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詩集「てのひら暦」

泰山木とカンダタ【詩】

掲載日:2026/06/03

泰山木タイサンボクによりかかって

花びらの落ちるのを見ていた


重たげなのにゆっくり落ちる

水の中のように

ゆっくり落ちるその軌跡が

蜘蛛の糸のように見えて


カンダタを思う

血の池地獄から仰ぐ

蓮の花の白は

こういう清らかさだっただろうか


花びらの地に落ちる音

に椋鳥のさえずりが重なる

責め立てるように

助けを求めるかのように


ああはなりたくない

と思っていた種類のひとに

自分がなっていくおそれ


その椀のような花びらで

堕ちたカンダタをすくいあげることができるだろうか


泰山木の花の白ははるかはるか高く

丸く大きく

ぽっかりと浮かぶ蓮池のように

初夏の日差しを吸いこんでいる


花びらは落ちたそばから

色を変えていく

しなびていく

2026年6月3日制作。

本作は芥川龍之介『蜘蛛の糸』(1918)に着想を得ております。

同氏の著作権保護期間は満了しています。

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