「はじまりのスクリーン」
〜凛花の妹と蒼馬の弟、芸能デビュー奮闘記〜
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◆登場人物
•凛音:凛花の妹。高校2年生。明るく負けず嫌い。凛花に憧れながらも「姉の影」と呼ばれることに葛藤を抱く。
•涼真:蒼馬の弟。高校3年生。クールで控えめだが演技にかける情熱は人一倍。兄に対して強い尊敬と、少しの劣等感を持っている。
•凛花:凛音の姉。すでに人気女優として活躍中。妹には少し厳しいが、心から応援している。
•蒼馬:涼真の兄。兄としてアドバイスを送るが、弟の才能に驚かされている。
•陽菜・紗良:芸能界の先輩として、2人の成長を見守る存在。
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【第一章】オーディションの海
春。
都内の某スタジオで、新人発掘オーディションが開催されていた。
「次、番号52番、凛音さんと……53番、涼真さん」
緊張の面持ちで登場した2人。
審査員の前で即興芝居を演じる。
――題材は「親に反発しながらも家を飛び出す兄妹」。
凛音の叫ぶようなセリフに、涼真の静かな怒りがぶつかる。
その瞬間、会場の空気が変わった。
「……面白い。2人は血縁者?」
「いえ、初めましてです」
そう答えた2人だが、心の奥には確かな“火”が灯っていた。
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【第二章】はじまりの不安と衝突
見事にオーディション合格。
同じドラマの新人役としてデビューが決定する。
撮影初日。
「涼真くんって、もっとちゃんと相手の芝居見た方がいいよ」
「……言われなくても分かってる」
「は? 何それ、素直じゃない」
ぶつかり合う2人。
だが、兄姉が活躍する中でのプレッシャーは共通していた。
凛音:「“凛花の妹”って言われるの、もう疲れた……」
涼真:「俺も。“蒼馬の弟”ってだけで、期待されすぎてる」
やがて、互いの苦しさを理解し始める。
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【第三章】それぞれの覚悟
夜の帰り道、凛音がぽつりと言う。
「ねえ……私、女優やってていいのかな」
「いいよ。あのオーディションの日、俺……あんたの演技、すげーって思った」
涼真が続ける。
「俺、たぶん兄貴より先に挫けると思ってた。でも、今は違う。自分の芝居で勝負したい」
「……じゃあ、さ。これからも“相棒”でいよっか」
「うん」
そして、2人は自分たちの芝居と向き合い始める。
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【第四章】初めての壁
クランクインから1ヶ月。
凛音がNGを連発し、演出家から厳しい指導を受ける。
「“凛花の妹”にしては、芝居が軽い」
その言葉に悔し涙を流す凛音。
その晩、陽菜がそっと楽屋を訪れる。
「ねえ、泣いてる時間も“女優”なんだよ」
「……どういう意味?」
「誰にも見せない時間も、カメラの前と同じ。“女優”は、全部を糧にする人のことだよ」
その言葉に、凛音は静かにうなずいた。
一方、涼真も兄・蒼馬の主演映画のプレミアに同行し、ある記者から聞かれる。
「弟さんもデビューですね。兄に続いて……どうですか、プレッシャーは?」
「……あります。でも、兄を超えるとかじゃなく、自分の道を歩くだけです」
その姿に、蒼馬が後から一言。
「その答え、今の俺よりカッコよかったよ」
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【最終章】きみと、はじまる
ドラマ最終話、再び重要なシーンがやってくる。
演出家:「このシーンはアドリブでいく。感情でぶつかって」
撮影開始。
凛音:「私は、あんたがいたからここまで来れたんだよ!」
涼真:「俺もだよ……ありがとう。俺もずっと、お前の隣にいたかった」
涙が自然と流れる。
演出家の声がかかる。
「カット。……2人とも、よくやった」
放送後、SNSで新人2人の名前がトレンド入りする。
《凛音ちゃんすごい表現力》《涼真くんの目の芝居がやばい》《この2人、次の時代の顔かも》
その夜、2人で小さく乾杯した缶ジュース。
「なあ、涼真。これからもさ、芝居で会おうね」
「ああ。スクリーンの向こうでまたな」
2人の物語はまだ始まったばかり。
“誰かの影”ではない、“自分たちの光”を目指して。
⸻
― 完 ―




