21 魔窟 その3-1
21 魔窟 その3-1
戰は義理の母である蓮才人と、そして兵部尚書・優、克を伴い、部屋を出た。
芙は蓮才人の殿侍の姿のまま、彼女を護る立場を続ける事になった。立場的に、戰の従者としては克しか立てない。蓮才人の殿侍となれば、共に王の間に入ることが出来るからだ。
部屋を出る前に、徳妃・寧が従えてきた女官の一人の奇しい動きについて芙が戰に上申する。
憂いを眉にのせて芙の言葉に聞き入る戰に対して、優は言外に、その程度の事でと言いたげに眉根を寄せた。
「禍国帝室に謁見の誉を求めて入貢してくる国々の中でも、翳を朝貢してくる国は、少ない。皇帝陛下のみが御手にする事を許される、価値ある品だ。それを手にしているのだぞ? 体捌きが他の女官を異なっていたとしても当然ではないか」
「うん、兵部尚書の言う事にも、一理あるね」
戰が同意すると、それみたことか考えすぎだ、と優は芙の睨む。
「だけどね、兵部尚書」
「――は?」
「今、私の置かれている立場は、皮相のみを見て答えを出し、勝てるものではない」
「……は、あ」
「様々な立場、様々な意見があっていい。何方も正しいが、何方も僅かに心に掛る処があって当然だ。其れを受け入れられるかどうかを決するのは、悪いが兵部尚書ではなく私の仕事、いや、皆の仕事だよ」
爽やかに言い放つ戰に、ぐ、と優は気圧される。
武辺一等。
正面切っての剣と矢と騎馬をの勝負を、を題目のように胸に大事に刻む優にとって、影で暗躍する芙たち草の存在は対極にある。
無論、戦は綺麗事では済まない事は、身に染みている。
彼らのような存在に頼らねば勝利に結びつかぬ戦も多々あると解っているし、寧ろ優は此れまでの戦で、積極的に利用してきた。
しかし、後ろ暗さを感じさせる芙たちを、頭から信用は出来ないし、しようとも思っていない。其れは其れ、此れは此れ、の問答無用の感情だ。
勝利を捥ぎ取る為に卑怯で残忍な手も厭わぬ彼らは、其れのみに生き、此方の命に従順であればよい。表に出て、忠義面して上申する必要はない。所詮は、戦ごとのみの契約で動く割り切った間柄なのだ。
「だが、所詮は国に根ざす事を拒む流浪の民の出。回歴を常とする族に属する者を陛下の臣として信用出来ぬ」
優の無意識からくる差別意識の言葉に、明白に、む、とした表情をして喰ってかかったのは当の本人である芙ではなく、克の方だった。
「兵部尚書様、今の言葉は聞き捨てなりません」
「ぬ?」
ずい、と上から覆い被さる勢いで克は優に詰め寄る。
恐れながら、と迫る克の怒気に、思わず優は後退りした。
「この芙と蔦が率いる一座の者は、真殿が架け橋となり陛下の元に参じて呉れているのです。郡王として即位戴冠なされし頃より、陛下の御為に身を忠義一本に染め上げ、身を粉にするも厭わず仕え、陛下のみならず妃殿下、そして真殿と薔姫様おも守り続けて呉れているのです」
「そうだ、兵部尚書。真を除けば、句国、契国、河国、全ての戦に従してくれたのは、芙だけだ。どの戦においても芙の働きなくしては私は勝利を得られなかった
」
克と、そして戰にまで己の言を咎められるとは思いもしなかった優は、一瞬、息を止めて小鼻をひくつかせた。次いで、やれやれ、と肩を揺らして盛大に溜息を吐く。
芙たちのような卑賤の流浪の民を存在を積極的に使おうと進言する、息子が容易に目に浮かぶ。
自嘲気味に、優は薄く笑った。
――禍国に仕える臣下はどいつもこいつも、血統だの一門だの、初代皇帝陛下の御元にて上げた先祖の功績をまるで我が成したとばかりに声高に叫ぶ阿呆だと思っていたのだが。
どうも、私も似たり寄ったりの阿呆だったらしい。
目に見える武功ばかりを認めて愛していては、影に徹する者は浮かばない。
喩え僅かな働きであろうとも其の僅かがなければ勝利は得られなかったのだ、と認められるからこそ、人はより輝こうと努力する。
その努力の場を奪われる言い様のない悔しさ、叩きつけようにも越えられぬどうしようもない品官の差を、嫌と言うほど味わってきたのは、他でもない、自分自身なのではないのか?
