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覇王の走狗(いぬ) ~皇華走狗伝 星無き少年と宿命の覇王~  作者: 喜多村やすは@KEY
六ノ戦 落花流水

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7 儚(くら)い空 その1

7 くらい空 その1



 肺腑の底から湧き上がる、どす黒い歓喜に身悶えしながら、鷹は下品な笑みを顔面に張り付かせ戰の答えを待つ。

 この耳障り極まりない蟇目の音の正体を探り、王城にて報告すれば益々、郡王・戰の禍国での立場はなくなる。

 ――つまり、その分、私の評価が相対的に上がるという訳だ。

 ちらり、と目を伏せたまま控えている異腹弟・真に視線を送り、ふふん、と鼻で嘲笑う。

 ――何が、『目付』だ。

 幾ら功を立てたところで、所詮は側妾腹の子、品位を与えられる事は終生有り得ないのだ。

 だが、私は違うぞ、真。名ばかりの職官で満足するしかないお前と違い、私は更に高みを目指すのだ!



「耳障りとは、あの蟇目の音の事を言っているのか?」

「はい、何とも言えませんなあ。こう、腹の底を抉るような、不安に駆られる音に御座います」

 そうか、と呟きつつ、戰は天井を仰ぐようにして、風に乗って通り過ぎていく蟇目の音に聞き入っている。

「あの音が気に食わぬのであれば、右丞、矢張お前は、魔縁化生の類の遣いであるのか」

「は? 何ですと?」

「蟇目の儀とは、その放たれる鏑矢の音にて、破邪退魔を行う儀式だ」

「ほ、ほう?」

「此度は産所蟇目として、我が妃、椿の出産の守護を天帝に願う為に行っている」

 一瞬、何を言っているのか咀嚼出来ずに、きょとんと間抜けずらをする。そして、やっと意味が飲み込めた鷹は、目をひん剥いて驚愕し、声を裏返らせて叫んだ。

「は、はぁっ!? な、な、なんですとぉっ!?」


 ――しゅ、しゅしゅしゅ、しゅっ……さんっ!?

 つ、つばき姫、がぁっ!?

 

「右丞、私も聞きたい」

「はぁ? な、何を……?」

 不敬極まりない言葉使いに気が付かぬまま、鷹は棒立ちになる。

 怒気の具現神と化した戰の鋭い眼光に、膝ががくがくと笑ってしまい、止められない。

「右丞、其方が率いてきた使節団で出た病人であるが、病名が赤斑瘡あかもがさと判明した」

「げえっ!?」


 ――あ、赤斑瘡あかもがさ!?

 あの命定めの病と言われる、疫病!?

 そ、そんなものが率いてきたものの中から!?

 そ、そ、そそ、そんな、そんな、そんな事が!?

 赤斑瘡は、確か十数年まえに禍国でも大流行したが、しかしその折に、自分は羅患しなかった。

 ――という事は、私はかかる可能性がある!! と云うことではないか!?

 も、もしかしたら、いや、もう既に、わ、私も赤斑瘡に、かかってしまっているやもしれんのか!?

 驚き、そして感じた恐怖のまま顔面蒼白となり、よろよろと後退る。

 先ほど迄の余裕の表情とうって変わり、鷹は滲み出る汗に顔面を浸して、がたがたと震え出していた。

 そう言えば、何度も身体に熱を感じていたが、あれは発熱し始める合図であったのではあるまいか? 一旦恐怖を持って疑うと、己の身体の事象が全て病に結びつき、さらに別の症状も捻り出してくる。

 どっと全身から汗が噴き出して、だらだらと流れ出す。

 同時に、全身が一気に火照ってくる。

 喉がイガイガと痛んでくる。

 歯の根が合わず、がちがちと鳴る。

 目の前がかすみ、ふらふらとしてくる。

 乾ききった口内の骨が、無様に擦れる音を嘲るかのように、蟇目の音は続いている。ぶしぶしと哀れな音をたてるばかりで煙を吐くこともできぬ、燃えかす(・・)のように無様に、鷹はただただ、次々に叩きつけられる事実に打ちのめされる。


「右丞」

「は、はひっ!」

 声を裏返らせて恐怖に震える鷹に向かって、肘掛に手をかけた戰が、ゆっくり立ち上がる。彼の巨躯を支えるのは難儀だ、と不平を漏らすかのように、ぎしり、と音がたった。

「右丞」

「はっ……はははは、はひぃぃっ!」

「我が禍国帝室に連なる御子が誕生せんとするこの時と選んで、何故、災厄をこの祭国の地に齎した?」

「そ、そんなっ!?」

 憤怒と侮蔑が綯交ぜになった戰の鋭い眼光は、剣のきっさきなどよりも鋭く、鷹の心の臓を抉る。遂に、尻餅をついた。

 そうだ、自分は三回忌が執り行われたという使者として来ている。

 だから分かる。

 郡王・戰の御子は、偉大なる禍国帝室の系図に正式に組み入れられるのだ!

