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覇王の走狗(いぬ) ~皇華走狗伝 星無き少年と宿命の覇王~  作者: 喜多村やすは@KEY
六ノ戦 落花流水

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21 魔窟 その3-2

21 魔窟 その3-2



 ――次代の皇帝を定むるものとする。


 誰も思いもしていなかった代帝・安の宣言の後、王の間に、暗雲を輝かしめる雷鳴か、はたまた山津波の地鳴りのような、深く重いどよめきが走った。


 2年前、皇帝・景が崩御した後、皇后であった安がその玉座を奪い代帝を名乗りだしたその瞬間より始まった気紛れは、施政に留まらなかった。

 一体、何度繰り返された事であろうか。

 当然其れは、皇子たちにも及んでいた。

 理由もなく突如呼び出すのは日常茶飯事となっており、最早誰も、安の発する言葉に重要性を見出していなかった。

 ただ、今回に限って言えば、視告朔こくさくを行う最大の理由として、郡王、戰への査問が噂されていた。

 視告朔こくさくの場にて身分不相応にも祭国郡王となった皇子・戰を糾弾し、彼の後見を降りたのだと実質的に知らしめるつもりであるのだ――と、実しやかに噂が流れていた。

 郡王、戰の帰城を待たずに視告朔こくさくが始まる。

 兄弟である皇子たちの間で、その期待は更に高まった。

 皇子・戰に直接、言い訳の嘴を挟ませる事はない。

 罪を決定して後、其の思い上がった脳天に罪状を叩き付ければ良いだけの事だ。


 皇子たちの間では、否が応でも期待は高まっていた。

 ぐうの音の出ぬ程郡王を論破し地に落とすのもよいが彼の背後に、常に影として従っている男、兵部尚書、優の側妾腹の息子の存在が厄介であるとは、既に周知されている。

 彼の口先3寸が繰り出す戯言に、代帝、安すらも煮え湯を飲まされた事実は、皇子たちの間では代帝を貶め揶揄する為の格好の話題であるのだが、それを自分たちで味わいたい思う馬鹿はいない。

 だが、名誉を守る場すら与えらぬ憤りと、何もせぬままの状態で首と胴を切り離される恐怖に、最も皇帝の座に近いと目されていた皇子・戰と、兵部尚書・優の側妾腹の息子が味わうにであれば、これ以上痛快な事はない。

 皇子たちは、其々の後見人となっている母親の実家一門の者に事の詳細を細大漏らさず伝えるように命じた。

 皇子・戰と兵部尚書の息子の、見るも無惨な哀れな姿を容易に瞼の裏に描けるように――と。


 心躍らせつつ待ちに待った、待ち侘びた皇子たちに齎された言葉は、しかし視告朔こくさくは、此れまでと変わらね朝議の場であったという、後見人たちの戸惑いを隠しきれぬものだった。

 皇子たちの落胆は大きかった。打ち拉がれる間も与えられず、更に追い討ちをかける様に、全ての皇子と王子に対して、代帝・安の尊命による呼び出しが掛けられた。

 

 代帝・安の気紛れに、振り回され続けるこの2年間。

 皇子たちの我慢の限界は天帝の膝に届くと謳われる崑山脈の頂を楽々と超えるだけでなく、何度往復をこなしているか分からない。

 だが、末席にある全ての王子にまで声が掛かった以上は出向かねばならない。

 嫌々ながら、不承不承ながらも、代帝・安の命令を受けた宦官が読み上げ順に王の間に入室する為、皇子たちは母親の品位の順にまずは列を作った。


 いつも通りに、先ずは三夫人と称される最も位の高い妃たち、即ち、徳妃、寧と皇太子、天、そして貴妃、明と二位の君、乱、が呼ばれる。

 本来ならば、三夫人の中で最も位の高い身分は貴妃だ。

 だが、大司徒・充の父親である大司空が、姪である寧に貴妃の位を授けるのを阻んだのだ。代わって、弟である先大・中令の娘である明が貴妃の位を賜った。大司空が、息子たちが互いに牽制し合う様に仕向けた図式が如実に見出せよう。


 続いては、常であれば淑妃の腹出の皇子、そして九嬪と称される順儀、順容、順華、修儀、修容、修華、充儀、充容、充華、と続く腹出の皇子。

 最後に、皇子と呼べる、ぎりぎりの位である美人を母に持つ皇子・戰が呼ばれる――筈だった。


 此れまでと同じく、続いては己の母の名が呼ばわれるもの、と信じて疑っていなかった淑妃を母に持つ皇子が腰を上げかける。

 すると、宦官の口から滑り出たヒステリ気味の疳に障る声は、驚くべき名を告げた。


「美人、麗の腹の皇子にして祭国郡王、戰、出ませい」


 皆の注目が集まる只中で戰は礼節を守り無言を持って答えとし、立ち上がったのだった。



 ★★★



 そんな憤りを抱えたままの彼らの頭上に降ってわいた、時代の皇帝、の一言。

 礼拝の姿勢を取っている為、顔ばせは見えない。

 だが、皇子たちの背中に、期待という色がめきめきと音をたてているのを見て取った安は、満足そうに、にぃ、と口角を持ち上げる。


「皆、こうしてわたしの前に揃って呉れるのはいつ以来か」

 

