3/4
●3●
帰りはいつも手を繋いで歩いた。
いつもあったかい手をしていた君に寄りすがるように歩く私。
「寒がりだなぁー」
「じゃあ耳あて返して」
「やだ」
終わらない言い争い。
私が手を離して駆け出すと君は急いで私の手を掴む。
「離れちゃったら俺が、耳あて奪う意味がないじゃん」
「は?」
「耳あてとったら近づいてくれるでしょ」
そう言われてから
私が
桃色の耳あてを
忘れたことは
1度もない。
「好きだよ」
どちらともなく言える言葉だった。
まさか
その言葉も
この桃色の耳あても
必要となくなる日が来るなんて。