接触01
――作業技術室
金槌5本、のこぎり2本、糸鋸の芯を10本、何故ここにあるのかは、分からなかったが採掘用の小さ目のピッケルを3本これを持ってきた鞄にいれて、残りは窓の向こうに捨てた。
その時、すぐそこで、銃声が響いた。
まさか、人を感知するんじゃなくて、動くものもの反応するなんて、厄介な仕掛けだな……。
しかも、どこから銃が向いてるなんて分からない。
のこぎりだけカバンに入らなかったから簡単に取り出せるケースにしまって用い歩くことにした。
「あの、殺しの手伝いはしたくないんだけど、刃物なら美術室にもあるんじゃない? 彫刻刀とか、エッチング用のちいさなキリみたいなのとかさ」
「あ、そうか美術室にもあったな……美術室はすぐ近くだし筆箱の中にもまだ入りそうだし行くか」
どうせ、この辺りには誰もいないだろう。
僕は警戒することもなく、美術室へ向かった。
すると、反対側の曲がり角から、何の装備もせず、そして、警戒もせずに歩いてくる奴がいた。
「ゆ、悠人?」
生乃が、悠人と呼んだ男子はどうやら一年だ……。
見れば、全身に返り血を浴びていた。
「なぁんだ、姉さんか……さすがに身内は殺せないよなぁ」
しかも、姉弟だったらしい。
「なんで、悠人まで、こんなゲームで人を殺してるの!」
「なんでって、これは生き残るゲームでしょ? だったら、殺すのは当然のこと、じゃないかな? ね? 先輩もそう思うでしょ?」
一応言っておく、この一年に会うのは今日が初めてである。
「そうだな、僕だって、死ぬのは嫌だからな」
なにか、意味深な表情で、相槌を打つ、一年……。
何か、知ってるのかこいつ……。
「あ、自己紹介がまだでした、僕はですね、一年の小里悠人です、どうやら、姉の生乃がお世話になってるようで」
ああ、間違いなく世話になってる、むしろ足手まといだ、今すぐにでも殺してやりたいが、そういうわけにもいかない、約束は約束だ。
「で、先輩は?」
「僕は、坂弥仁だ……ところで、このゲーム、出会った人間全部殺していくつもりなんだけど、悠人君はどうする?」
考える素振りをして、何とも言えない不吉な笑顔をしながら答えた。
「あ、呼び捨てで構いませんよー、あと、別に僕は、ここでやるのもかまわないんですけど、そこにいる姉が邪魔なんですよねぇ……」
「ゆ、悠人! あなた、クラスメイトを……うっ」
そこまで言って、生乃は言葉を止めた、いや、正確には腹から逆流してくるモノで言葉を遮られたのだ……おそらく、あの光景がフラッシュバックしてきたのだろう。
「なぁーんだ、ねえさんは手にかけてなかったんだ……やっぱり姉さんは、あの人達との『血』を否定するんだね……どうしたって逃れられないって言うのにね」
何の会話だ? あの人達との血? 血縁関係者ってことか?
「まあ、いいや、そんな姉さんを殺したって何も面白くないからね……そうだなぁ、先輩と殺り合うのを楽しみにしてますよ、くくっくっくあははは!」
ああ、なるほどな、悠人は、このゲームを楽しんでる側なの人間か……。
一切の干渉を受けない、この空間は、陸の孤島であり、どこからの制限もかけられない無法地帯なんだ、毎日がつまらないとか言ってるやつらには、最高の娯楽だろうな、なにせ、何をやっても最後は死ぬんだから。
「では、僕はこれで失礼しますよ、先輩……」
何かをたくらんでいそうなそんな笑顔をこちらに向けて、また同じ道を戻って行った。