――そうだ、だからこそだったのではないのか、立身を志したのは。
であるのに、自分でも気がつかぬ間に、目は曇り、志がくすんでしまっていたのか。
自分とは真逆の立場で、戰の身内としての座を実力一本で手にした息子の影に横面を張り倒され、無理矢理目をこじ開けられたような気分だ。
改めて、戰を見上げる。
傍に添う克を見やる。
背後に控える芙を見る。
戰に仕える若者たちは、自分とは違う柔軟性がある。
まだ成長過渡期の彼らは、この先確実に、予想外想定外の戦いに否応なしに向かわねばならなくなる戰に勝利を齎さんと、臨機応変に能力を変化させてより力を昇華させていくのだろう。
――私という武人も、古い、堅苦しい人間になってきたのか。
軍畑に長く身を置いてきた優にとって、相当な衝撃を与える事実であった。
が、だがそれも悪くはないのか、と思い直す。
自分は、広く実力のある者をこそ拾い上げようと尽力してきたつもりであったが、何処かで目と心を曇らせる、差別意識が根付いてしまった。
だから、夢に邁進する己を徹底させることが叶わず、大司徒一門に対抗しうるまで兵部を充実させられなかったのだろう。
――だが、陛下は違う。
戰の見ている先にあるこの国の姿を、此れまでとば違う意味で見てみたい、と優は思った。
★★★
戰たち一行は、部屋を出て直ぐに刑部尚書が率いる刑部一行と鉢合わせる形となった。
戰に道を譲りつつ、最礼拝を捧げている刑部尚書が、袖に視線を隠して優の方に向いた。来い、と訴えているのを感じ取った優は、暫し、と言葉を残して列を離れる。
「刑部尚書、視告朔の議、ご苦労だったな」
優の言葉に、いや何、と刑部尚書は首を左右に振った。
「どうという事はない。何時ものくだらん朝議だ」
腰に手をあて微かに首を振りながら、刑部尚書・平は吐き捨てる。
刑部尚書・平。
若かりし折は兵部に属していた。
囚獄・徹と同じく、一門は刑部に属すると定められていたのであるが、五男坊主の誰にも期待されていない気楽さと、己の身体のみで進退を極めたいと望み、兵部に属する事を望んだのだ。
千騎を任されるに至る腕を発揮しだした頃、両親と祖父母、長兄を始めたとした兄弟尽くを流行性の感冒により失ってしまった。実に10回以上もの葬儀を1ヶ月の間に連続して行うという荒行の後、刑部より王城に来ませい、と呼び出しを喰らった。
「この糞忙しい折に呼びつけるのは何処の阿呆のどんな理由だ! ああ、行ってやる! 行ってやるが糞ほども意味の無い呼び出しであれば、もう一つ余分に葬式を出してやるぞ!」
若さに任せて肩を怒らせたまま登城した平は、時の刑部尚書より刑部の判官の任を任された。その時、平は初めて、一門の筆頭の地位にいつの間にか押し上げられていた事実に気がついたのだった。
その後、尚書にまで上がったのは彼が一門の長となったが故であるが、若き頃の戦場経験から、平は兵部に何かと協力し合うようになった。御史台をも預かる刑部は、殿侍や侍御史を兵部から人材を得て行うようになった為、王城内ですわ、との一大事が起こった場合は速やかに兵部に味方する構えを取る事が出来るようになったのである。
その、刑部尚書・平が視告朔の後に態々、姿を見せたのである。
何だ、と目配せする優の肩に身体を預けるように寄りかかりながら、平は声を低くした。
「陛下が祭国より連れて参った、拘囚人であるがな」