 その御子が、共に祭国に入った疫病で儚くなりでもしたら!?

 この私が、祭国に赴いたと同時に広まった病で亡くなったとしたら!?


 ――ど、どどどど、どうしたら良い!?

 わ、私は無実だぞ!?

 大令様よりご命令を承り、言われたままに遂行しただけに過ぎない!


 炎をまとったかのような、戰の憤怒の表情は、鷹の思考力を一気に焼き切ってしまった。其れまでの思惑もなにも、全てが一瞬で消し飛んだ。

 自分が、何のために此処に遣わされたのか、それを傘に来てどのような態度をとってきたのか。

 全てが、だ。

 

 今度は、真夏だというのに、身体全体が真冬の氷池に突き飛ばされたかのように、肺腑の底から冷え冷えとしてくる。

 仁王立ちになっている戰の後ろで佇む真に、鷹は必死に秋波を送った。


 ――た、助けろ、助けないか、この兄を、兄弟の危機だ!

 は、早く、郡王陛下に、それは言いがかりであると釈明の手助けをしてくれ!

 た、た、助けてくれぇ、真!


 しかし礼節を守り、静かに目蓋を閉じて控えている真には、鷹の憐れな程の狼狽ぶりは見えていないようだった。



  ★★★



 追い詰められた。

 と、勝手に思い込んだ鷹は、これもまた、べらべらと聞かぬ事を自発的に喋り始めた。


 曰く、陛下の奏上が正当に上げられなかったのは、偏に王城内にて陛下をよく思わぬ不逞の輩が仕組んだのであろう。 

 曰く、三回忌を早める旨を伝える勅使が遣わされなかったのも、先に申し述べた理由と同一である。

 曰く、此度のこの正使は、それ故に代帝陛下が、郡王陛下の禍国でのお立場を見限るべきであるか否かの、器定めの検定としてのものである。

 曰く、私が正使の長として右丞にのぼり遣わされたのは、大令に出世された先の左僕射殿の一存である。

 曰く、郡王陛下の危うくなられたお立場を利用せんと、画策する不逞の輩が暗躍し始めている。

 曰く、その不逞の輩とは、即ち、立場を押され気味である皇太子・天殿下の配下の者であろう。

 曰く、三回忌が早まったのは、皇女・染姫様の厄年を慮って御嫁下の儀を早めんとした為であり、偶発的な事柄ゆえそもそも罪には問えぬものと知りつつ、罪状に仕立て上げているだけである。

 曰く、私が遣わされたのは、陛下が私の相手に追われている間に、皇女・染姫様の御嫁下の儀を続けて執り行い、重ねての不義不忠を問う思惑が潜んでの事。

 曰く、此等の難事を打破し、禍国のお立場を確立される為に、本国にて新たな幕僚を得ようと陛下は動かれる筈、その流れを自らにと狙う者が、数多いる。

 曰く、自身を遣わしめた大令・兆殿が、その最もたる御方である……。



「し、しかし戦場にて、祖国に忠義を尽くしておられた陛下が、偉大なる帝国に最も貢献されおられるのは、郡王陛下であらせられます。最も帝位継承に相応しい御方であると、下々、官僚の末席に至るまで理解しております。皆、陛下の御味方に御座います」


 口にして良い事であるかどうかの判別もせずに、鷹は捲し立てる、と言うよりも喚き散らす。兎に角、いつ、戰から怒りを向けられるか知れぬという恐怖に打ち勝つには、思いつつままに喋らずにはいられないのだ。

 それが事実かどうかなどは、問題ではない。

 目の前に迫る、この憤怒の鬼と化した郡王・戰の怒りを、先ず、自分から引き離さねばならない。その為には、此れまで罪状同然に突き付けてきた事柄を、全て彼の都合の良いように仕立てねばならない。

 出来るかどうか、真実か否かは問題ではない。

 右丞・鷹という人物が謂れのない咎で潰されてしまう瀬戸際なのだ!

 嘘も方便、というではないか。

 ともあれ、此方の話を聞き入れてくれるよう、怒り狂い雷を纏った竜の如くになった郡王を宥め賺さねばならない。

 偉大なる帝室の御子が誕生しようとするこの時に、疫病を運んだとあっては、私は祖国に帰る事などできない!

 何としてもそれは誤解であると聞き入れて頂かねば!

 その前に、落ち着いて頂かねば!

 その為には、何をしても許される!

 右丞・鷹という人物を失う事に比べれば、一時、たばかる事など、瑣末な事だ!

 そうとも、大体、私にこの様なえきを押し付けた大令殿が悪い!

 責任は私にではなく、大令殿が全責を負うべきだ、そうとも、郡王陛下には是非ともそのようにご理解して頂かねば!



