳴らし始めてから異変に気が付いた安は、其れでもまだ、戰を、いや此の場に居ない椿姫を論う。
「何じゃあ、其の恐ろしげな面構えは? 其の方も、斯様に醜悪な顔が出来よるのかえ? 優男の面構えが取柄であろうに、女子が寄って来なくなるぞ、ん? んん?」
ぐふ、と安は喉を上下させて蛙の様に笑う。
「代帝陛下におかれては、乱兄上の言葉に真を見、我が妃と我が子をお疑いあられるか」
気後れを見せず威迫する戰に、本能的な恐怖を覚えたのだろう。
安は肌を粟たせ縮み上がった。しかしそれでもまだ椿姫への妬ましさから来る嫉心を抑えきれぬ代帝安は、何を今更、と余裕を持って笑う。
「子袋に子を宿している期間、其の方は契国との戦の準備の為に国に留まっておった。いつ、椿が其の方の種を仕込んだ事になるのじゃ? え!? 言えるのか!? ほれほれ、言え、言うてみい!」
殊更に言葉を穢して椿姫を賤しめ嘲罵する代帝・安は、最早、誰の目にも兇悪奸邪な妖怪にしか見えない。
品位の低い妃たちはもとより、高位の妃たちの眉根が軒並み寄る。得に皇子が妃を得て、更に御子を儲けている場合はより一層顕著であった。
無論、最も意識が表情に出ているのは、戰だ。
――何処までも澆季に及び、梟悪を姿を晒すか。
赫怒に眦を裂きながら、戰は安を凝望する。
「我らが婚礼の儀式を行いし夜に御座います」
「ほっほほほ~う? 其れは其れは。一夜にて種を仕込むとは。かの姫も相当な色狂いではあるが、応えきって種を仕込むとは、其の方もえらく気張ったものじゃな。のう、皆のもの、そうは思わぬかえ?」
まだ嘲り笑い続ける安に戰は、畏れながら、と進み出る。
「何じゃあ?」
「先に私は、代帝陛下に奏上したき儀があると申し上げましたが」
戰が言葉を切ると、蓮才人が、すす、と優雅な足取りで彼の横に進み出た。
「我が妃の懐胎の時期については、陛下のお言葉通り御心痛を抱かせるものであろう、と母である才人・蓮に注されておりました。故に、皆が集まる此の場にて不安を払うべきであろうとも」
ぎろ、と安は蓮才人を睨む。
が、彼女は意に介しない。
控えていた殿侍に柳が風に枝をそよがせる様に、袖を振った。短く礼をし、殿侍は蓮才人の元に、赤い絹に包まれ金糸で編まれた組紐で中央部分を結わえられた棒状のものを捧げながら、歩み出る。
殿侍より包みを受け取った蓮才人は、礼拝の姿勢で、其れを戰の元に届ける。
蓮才人が掲げる包みを、戰も恭しく受け取った。
皆が息を飲んで見守る中、包みを結わえてあった組紐が解かれた。同時に、しゅ、と衣擦れの音を残して、赤い絹も滑り落ちる。
包まれていたのは、皇子、戰が誕生した折に描かれた似姿図と、宿星図が収められている桐箱だった。
★★★
二位の君・乱の顔が、一気に赤黒くなる。
宿星図は本来、霊廟を預かる礼部の管轄下、つまり今は大令・兆の支配下にある。
たとえ皇子といえども、いやだからこそ、礼部の赦しなくしては宿星図を持ち出す事は罷り通らない。
なのに、皇子・戰は己の宿星図を手にしている。
つまり、導き出される答えはただ一つ。
――大令・兆は一門ではなく、郡王・戰に味方したのか!
大司徒・充も直ぐに気が付いたらしく、わなわなと全身を震わせている。
――おのれ……おのれ、おのれ、おのれ兆め!
これか! 此れが目的で、場を譲ったのか!
一門を、此の父を裏切る為の布石であったのか!
だが、己以上に兆への震えんばかりの怒りを痛罵の言葉にかえ、其のまま代帝安に浴びせんとしかけている乱に気が付いたのは、流石に政治の荒波を何十年と渡りきってきた充ならではであった。
「乱殿下。今はお堪えなされよ」
「し、しかし、しかし、大司徒よ! 此れでは、此の儘では!」
大令・兆が郡王に与し、本来持ち出せぬ宿星図を渡した。
という事は、彼は郡王の御子が帝室の和子であると確信していたからに違いない。その上で、乱か、若しくは天が、禁忌に迂闊に触れ、此の状況に落ちると目論んでいたに違いない。
そして自分たちは実に殊勝にもというか、旨旨とその罠に自ら飛び込んでしまった。
此処から、どう脱却すれば良いというのか!?