「……うむ?」
拘囚人とは、優の長子である右丞・鷹であると知りながらも、平の言葉には遠慮はない。しかし、下手に気を遣われるよりは、優にとってはずっと有難い事だった。
「囚獄が身柄を預かる手筈でいたのだがな」
「……だがな、とは?」
「拘囚人を引き受けんとする申し出があった」
優の眉尻が歪む。
「どういう事だ? 誰が、何の為に?」
言いかけて、優は、はっとなる。
頬を強ばらせた優に、平は頷いてみせた。
此度の鷹の罪を思えば、拘囚人となった彼の罪を咎めぬとして開放出来るのは獄に入れよと命じた、郡王である戰と、もう一人。
鷹を右丞にと推挙した人物――
そう、大令・中しか居ない。
「今大令殿は馬鹿息子をどうするつもりだ……」
思わず呻く優の耳元を覆い被せるようにした肩で隠しながら、平がこそりと耳打ちした。
「それだけではない」
「何だと? この上まだ何かあるのか?」
「大令殿が、囚獄が預かる獄舎の借上げを希望されてきた」
「なにぃ?」
基本的に王城内、そして帝室に籍を置くもの、また関わり合いのある臣下の罪は、刑部が預かる。市井に暮らす領民の警護から刑罰を執り行うのも、広く刑部の管轄だ。
だが、広いが故に手が回りきらぬ事案も多々ある。いや寧ろ、忌み職である刑部のなり手は少なく、常に人材が足りず確保に苦慮している現状では、細かな案件は後回しになっていってしまう。
そうとなれば品官の高い貴族たちは刑部の働きを手緩いとし、私怨を晴らす為に私的に制裁を加えんとする者も当然現れて始めた。
一人がはじめ、其れに介入するほどの余力がない刑部が目零すと、次々と模倣する者が現れ始め、一時期は暗黙の了解と成る程となってしまう。だが、流石に残酷な手段が過熱して行き、遂には私闘により一家離散や家門断絶などにつながる例も上がってくるとなると、無視できぬようになった。
やり過ぎであるとの声が次々と奏上されるに至り、私怨を晴らす私闘の場合は、刑部の獄舎を使用して刑を与えるという対面を保つ事、加えて一人でもよいので刑部の者を見届人として間にたて、あくまでも刑部の管轄下での行為であるという名目をたてよ、と定められた。行き過ぎた暴行、見当外れの怨恨である、と見届人が判断した場合は、即座に刑部が別の罪に問うとしたのだ。
当然こうなると、刑部の者を買収しようとする動きも出てくる。
だが、其処は現在の刑部尚書である平の力量と手腕がものをいっているのか、明白な不正を行う者は此れまでに出てはいない。
――しかし。
敢えてのこの時期に、囚獄の一門が預かる獄舎を借上げるとは。
「大令が誰を断罪しようとしておるかは、分かるか?」
――よもや、大令・中が恥をかかされたと鷹を私的に誅しようとしているのか?
私怨私闘は逆恨みが殆どではあるが、中には希に、醜聞につながる事案も多い。
自業自得のものであれば良いが、騙されて家財一切を失い心中した、幼い息子を不具にされた、娘が陵辱された、といった案件もある。そうした部類に属する事案は大っぴらに裁くに裁けない為、秘密裏に罰を下したい、と願う人々は確かにいる。だからこそ、この刑罰法は邪道であると何度も奏上を挙げられながらも生きながらえてきたのだ。
被害を受けた人々が好奇の目を向けられ更なる心の痛みを抱えぬように、と極秘に行われるよう整えられた私的制裁の道を。
大令が、何という名目で?