 己の身の丈に合わせて仕立直させた大袞冕を纏った代帝・安は、王の間に揃う、皇子や王子たちの父である先皇帝・景のみが座る事を許されていた玉座に、堂々とその丸太のような尻を乗せて、のんびりと云う。

 この期に及んで冷やかし、焦らしにかかる安に対し、彼方此方で憤怒の歯噛みと怨嗟の吐息が起こった。

 しかし、どの皇子も王子も、其々の背後に控える後見人が袖や裾を引き、必死で留まらせる。渋々ながら、皇子たちは思惑を胸に仕舞い、床を安に見立てて睨むしかなかった。

 当の本人である安は玉座で、背を逸らせようにも太り過ぎて身動きが取れず、もごもごと足掻いている。ぎし、ぎし、と玉座は悲鳴をあげ、流石に礼拝の姿勢を崩しはしなかったが、皇子たちの間で失笑が漏れ始めた。

 ぎろり、と巨大な目玉が動く。

 一人、一人、まるで熊か何かが捉えた獲物を如何に殺してくれようか、とゆっくりと舌で舐め回して吟味しているかのようだ。

 生臭い獣臭が漂ってきかねない。

 ぎろぎろとした熱のある目玉が、とある人物の前で止まる。


「ほんに……よう、一人も欠ける事のう息災に過ごして呉れたものじゃ。特に、遠路はるばる罷り越したる者もおるわえ。玉座に座り国を預かる者として、礼を言わねばならんのう」

 目玉が向いている先には、戰がこうべを垂れている。


「祭国郡王、戰よ」

「――は」

 短く答える戰に向かい、にや、と安は笑いかける。


「我が禍国の同盟国として相応しく在るよう、祭国の国力を高めんと執政に尽くすの其の方の姿、視告朔こくさくにて耳に入れた。ようやっておるようじゃな、褒めて遣わすぞえ」

「勿体無きお言葉に御座います、陛下」


 代帝、という言葉を使わなかった戰に、肉で盛り上がった安の頬が、ひく、と震える。

ひくひくと音を立ててうねる頬の肉が、ぶん、と盛大に跳ね上がった。

 けたたましく、耳障りな笑い声が王の間を駆け巡る。


「王となりても可愛げを失わぬとは、天晴れじゃ! 良い、良いのう!」

 ひぃひぃと泣き笑いする安の前で、戰は微動だにしなかった。



 ★★★



 戰と蓮才人に続く優は、ただただ、巫山戯た態度の安が許せず、そして代帝・安の思惑がさっぱり読めないでいた。


 ――あれ(・・)は何を企んでおる。

 思わず知らず、背後をちらりと振り返り、何時ものように息子である真に謎をぶつけようとして――其処には息子、真は居ないのだ、と漸く気が付き苦笑いする。


 ――やれやれ、無意識とは言え、馬鹿息子を頼ろうとは。

 いよいよもって、私も鈍ら()・になってきたものとみえる。

 苦虫を、何故か面白く感じつつ噛み締めながら視線を戻そうとする。

 その視界の端に、ちら、と平伏している克の姿が映り込んでいる床を掠めた。一点の曇りが無くなるまで磨き上げられた床の中の克の顔は、何とも言い表ようの無いものだった。大きく目を見開き、額に汗の粒を浮かべ、口をへの字に曲げて必死で声を飲み込んでいる。


 ――緊張しておるのか。

 立派になったと認めたばかりだが、たかだか百人隊長でしかなかった彼を、祭国への早駆けの騎手として抜擢した2年前を思い出す。

 若さに溌剌と輝く頬の一番高い位置に、緊張感と、やり遂げてみせる、という気合と、自分で良いのか本当に、という迷いを巡り走らせていた。早鐘の如きに鳴り響く心臓を健気にも抑えようとしてか、口をへの字に目を白黒させていた姿が、今の彼と重なる。


 ――何だ、折角認めてやったとおいうのに、あの頃と変わっとらんではないか。

 克の可愛げに口元を緩め掛けた優は、しかし克の見開かれた目の先にあるもの気に掛かった。

 揺らぐ克の視線は、ちらちらと、蓮才人の殿侍として従っている芙とかいう草の男に注がれ、かと思えば、彼方此方にそよいでいる。

 ――何を落ち着きの無い。

 呆れつつも流石に気になり、優は蓮才人の背後に控える男に視線を移し――危うく、言葉にならぬ声を上げて仰け反る処だった。


 ――あ、あの男では無い、だと!?