 一気に捲し立てた鷹は、ぜいぜいと喉を鳴らした。

 喉が乾いて仕方が無い。もしかしたら自分も赤斑瘡あかもがさを患ってしまったかもしれない。早く釈明を受け入れてもらい、薬師に診て貰わねばと焦る鷹を前に、戰は先ほどの鬼神に近い怒気を引き払って落ち着きを取り戻しており、椅子に深く腰掛けている。

「右丞」

「は、ははっ!」

「禍国においての私の立場は、今、其方が言った通りで相違ないか」

「は、はい!」

「私の立場を貶めようと姦詐かんさを巡らし詭謀きぼうをろうし暗躍する者がいるのだな」

「は、はい、はい!」

「さらにそれら、貶めようとする者から私が逃れる為には、己を身内にと望むよう仕向けんと、恩を売ろうとまた奸計かんけい策謀さくぼうをもって私を狙う者もいる、という事だな?」

「は、はいぃ!」

 そうか、と顎に手を当てて暫し考え込む様子をしてみせた戰が、再び椅子から立ち上がった。

「よく分かった、右丞」

「は、はひっ!」

「此等全ての会話は、右丞、其方の名と神聖なる禍国帝室の品官にかけて、嘘偽りなしと署名するがいい」

「――はっ?」

 安堵し、脱力し膝から力が抜けて行きかける鷹の心の臓が、氷の矢尻で射抜かれた。

 背後を振り返った戰が、異腹弟である真から何かを受け取っている。

 それは、祐筆が速記した、この謁見の全ての会話文が示されている、木簡だった。



 この世の終焉を迎えた嘆きかと聞き紛う、喉を裂く叫び声に辟易している様子をありありと浮かべる克が、礼拝を捧げるのもそこそこに入室してきた。

「どうした?」

「はい、使節団が逗留しておられる鴻臚館より、新たに患者らしき者が現れましたので、施薬院に運び、虚海殿の診察を受けさせております」

「そうか、ご苦労だったね。最初に倒れた仕人つこうどの子の、その後の様子は?」

「は、熱が高いようですが意識もしっかりしておりますし、この先に発疹が現れるままに病状が収まっていくようならまず、命に関わる事はないだろう、と虚海殿のお言葉に御座います」

 わかった、と克の答えに安堵を見せた戰は、身体ごと鷹に向き直る。


「右丞」

「ひゃ、ひゃい!」

「聞いての通り、新たに疫を発した者が現れた。この上は、使節団に関わる者全てを鴻臚館に隔離し封鎖すると、郡王・戰の名において命じる」

「ふ、ふひゃ!?」

「右丞、其方は正使を率いる最高官位の者として、責任をもって、恐怖からくる恐慌と混乱から使節団を守れ」

「う、うへたまわりまひてごひゃいまふっ!」

「下男、公奴婢に至るまで、全ての者を医師に見せ、羅患しておらぬか診察させよ。特に最初に施薬院に運び込まれた仕人つこうどが関わった者は優先的に診察を受けさせ、注意を怠るな」

「ひゃ、ひゃはっ!」

 ぎろり、と睨みを効かされた鷹は、額が床にぶつかる音をたてながら平伏、いや這い蹲った。



 ★★★



 家の中が、こんなにもがらんとして寂しく感じるのは、初めての事ではないだろうか?


 戦に出払っていた数ヶ月の間だって、こんなにも哀しい空間になりはしなかった。

 何時も、芙をはじめとして蔦の一座の者が居るし、類の奥方である豊がまるだいを抱いて遊びにも来てくれる。珊もお使いだと言って顔を出してくれるし、珊が訪ねてくれば琢が勝手についてくる。

 何よりも、居るか居ないか分からない位に自室に篭りきりになる癖に、奇妙に存在感だけはたっぷりとある夫が居ない。ちょっと動くと気配が直ぐに感じられ、音も何もかもが筒抜けになる狭い家だと思っていたのに、こんなに広かったのだろうか? 


「我が君……」

 真の部屋を、何度も何度もぐるりと見回す。天井の隅に貼られた厄除けの祓札が、日に焼けてかさかさと乾いた色で見下ろしている。

 今、部屋を満たしているのは、楽しそうに喧嘩するさんたくの声でも、その二人を揶揄う芙たち、はいはい(・・・・)で走り回るあいの元気な声と、追いかける義理母・こうの遠慮がちな足音ではなかった。