焦りを汗の玉にして額に滲ませる優の問いに、平は頭を左右に振る。
「済まぬな、其処までは」
「そう、か……」
「囚獄の徹を見届人に残すのが精一杯だった、許せ」
残念に思いながらも、その自分の期待は至極勝手なものであると知っている優は、済まなさそうに眉を寄せて深い縦皺を作っている平の肩をぽん、と軽く叩いた。
「いや、何を言う。お主は過分過ぎるほど此方の利になる情報を流してくれている。礼を言う」
「……そう言って貰えると、私も有難い」
身体を離すと、刑部尚書・平は帯を正し衿元を整えた。
そして、静かに待つ戰に向け最礼拝を捧げる。
「では、な」
優にも仲間としての礼をしつつ、平は去っていった。
★★★
優が列に戻ると、戰がのんびりと問うてきた。
「兵部尚書、どうしたのだ? 顔色が悪いぞ」
「は……」
それが、と一瞬躊躇を見せつつも、優は、平が齎して呉れた情報をそっくりそのまま戰に伝える。
聞き入りながら戰は、軽く握った拳を顎に当て、ふむ? と眸を細くしていく。
「何を目論んでおるのでしょうか? 恐れながら陛下にはお見えになられますでしょうか?」
「そうだね……。……右丞に私的制裁を加える、とは考え難いが……」
「……は」
言い淀む戰に、優だけでなく克も、そして芙も言葉がない。
確かに鷹は失態につぐ失態を犯した。
しかしそれは、大令・中が勝手に描いた策を図に乗らせなかった、というだけの事だ。
私的制裁を加えるまでには及ばないし、そんな事で私罰を加えてしまえば、後々、彼に従うものは居なくなるだろう。
幾ら、法で裁ききらぬとして獄舎を借上げて行う断罪とはいえ、全くの的外れ、処罰の意図のない暴行目的であれば、逆に大令が処断される。
特に見届人の囚獄・徹は、一門上げての刑部仕えだ。
その誇りにかけて、断じて、見逃しも許しもしないだろう。
では、何故?
その意図は?
誰を刑に処すつもりなのか?
戰と優は腕を組んで唸る。
一歩下がった位置に控える克は、首を捻った。
――大令・兆は確かに右丞に恥をかかされた。
だが、真殿の言葉通りで行くのであれば、大令は陛下の危機を救う事で割れこそは幕下一位の身内にならんと目論んでいる、はず、だ。
となれば大令が、目下の処、一番、目の上の瘤としているのは……。
「郡王陛下。恐れながら、代帝陛下への謁見の刻限が迫っておりますれば、何卒お早く」
つらつら考えている克の耳に、内官の声が届いた。
★★★
視告朔に列席していた各尚書、九寺たちが下がると、凄まじい勢いで場が清められていく。
そして僅か一刻ほどで、王の間はがらりと様相を一変させた。
銅鑼が叩かれ、刻限を告げた。
改めて、禍国帝室に名を連ねる皇子、そして王子たちが王の間に列を成していく。
最も玉座に近い席には、旒9つの袞冕を纏い礼拝の姿勢をとっている、一応、皇太子である皇子・天。
背後には、生母である徳妃・寧と、そして此れまで常に付き従ってきた大司徒・充ではなく、罷免され殿上から去った筈の先大令・中が同じく礼拝を捧げている。
続いて、此方もまた、旒9つの袞冕を纏い粛々と進み出てきた一行は、二位の君と長らく揶揄されてきた皇子・乱。
付き従う母の貴妃・明の後には、大令・兆ではなく、皇子・乱の叔父に当り、実質的な最高権力者である大司徒・充が続く。
充は、弟である先大令・中が従っているとは思わなかったのだろう。目を丸くし、絶句していた。
それは皇子・乱もまた同じであり、動揺の色を隠せずにいる。
