初日01
始まりは普通の学園です……
いつもと変わらない、いつもの朝……なんというか、今日は雲一つない、実にいい天気だった。
僕は比史間学園に通う高校2年生の坂弥仁、ごく普通のごく一般的な高校生をやっている。
いつも通り、学校に通う僕。
背後から、いつものツンとするきつい香水の匂いがした……。
正直、この匂い大嫌いなんだよね。
「おい! 坂! オレの荷物持って行けよ!」
予想通りだった……いつも、僕をパシリにしようとする、きつい香水の主であるこいつは、金島唯治、一応金持ちの息子らしいがこの性格から、クラス中からのけ者にされている。
「嫌だよ! 自分で持っていけばいいじゃないか」
「知らねえよ! オレが持って行けって言ってるんだ! アノことばらしてもいいのか?」
……僕がいじめに遭ってたのを知ってるからって、いい気になりやがって。
僕は昔一度だけ不良にかつあげされたことがあり、たまたま、その現場を金島が目撃していた……さて、ここで一つの疑問が浮かび上がると思う、それはなぜ、ばらされると問題なのか、答えは実に簡単、かつあげを誰かに言いつければ僕はまた不良にいじめられ、かつあげされるからである。
当然、こいつが言いふらせば、僕が言ったことになり不良に呼び出しをくらうはめになる、仕方なく、僕はこいつの言うことを聞いてるってところだ……。
「……わかったよ、持っていけばいいんだろ?」
金島は、まるで、自分より、下の人間を見下すかのように実に嬉しそうな顔をしていやがった。
教室の窓側の一番後ろが僕の席で、運悪く、その右隣に金島の席にある……。
「後は自分でやってくれよ……僕は職員室に用事があるんだ」
僕は、職員室にいる担任へとプリントを渡しに行く……。
「坂、お前はもう少し早く提出してくれないか、私の仕事も詰まってしまうだろう?」
中年の小太りした、男の先生……。
自分の仕事がスムーズにいかないのが最も嫌なことらしい、それで、よく腹を立てている。
それでも、生徒に当たらないだけまだましだが……。
「すみません、昨日ようやくプリントを見つけることができまして、遅れてすみませんでした」
僕は軽く頭を下げる。
「次からは気をつけろよ」
軽く返事をして、僕は職員室から出た。
教室に戻ると、時間は8時35分……朝のHLの5分前だった。
僕は大人しく席に着き、何かあるわけでもなく机の中に手を突っ込んだ……。
「痛っ!」
僕は反射的に机の中から手を抜き、確認をした。
左手の中指が切れていた……それの傷はまるで、紙で切ったかのようだった。
こう表現するのにも理由がある、僕は基本的には自分の指を切らないために、机の中には何もいれていないのだ。
つまり、机の中は空っぽのはずなのだが……。
机の中を恐る恐る確認してみると、そこには一本の光る刃物があった。
ナイフだった……しかも、割と刃が長めのやつだった……。
こういう、武器とかには疎いから、なんといっていいのか分からないが、大きめのナイフが僕の机の中にむき出しで入っていたのだ……。
ただ、こんなところで、出してもクラス中から悲鳴が上がるだけだから、僕はあえて、ナイフを取り出さないでいた……。
それから、何分経っただろう、朝のHLの時間はとっくに過ぎている、なのに、どのクラスもHLが始まっていないらしい。
すると、放送がかかる音がした……。
『ピーンポーンパーンポーン……えーこの学校はただいま占拠されております、外から誰か人が入ってくることや、あなたたち生徒が外に出ることも不可能です……ただ、ここから出ることも可能です……それは、全生徒の中から5人だけ抽出し、この学校から出ることができます……では、今から『学園サバイバル』の説明をしましょう……』
何が起きてるのか僕にはさっぱりだった……クラス中はパニックになるどころかどこかこの放送を馬鹿にしているようだった……。
『このゲームは『学園サバイバル』といいます……ルールはいたってシンプル……全校生徒で殺し合いをしてもらいます……そして生き残れるのは、この学校から出られる5人のみ……ちなみに、この学校には強大なジャミング装置がありますので、ケータイ、パソコンなど、外に通じるものは一切使用できません……すなわち、外からの連絡も一切届くことはありません……あなた方は、生き残り、そして、5人の中に入ればいいのです……どうでしょうか? 理解していただけましたか? ちなみに、全校生徒が生き残ることは確実に不可能です……なぜなら、5人が選ばれない限りこの学校は占拠されたままなのですから……全員仲良く餓死するか……はたまた、殺し合い5人を選ぶか……それはあなた方の自由です……』
「きゃあああああああああああああ!」
何処からか悲鳴が聞こえた……そして、その後すぐに銃声がした。
クラス中、いや、おそらく全生徒が外を見てるに違いない……。
誰かが、外に出ようとして撃ち殺されたのだ……。
辺りに人は見当たらなかった、さらに外には何もない……おそらくどこかにある機械が人を感知して、銃を撃つ仕組みなのだろう……。
それを見たクラスのみんなは、恐怖に支配されていた……。
「嘘だろ」とか「なんで」とか……さらには泣いてしまう人や……。
こういう時なぜ大人は動かないのだろうという疑問が抱かれた。
僕は、もしものために、机の中に入っていた一本のナイフを隠し持ち、職員室に向かった。