「きみと、ひかりのなかで」
〜陽菜と悠依、芸能界と家族のはざまで揺れる恋の記録〜
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◆登場人物
•陽菜:修斗と苑香の長女。18歳の女優。母譲りの美貌と演技力を持つが、芸能一家の娘として常に比較とプレッシャーに晒されている。
•悠依:俳優・モデルとして活動中の同い年。修斗の親戚の息子で、陽菜とは幼なじみ。陽菜への思いを隠していたが、再会を機に想いが動き出す。
•苑香:陽菜の母。現役トップ女優。陽菜に厳しいが、それは娘への願いから。
•修斗:陽菜の父で人気俳優。穏やかで陽菜を見守る存在。
•蒼馬:悠依のいとこ。俳優としてブレイク中。陽菜と共演経験あり。
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【第一章】交差する光
「もう“苑香の娘”って言われるの、嫌なの……」
18歳の春。
陽菜は連ドラの主演を務めていたが、メディアの質問は母・苑香の話ばかり。
そんな彼女に再び現れたのは、幼なじみ・悠依だった。
「久しぶり、陽菜。オーディションで名前見つけて、ビックリした」
「悠依……あのときのまんまだね。相変わらず優しそうな目」
偶然同じドラマで共演が決まる。
役どころは――“幼なじみから始まる恋人役”。
現実と役が重なるなか、心が少しずつ揺れ始める。
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【第二章】ファインダー越しの距離
撮影現場で、陽菜はふと悠依に言う。
「ねえ、悠依は……芸能界、楽しい?」
「楽しいって言えるほど、まだ余裕ないけど。でも……お前と同じ現場、すごく楽しい」
「……ありがと」
撮影の帰り道。
ふと手が触れそうになり、陽菜は距離を取る。
「……私、今は恋とかしちゃいけないのかも」
「それって、役者として? それとも……“苑香の娘”だから?」
陽菜は言葉を返せなかった。
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【第三章】母と娘の夜
「ねえ、ママは私に何を望んでるの?」
自宅のリビングで、陽菜は問いかけた。
「女優になるって言ったのは、陽菜よ。でもあなた、最近芝居がどこか逃げてる」
「そんなことない!」
「悠依くんと……付き合ってるの?」
「え……」
「恋をしてもいい。でもね、それを“言い訳”にしないこと。プロってそういうものよ」
厳しくも温かな言葉に、陽菜の胸に何かが響いた。
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【第四章】告白と覚悟
ドラマ最終話の撮影日。
ラストシーンは、告白のシーン――だが、監督の提案でアドリブに変更された。
「……俺は、君が笑ってるのが一番好きだった」
「……私も。君といると、自分でいられるの」
静かに涙が流れる陽菜。
監督が「カット」をかけず、そのまま2人の距離が近づいていく。
クランクアップ後。
「陽菜、俺……本気で、好きなんだ」
「……私も。ずっと、気づかないふりしてただけ」
その夜、マネージャーを通じて両家に交際の報告がされる。
母・苑香の言葉は意外だった。
「どうせ恋をするなら――本気でなさい。中途半端は一番ダサいから」
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【第五章】“陽菜”として、歩む
数ヶ月後、陽菜は舞台女優として初主演を果たす。
悠依は映画初主演が決定。
二人は多忙の中でも、支え合っていた。
取材で聞かれた。
「親御さんと比較されること、どう受け止めていますか?」
陽菜は微笑んで答える。
「それでも、私は“私”です。苑香の娘としてじゃなく、“陽菜”として生きます」
記者が静かに拍手した。
終演後、控室で悠依が待っていた。
「泣いた。完全に、お前の芝居に」
「ふふ、ありがとう。あの夜の言葉が、支えになったよ」
舞台裏で交わすキス。
それは“役”ではない、2人の未来への契約だった。
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【最終章】未来へのシーン
数年後。
陽菜はトップ若手女優として活躍し、悠依も数々の主演を務めていた。
とある作品で再び共演が決まり、記者から問われる。
「息ぴったりですね。まるで夫婦のようです」
悠依は笑いながら答えた。
「その質問には――いつか、ちゃんと答えます」
陽菜が隣でそっと微笑む。
舞台もスクリーンも、彼らの人生の一部。
だからこそ、彼女たちは今日も“自分”として、スポットライトの中を歩き出す。
⸻
― 完 ―




