誓い01
ここで、絶対的な力を持つのは刃物と鈍器だ……それが一番多いのは作業技術室だろうな。
ここは2階で、作業技術室は1階の一番右の部屋か、ここからだとだいぶ遠いけど、まあいい、とにかく戦力になるものが必要だ。
「生乃、作業技術室に行く……適当な袋とかを用意しておいてくれ、僕はここで見張ってるから、それと、袋はなるべく頑丈なものがいい」
生乃は何も言わず僕のいうことをすんなりと聞いてくれた。
数分後、生乃が持ってきたのは、血まみれになって今はもう誰のものか分からない革のカバンとファスナー式の筆箱を用意してくれた。
「生乃……君が先に行くんだ、壁に背をつけながら、背後を取られないようにね」
ほとんど、生乃が喋ることはなかった。
さっきも見たけど、廊下にもおぞましいほどの死体が転がっていて、血が濁っている。
もう、どれが死んでるのか生きているのかなんてほとんど分からない。
廊下の壁にもたれている死体を蹴り飛ばしながら、少しずつ進んでいく僕と生乃、するとそこに、あの人が現れた、西基さんだ。
「生きていたのですか……西基さん、てっきり死んだのかと思っていましたよ」
やはり、自分の考えが通じなかったのだろう、かなり暗い顔をしていた。
「そうね、あたしもまさか自分が生きてるなんて思ってみなかった、あたしね……クラスの子に生かされたの、それでね? 頭のいい子が言ってたんだけど、この学校に犯人はいるんだってさ、理由聞く前に殺されちゃったけどさ」
「その頭のいい人は誰に殺されたんですか?」
僕と西基さんが話している間、生乃は周囲を警戒してくれていた。
この状態では、生き残った人間が3人もいるんだ、絶好のチャンスだと狙ってくる奴もいるだろうから、生乃の行動はありがたかった。
「生徒会長の平間戸伴尋って人……その人はまだ生きてると思うんだけどさ……」
「と、伴尋君が……」
「え? 君、会長とお知り合い?」
西基さんと生乃が同時に僕に視線を向ける、そんなに驚くことだったのだろうか?
「知り合いも何も、伴尋君はいとこです」
2人は声をあげずに静かに驚いていた。
「そもそも、僕は伴尋君がいるからって理由でこの学校に入ったんだ」
もう、何も言えないという表情をしている2人。
「会長は、あたしは殺さないって言って私を逃がしてくれたんだ」
「そうなんですか……伴尋君が……」
僕は、いっそここで西基さんを殺してしまおうか迷ったけど、止めておいた。
この人にも最後を見てもらいたかったからだ。
でも。さすがに『殺さず』を二人抱えるのは、僕が大変になりそうだな……。
「あのさ、あたしの考え間違ってたよ、だからそれに気づかせてくれた君と会長だけはどんなことがあっても殺さない、あたしは生き残るために、真犯人を見つけるために戦うことにするよ」
きっと、こういう人がここのゲームで生き残るためにはそれなりの『覚悟』や『決意』が必要なんだろう。
「そうだ、まだ、君の名前を聞いていなかったな」
「坂です……坂弥仁です」
吹っ切れたかのように、彼女はさっきまでとは別の顔をしていた。
まるで笑っているかのように……。