その証拠に、礼拝の為に合わせた袖が、ぶるぶると震えている。此れまですっかりと鳴りを潜めていたというのに、あろう事かこの大切な場で、爪を噛む癖を復活させたのだ。
ちっ、舌を打ちつつ充は、息子とも呼ばず扱った事とてないが、兆が、この不測の事態にからきし弱い皇子・乱を上手く操舵して来た事実に、多少、見直した。
――だが、最も腹立たしいのは、此奴か。
じろり、と大司徒・充は視線を一転させる。
三列目に陣取るのが――
祭国郡王として今や名を知らぬ者や赤子にもなし、近隣諸国の覚えも深い、破竹の勢いを見せる皇子・戰、である。
以前、戴冠式の折には身分を不当に下げられていたが、此度は違う。
皇太子・天と二位の君・乱と同じ9つの旒の袞冕を纏った、威風堂々たる出で立ちだ。
背後には後宮入りしてより直様、彼の養母を名乗り出て庇護者となった蓮才人、そしてその蓮才人腹の姫を妻としている男の父――兵部尚書・優が従っている。
てっきり息子本人が、またあの情けなさそうなひょろひょろとした出で立ちで現れるのかと思いきや、兵部尚書が出張ってきている事に、大司徒・充と、そして先大令・中も、内心で安堵の息を吐き、次いでにさり、と隠しもせずに口角にしたり、とばかりの笑みを刻んだ。
――あの、口先だけは一端ぶって煩いと評判の息子が出張ってきておらぬは、良いことだ。
だが……此処におらぬ、という事は、ぜんたい、奴は何処に居るのか?
珍しく、充と中は、同じ懸念に首を傾げる。
句国から大勝を得て大手を振って帰国した際に、烏滸がましく不遜にも代帝を名乗る妹の安をやり込めたのだと聞き及んでいる。
その時は、雲上を許されぬ身分卑しき男に虚仮にされる程度の自分を思い知れ、と多少は胸のすく思いをしたのであるが、その忌々しい舌先を此方に向けられるのかと身構えていたのだ。
だが、その姿がない。
此れまで、影のように寄り添ってきた、ふわふわとした印象の男の姿が、ない。
彼ら最前列から随分と間を開けて、母親の品官に準じて皇子、そして王子の順に並んでいる。
其々に、自身の最も有力な支持者であり基盤を支える後見人と、生母、そして殿侍など数名を伴っている。
「皇帝陛下の御成に御座います」
宦官長が、厳かに告げる。
幼少時代に男根を失った羅刹特有の、甲高い声音は罅割れて耳に付く。
同時に、銅鑼に合わせて鐃鈸、鉦鼓、銅鈸子などが、次々と耳が潰れる程の大音量で叩かれ始める。
音の洪水が盛り上がりを見せる中、其れに合わせてゆっくり、ゆっくりと、安が玉座に向かう。
皇帝のみが纏う事を許された大袞冕を纏った安は、背後に翳を手にした女官2組を従えている。彼女らの後ろから、殿侍たちがずらりと続く。
しず、しず、と安は進む。
現実問題として、太り過ぎの彼女はこれ以上の速さで歩くことができないのであるが、大司徒・充や先大令・中、そして兵部尚書・優の苛立ちを掻き立てるにはこの上なかった。
でん! と、でかい音をたて安の座布を何枚も折固めたような巨大な尻が玉座に収まった。しかし余りにでかすぎる尻肉を、無理矢理に押し込んでいる為、玉座はぎゅうぎゅう、みしみしという音をたてていた。はみ出した肉がこの上もなく醜悪に歪む。
小鼻を開き、むふぅ、と豚のような鼻息を吐ききると安は、厳かに宣言した。
「では、代帝として妾、安が此処に宣する。この場にて、次代の皇帝を定むるものとする」
その場に集結した皇子・王子、そして母たち、勢力図を固めるそうそうたる面々が、其々の思惑を胸に仕舞いつつ、頭を垂れた。




