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生まれ変わり

作者: ふゆ

 飼っていた猫が死んだ。

 その猫が生まれたときからずっと一緒だった。

 真っ白い毛皮の、気立ての良い猫だった。

 彼女は猫を飼うのが初めてだったので、最初のうちはうまくいかないことも多かった。

 それでも試行錯誤を繰り返し、少しずつ猫との距離を縮めていった。

 猫は随分長生きしたように思う。

 最期も、彼女の手の中で最期の餌を口にし、眠るように静かに逝った。

 それなりに幸せだったのだとは思うが、他にも出来ることがあったのではとも思う。

 それから少しして、ある日、彼女は子猫を拾った。

 やはり真っ白い毛皮の、あの猫とそっくりな猫だった。

 彼女はその猫に前の猫と同じ名前を付けた。

 前の猫が生まれ変わって戻って来たのだ、と本気でそう思ったわけでもないが、そう思っていけない理由もない。

 前の猫にしてやれなかったことを、この子にはしてあげようと、彼女はそう思った。

 それに、彼女はこの世界に生まれ変わりがあることを知っている。

 何故なら彼女自身が、前世の記憶を持っているからだ。

 前世で、彼女は、神の加護を得て世界を魔から救う英雄だった。

 いくつもの試練と冒険の末、彼女は魔を滅ぼし、世界を救ったが、彼女自身も命を落とした。

 そして長い年月を経て、彼女は再びこの世界に生を受けた。

 魔が再び世界を覆いつつあるからだ。

 程なく、彼女は再び英雄として旅に出ることになる。

 それまでの短い間にはなるが、この子を精一杯愛してやろう。

 彼女はそう思った。


        * * *


 加護を与えていた英雄が死んだ。

 その英雄が生まれたときからずっと見守っていた。

 美しい金髪の、優しい戦士だった。

 その神は英雄に加護を与えるのが初めてだったので、最初のうちはうまくいかないことも多かった。

 それでも試行錯誤を繰り返し、少しずつ英雄は成長していった。

 英雄は随分人々を救ったように思う。

 最期も、自らを犠牲にしながら世界を覆い尽くしつつある魔を滅ぼし、逝った。

 それなりに役目を果たすことは出来たとは思うが、他にも出来ることがあったのではとも思う。

 それから少しして、ある日、神は幼い戦士と出会った。

 やはり美しい金髪の、前の英雄とそっくりな戦士だった。

 神はその戦士に前の英雄の記憶を引き継がせた。

 魔が再び世界を覆いつつあるからだ。

 前の英雄にしてやれなかったことを、この戦士にはしてあげよう、神はそう思った。

 この世界に生まれ変わりがあるのかどうかは、神は知らない。

思い付いたから書いたけど何か救いとかが無い気がしてきた。まあ猫はそれなりに幸せで英雄は魔を滅ぼすのでよしとしておく方向でひとつ。

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― 新着の感想 ―
[一言]  シンプルなマトリョーシカみたいで、面白かったです。  それぞれが、それぞれの人生で力を出し切って、その時の最善を尽くした上で、「もっとアぁしておけばよかった、こうしておけばよかった」と後悔…
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