 不安ばかりを抱く母親気持ちを敏感に感じ取って、疳をだしてぐずぐずとぐずり続ける娃の泣き声と、あやす好の子守唄ばかりだ。

 薔姫は、沈んだ気持ちを落ち着かせる事ができずに、身体をもぞもぞと震わせた。


 ――我が君のお話からすると、もう、禍国のお使者はお城に入った頃よね。

 城の方向に、首を巡らせる。

 真夏の空は青々としており、むくむくと育つ白い雲ともどもに目に眩しい。

 幾種類もの蝉の鳴き声が重なり合う合唱は止むことを知らず、耳に痛いくらいだ。

 家の中のどんよりとした空気と違い、外は夏の明るさに満ちている。


 ――どうしよう……。

 そわそわと、身体を揺らし続ける。

 禍国からの使者が来る。

 真から伝えられた時に、真っ先に考えが及んだのは、遠い禍国の王宮に暮らす母・蓮才人の事だった。先の帰国の折に、久方振りに親子水入らずで過ごした僅かな時間は、逆に、母親を強く求めてやまなくさせていた。

 衣装箪笥の奥から、美しい絹をそっと取り出して、頬に当てる。

 ――お母上様……。

 祭国に向かう前の宴の夜、母である蓮才人が眠ってしまった自分への手向けにと、握らせてくれたものだ。まだ、そこはかとなく、母親・蓮才人の好んだ薫香が匂い立つ。目蓋を閉じて頬擦りをすれば、柔らかな母の手の平のようで、自然と涙が浮かんできた。

 ――お母上様、お変わり無いかしら? 私に会いたい、どうしているのかしらって、溜息ばかりついて過ごされては居ないかしら?

 ぐい、と小さな握り拳の甲で涙を拭き取ると、薔姫は真っ直ぐに城の方角に向き直った。


 ――もしかしたら、お母上様からわたくしに、何か御言付けがあるかもしれないわ。

 夫である真は、懐妊中である椿姫の為、王城に極力病を入れぬ手立てとして、鴻臚館に使節団を受け入れると言っていた。

 その使節団の長は、確かに気に食わない夫の異腹兄・ようであり、更にその上官は義理兄である戰の政争の相手の一人、大令となったじょうだ。自分への書簡など、あったとしても、到底、真面に受け付けるとは思えない。

 だが、母は先の皇帝の後宮で、四品下の品位を得ているのだ。

 義理父である兵部尚書である優と、そして商人・時の力をもってすれば、母親・蓮才人の意を汲んだ者を内々にすべり込ませるくらいの事は、可能なのではないだろうか?

 期待は、淡くてはかないものだと知っている。

 殆ど、望みなどないのだと、分かっている。

 だけど、そう、もしかしたら? 

 ――ちょっと、だけ、なら……お城に行っても、大丈夫……かしら?

 そう思うと、いてもたっても居られなくなってきた。

 御免なさい、我が君。

 後でちゃんと叱られるから……だから、だからちょっとだけ、ちょっとだけ……いいわよ……ね?

 手に絹を握り締めたまま、薔姫は玄関に向かった。



「薔姫様、どうなされました?」

 薔姫の小さな肩が、びくり、と上下に跳ね上がる。振り返ると、疳の虫でぐずりっぱなしの娃をあやしながら、好が不安そうに立っている。

「薔姫様、どちらへ……? まさか、な、何か真にあったのですか?」

 好の消え入りそうな声を、更にむずがる娃の泣き声と蝉の鳴き声がかき消そうとする。まるで、好の存在まで、そのままかき消えていってしまいそうだ。

 薔姫は、慌てて腕を伸ばして手を振った。


「うぅん、違うのよお義理母上ははうえ様。娃ちゃんが、あんまりにもぐずぐず言っているから、施薬院に行って疳の虫封じのお薬を貰ってこようと思って」

 出鱈目に言い訳を言い立てた薔姫は、口にしてしまってから、これはとても良い考えなのでは、と思った。

 ――そうよ、娃ちゃんの為よ。ずっとぐずりっぱなしの娃ちゃんも可哀想だし、抱っこであやし続けるお義理母上ははうえ様も大変だもの。

「疳の虫封じ、ですか? ですけど……」

 薔姫の言葉に、成る程、と軽く吐息を付いた。

 確かに今日は朝からずっと、娃はぐずぐずし続けていた。いつも、にこにこと機嫌良く過ごしている娃しか知らない好も薔姫も、少々疲れてきている事は確かだ。

 だが好はまだ、何処か懐疑的な目で探るように覗き込んでくる。こうなると、どちらが大人でどちらが子供か分からない。


「大丈夫よ、お義理母上ははうえ様。馬を使えば、お城まで行って帰ってくるなんて、直ぐだわ」

「薔姫様……」

「お薬を貰ったら、直ぐに帰ってきます」


 残っていた一座の者に声をかけて馬の用意をさせると、薔姫は馬に乗り道を駆けて行った。

 何か釈然としない様子で、ばたばたと出掛けていった幼い嫁の背中を見送りながら、好は、首を傾げてぽつりと呟いた。


「……お薬を頂くのに……何故、お城に…………?」



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