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序
「あっ。いやっ。いやっ。やめてっ。もうやめてっ。おねがい」
身体を揺すられ、ベッドに絹糸のような白銀の髪が散らばる。彼女に覆いかぶさっているのは、人間なのか。
それとも鬼か。
身体の中心に穿たれた杭から侵食されていく。いや、鬼に食い殺されていく。
『痛い。痛い。身体が引き裂かれる。怖い。いや。やめてっ!』
エメラルド色の瞳が涙を含み、光を浴びて乱反射する。その様を黒き鬼は満足そうに眺めていた。
「いや。やめて。やめて。いやーーーー!」
彼女の悲鳴が部屋中にこだまする。あの時は、自分がこんな状況に陥るなど夢にも思わなかった。
『お父様……』
肉体的にも精神的にもボロボロになり、これ以上意識を保つことに拒否反応を示した彼女の瞳はゆっくりと閉じられ、その様を鬼は恍惚の表情で見つめるのだった。