 ★★★



 いつの間に入れ替わっていたのか。

 だが、確かについ先程までは確かに、芙、と呼ばれていた男だった筈――筈、はず、だ。

 それが、気が付けば、何時の間にか彼の仲間の一人になっているではないか。


 ――や、奴め、い、い、一体、ど、何処に行ったのだ!?

 よもや!?

 眼力の気配のみで、克に気が付かせるのは流石、歴戦の猛者の優だった。視線を上げた克は、優も、芙がいつの間にか入れ替わりと遂げていたのに気が付いたのだと知る。


 ――彼奴は何処に行った!?

 ぎろりと鈍く光る眼光に、以前の克であれば、猛禽類に攫われる運命を悟った兎のように硬直したであろう。しかし、今の克は、しっかりと優を見据え微かに首を振り、思い浮かばない旨を伝えてきた。銅羅の音に紛れて聴こえてきた嘗ての百人隊長の声は低いが、決して浮き足だってはいない。寧ろ、堂々と、そして確信があるが故に淡々としてる。


 ――何か、感じるものがあったのでしょう。

 ――何だと!? 其れは何だ!?

 ――分かりません。私は頭を使うことに関しては、無能も良いところですので、お尋ねになるだけ無駄でしょう。

 克はきっぱりと、爽やかにそして自信満々に答える。優は、ぐぬ、と呻く。


 ――分かりませんが、陛下の御為になる事、其れは確かです。

 芙殿が何故消えたのか、戻り報告を聞けるまで待ちましょう。

優に話して急速の落ち着きを取り戻したらしい克は、再び正しい礼拝の姿勢に戻る。

 釈然としないながらも、優も視線を戻す。

 そして、嫌な汗を背中に感じた。


 ――あれが、『』という存在か。


 頼もしさよりも恐ろしさを感じるのは、優自身が、優が商人・時に命じて諸情報を集めているからだった。直面している現実に愚直に当たるしか脳のない自分たちにとって、得体の知れない術を使われる事ほど、恐ろしいものはない。

 有益性を認めながらも、表立って認める事が出来ない己の懐の狭さを露呈してしまったの、まさにその一点に尽きる。


 ――……くさ、か……。

 、といえば、商人・時が出資している店、中で最も高官や貴族たちと懇意であるが故に重宝してきた妓館がある。

 主人の碧は、真の母である好が王都随一との誉れ高い芸妓であった頃よりも顔を知り合う古い間柄だ。優の描いていた理想を、好を除けば誰よりも長く見守り、力添えしてきた、言わば戦友に近い。だからこそ、彼の為に、危険と知りながらも情報を流し続けて呉れていたのであり、商人・時が間に入って後は、更に活発に動いて呉れていた。

 感謝はしている。

 だが。

 ふと脳裏を掠めたのは、名前とは裏腹に、地肌の色が濃い、白という名の妓女の事だ。


 ――あの芸妓むすめ

 何故、あの時、態々追い掛けてきた?


 息子である真と過去に何かあったと、好から聞いているが、実際のところ、何が何処までどう言った関係であり二人がどうあって無関係の立場に戻ったのか、好は頑として口を開こうとしない。普段、慎ましやかで従順な好が、この一件だけは譲ろうとしない為、優も遂に折れ、いつしか深追いはしなかった。

だが、何故か今、あの芸妓が気になって仕方がない。


 ――馬鹿息子めが。

 思い煩わせよって。


 晴れぬ内なる靄を、息子の所為にする事で、優は鬱々となりかける気を晴らすのが精一杯だった。



 ★★★



 仲間と入れ替わった芙は、刑部所属の舎人に変幻し、刑部尚書・平の元にいた。


 定刻に、此れまでの案件を告げる舎人として立った芙に、平は目もくれない。

 ただ、淡々と読み上げる芙の言葉が切れる度、ぴくり、ぴくり、と耳が震えるのが、聞いている、という合図のようなものらしい。全てを読み上げ、木簡を収める音が部屋に静かに響いても、やはり刑部尚書・平は視線を上げないままだ。


「簡を置いて退室してよし」

 机の上に山と積み上げられている、罪状を書き記してある木簡や訴えを起こす旨を記した竹簡に埋もれながら、平は重々しい声で許しを与える。


 元々、兵部に属する者の殆どが家系制度を採っているように、刑部も一門に生まれれば強制的に職務を背負わされる。

 だが、刑部は兵部以上に激務だった。

 その建国の瞬間から、血生臭い戦の泥と埃に塗れている禍国に取って、軍の束ねの総本部となる兵部に属するのは、喩え最下位の9品であろうと花形の職だ。質を問わねば、引く手数多だ。