乱は恐慌状態に陥っていた。地団駄を踏みながら、爪をひっきりなしに噛み始める。
「ど、どどどど、どうする? どうする! 如何にかせよ、せんか、大司徒!」
「落ち着かれよ。幸いに、と言うべきか二位の君におかれましては我が息子、大令・兆の名を出されました。いざとなれば全てを兆の奴めに被せて切ってしまえば宜しい」
「な、何……?」
僅かに平常心を取り戻した乱に、充は唇を微かに硬くして是認してみせる。
ほぉ、と隠れて吐息を吐く乱の背中越しに、安と、そして此の場に居ない兆を見て、充は歯を軋ませ悔悟を噛み締める。
――実の父を一門を裏切りおったのだ。
必ず、然るべき報いを受けさせてやる。
父親すら、己の栄達の為の駒に仕立てた愚かしさの罪。
身を以て贖うがいいぞ、兆!
二位の君、乱と大司徒、充、貴妃、明、は怒りの蒸気を上げつつ、切り抜ける策を模索し続けいた。
★★★
「本日、此の場にて次代の皇帝を定めると為されたのであれば、星見と月読が控えておろう。参れ」
有無を言わせぬ戰の声音に、奥に控えていた易者たちが身体を寄せ合いつつおどおどと進み出てきた。
「此れなるは我が誕生せし日に父帝より賜りし帝室の一門を担う皇子としての証。我が宿星図であると認めるか」
「は、はは」
星見も月読も、戰の迫力に一斉に平伏する。
「此方には我が正妃・椿との間に儲けし我が子・星の似姿図と宿星図がある。其の方ら、易を司る者の誇り矜持にかけ、星が我が血を引く帝室の一旦を担う誉れある者であるかどうかを占するがよい」
僅かでも占いを違えれば命無きものと思え、と戰が言い渡す。
此れまで、厳しい言葉使いも態度示した事がない戰の有無を言わせぬ態度は、星見と月読たちの心臓を抉るに充分過ぎる効力を発揮した。
「ぐ、郡王の申す通りじゃ。忌憚なく、妾に上奏するが良いわえ」
流石に安も、浮き足立っている。
玉座の安と、そして皇太子と二位の君の一派は、卜占の見立てがどうであれ和子は皇子の血筋ではないと導き出せ、と圧力を掛けてきている。
だが、皇子、戰と彼に従う兵部尚書、優、幕僚として従う青年の火勢の如き激烈な殺気は、其れ等を大きく上回る。
何方に転んだとしても、星見たちの命は正に風前の灯であった。
がたがたと震えながらの作業となった。
誰もが固唾を飲んで見守る中、先ず、戰が誕生した際に描かれた似姿図の巻物の紐が解かれた。しゅ、と鋭い音を残して結ばれていた厄除の印が、一本の紐に戻る。
掲げられた巻物には、確かに皇子・戰の名のを父帝・景より授けられた証として、御璽がなされている。二十年以上経っても色褪せぬ朱色が美しい。
そして御璽が認めた、産まれたばかりの戰の姿。
豊かな鼈甲色の髪。
大きな深い緑の瞳。
真珠のような白く艶やかな珠の肌。
目鼻立ちは天帝を現した塑像のように整っている。
赤子ながらも由々しき美しさに、妃たちの赤い唇から溜息が漏れ、忌々しさを隠そうともせぬ安の分厚い唇は癪に障るとばかりに、ちっ、と音を立てる。
続けて宿星図の紐が解かれる。
広げた瞬間、天を埋め尽くす星々の輝きを吸い取る様に写し取られているのが素人目にも、分かる。
尋常ではない煌めきと瞬きに満ち溢れており、やはりまた吐息が零れ波のようになる。
益々もって苦々しい顔付きになっていくのは、代帝・安と徳妃・寧と貴妃・明、皇太子・天と二位の君・乱だった。
――此れだ!
此 の占いの所為で我々はどれだけ迷惑を被った事か!
皇帝・景を狂わせるに飽き足らず、今も尚、戰の宿星図は自分たちを見下しているとは!
皇太子・天と二位の君・乱の憤怒に慄きつつも、星見の一人が命じる。
「郡王陛下の和子様の似姿図と宿星図を、此れに」
恐怖に飲み込まれまい、と必死なのだろう。
青紫になるまで唇を硬く結んで別の星見が、御子・星の似姿図と宿星図を受け取った。
何方も美しい織の装丁が為されている。
皆、口にはしないが、椿姫の手により織り上げられたものだろうと察していた。
一本一本を慈しみながら糸を縒り、愛情を含めるように染液に浸し、育ちゆく我が子の安寧を祈りながら織機を弾ませる母となった椿姫の姿は、容易に想像出来る。
妙なる美しさに織に子への愛を込めた初々しい母の心情を思い、吐息が漏れる。
片や、忌々しさの泥濘に首まで浸かりながら、安たちは鼻息を荒くしている。
「僭越ながら、改めてさせて頂きます」
最礼拝を捧げると、星見は戰其れ等を紐解いたのと同じように、組紐結び目を寛げた。
「御開帳致します」
しゅる、と戰の時と似たような音を立てて紐が落ち、似姿図が開かれる。
岸壁を叩く波濤の様などよめきと、凶兆を告げる鵺の夜鳴きの如き叫び後が同時に上がる。
描かれていた御子・星の姿は。
皇子・戰の魂と宿星の半分を譲り受けた子であると証明するかのように、髪の艶も、瞳の色も、肌の輝きも――
何もかもが戰と寸分も違わず、正に文字通りの生き写し、であった。




