「わたしたちが親になる日」
◆登場人物
•陽菜:修斗と苑香の長女。現在30代、CMディレクターとして活躍中。穏やかで芯が強いが、母になったことで新たな壁に直面する。
•永遠:女優として成功を収めたのち、結婚。子育てとの両立に悩みながらも、表現者であることをやめない。
•柚葉:陽菜と永遠の娘(6歳)。元気いっぱいで人懐っこい。自由な感性を持つが、時折大人びた一言を放つ。
•修斗と苑香:陽菜の両親。孫と触れ合う中で、かつて自分たちが選んできた「親としての姿勢」を改めて見つめ直す。
•蒼馬・紗良・凛音・涼真 他:時折、友人・仕事仲間として登場。
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【第一章】目覚めと泣き声
早朝5時。
柚葉の泣き声で目を覚ました陽菜は、ぼんやりした頭のまま台所へ。
寝ぼけて牛乳をこぼし、深いため息をつく。
「ママぁ〜!トワママがいなーい!」
「永遠は今日もロケ……夜には帰ってくるよ」
1人で朝ごはんを作り、保育園の準備をする陽菜。
玄関先でふと鏡を見ると、自分の目の下にクマが。
「……あたし、母親になれてるのかな」
自信のなさが、生活のすき間に顔を出す。
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【第二章】夢の途中と責任の狭間
永遠は映画主演の撮影中。
朝4時に現場に入り、深夜まで撮影が続く。
「すごくいい芝居だったよ、永遠さん!」
「ありがとうございます……」
控室でスマホを開くと、陽菜からのLINE。
【今日の柚葉:ミルクをこぼして泣いた→でも着替えは自分でできた!】
永遠はそっと微笑みながらも、心のどこかにひっかかる。
「子育て、全部任せていいのかな……」
仕事か、家族か。その狭間で、バランスをとるのは容易ではない。
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【第三章】祖父母という、もうひとつの軸
週末、陽菜と柚葉は修斗と苑香の家を訪れる。
「じいじー!ばあばー!」
柚葉が駆け寄ると、修斗が頭を撫でて笑う。
「お前、ますます苑香に似てきたなぁ」
「それ、どういう意味〜?」と陽菜が笑う。
食後、陽菜は両親に言った。
「ねえ、どうしてお母さんは、芸能の仕事をやめなかったの?」
苑香は少しだけ考えて、こう答えた。
「……あの頃、何もかも手放すのが“母親らしい”と思われてた。でも私は、自分を捨てたくなかったの」
修斗が隣でうなずく。
「母親になるって、“女優”をやめることじゃない。陽菜も、そう思ってるから悩んでるんだろ?」
その言葉に、陽菜は何も返せず、ただ柚葉の寝顔を見つめた。
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【第四章】わたしを続けるという選択
永遠が帰宅した夜、久しぶりに3人で眠るベッド。
「……柚葉、いつの間にか字も書けるようになってたんだよ」
陽菜がぽつりと言うと、永遠が小さくつぶやく。
「全部、そばにいたかった。でも、あたしは演じることをやめたら、“あたし”じゃなくなる気がして……」
陽菜が永遠の手をとる。
「分かってる。あたしも同じ。だからこそ、3人で一緒に“迷いながら”生きてこうよ」
それは、正解のない問いに、2人が出した“共同戦線”の答えだった。
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【最終章】未来をつなぐ手
数年後――
柚葉は小学3年生になり、学校での作文を陽菜に見せた。
「わたしのママはふたりいます。ふたりとも、しごとをがんばってて、よくねてないけど、
わたしのえがおがすきって、いつもいってくれます。
わたしもママみたいになりたい。えがおでだれかをしあわせにしたいです。」
陽菜は涙をこらえながら、そっと永遠に見せる。
「……あたし、ちょっと泣きそう」
「泣いていいよ」
3人の手が重なる。
それは、“完璧じゃない家族”が築いてきた、小さくて、でも確かな絆だった。
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― 完 ―
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