 だが、刑部は違う。

 仕事柄、蛇蝎の如きに嫌われ忌み職として忌避される。

 家系制度をとらなば、とうの昔に瓦解していてもおかしくない程に切迫した状況下に晒され続けており常に人材不足戦っている為、勢い、刑部は常に過労に苛まされる激務職として認知さている。その為、担い手となる若者に躊躇される原因となり、益々倦厭され人が寄り付かなくなるという悪循環を招いていた。

 今、平が内容を精査している訴えも、本来であれば部下が采配を効かせるべきものだ。だが、その席に座る足りる人物が居ない為、最高責任者である彼まで引っ張り出されているという為体ていたらくなのである。


 ことり、と机の上で音がなる。袖が翻ったのを視界に認めた平は、一瞬、動きを止めた。

「御苦労」

 何かに不機嫌になったのだ、という声音を隠そうともせず短く言い放つ刑部尚書・平は、其れでもまだ、木間の文字を追う事を止めようとしない。

 やがて、衣摺れの音から舎人が定刻事例の上申を終え退室していったのだと知った平は、ふむ、と声を出して嘆息すると背筋を伸ばそうと、手にしていた木簡を机の上の置いた。

 だが、適当に積んでしまった為、折角、山の形になって均整を保っていた木簡の束が、かちゃかちゃかちゃ、と硬い乾いた音を立てて机の上で雪崩を起こし始めてしまった。


「……やれやれ」

 再び嘆息し、崩れた木間を直そうと手を伸ばす。すると、平の目の前で木簡が音も無く整えられた。驚いて視線を上げると、横合いから伸びた手の主は、平の背後へと移動している。

「お静かに」

 そよぐ風が窓と格子戸の隙間の泣き音に似た微かな声は、部屋の外にて控えている殿侍の耳に入ってはいまい。

ぬ、と眉を顰め警戒の体勢をとろうとした平は、声の主が続けた言葉に力を抜いた。

「郡王陛下の手の者です」

 改めて、室外の様子に視線を巡らせる。

 部下が誰一人として気が付いていない、と確信すると平は背後へと視線を巡らせた。



 ★★★



「何用か」

 平も唇を動かさず問う。

 背後の気配は、静かに答えた。

囚獄ひとや殿が守りし獄とは何処に」


 もう一度、平は視線を戸口へと戻す。

 そして、平は筆を持つと空いた木間にさらさらとその先を滑らせた。

書き終えると、手に持ち直し、背後に差し出す。気配が受け取り、静かに消えようとする前に、待て、と声を掛けた。


「この先の3つ先の部屋には、刑部に務める内官たちが纏う衣がある。自由に使え」

 気配が戸惑いを残しているのを覚り、平は短く笑った。

「上手く変幻しておるが、自在とまでは行かぬようだな。その刺繍を施した袖の者は、この時間帯にこの部屋を訪れぬ」

 戸惑いを残している気配は、袖口にある刺繍の存在を改めているようだった。平は目蓋を閉じる。


「私は視線を上げずに報告を聞く癖があるのでな。時間の感覚が薄れがちなのだ。それで、時辰じしん毎の報告には、刻限を印した刺繍を入れさせておるのだ」

 気配が、何も言えずに佇んでいる。己の技に自信を持つ者にとっては、この失態は痛手だろう。

「刑部の者しか知らぬ事だ。が、こうした些細な事から綻びが出る。陛下の御為に働く気があるのであれば、重々、自戒せい」


 平の言葉に気配が微かに頭を下げた。

 次の瞬間、もう、気配は消えている。

 ふ、と鼻先で笑うように息をつき、閉じていた目蓋を開けた。知らぬ間に肩に力が入ってしまっていた。重く凝っている肩を上下に揺らして、解していく。


 ――背後を取られるなど、いつ以来か。

 緊張を強いられるような相手と見えるなど、もう記憶にない。

 自分たち以上に身動きも取れなければ、刻々と姿を変える雲の様に様変わりし続ける情勢を把握している訳ではない彼等に何程の事が出来るのか、と危ぶんでもいた。

 兵部と刑部は、親しい間柄だが、それ以上に兵部尚書・優の元を訪ねたのは、彼に味方するというか意思表示だけでなく、これ以上、刑部は踏み込めぬ為、何とかしろ、という意味があった。


 ――陛下の為に気が付ける者がおったか。

 自分を唸らせる人物を身内にしておられるのだ。

 一つ一つは、まだ抜け足りぬ処があったとしても互いに補えあえるのであれば、陛下は決して我々が危惧するようなお立場に陥る事はあるまい。


 肩を解し終わると、内官の声が戸口から掛けられた。

「刑部尚書様。定刻毎の事案報告に参りました」

「……」


 二度目となる舎人の報告を、珍しく椅子に正しく座って刑部尚書・平は聞いていた。




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