第1話「新たな家族のはじまり」
都会の秋の風が少し肌寒く感じる頃、苑香は穏やかな表情で病院の診察室に座っていた。
看護師の綾さんと、かかりつけの医師・高橋先生だけが知る、彼女の妊娠の秘密。
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高橋医師「苑香さん、体調はいかがですか?順調ですよ」
苑香「ありがとうございます。少し疲れやすくなった気がしますけど…」
綾看護師「無理は禁物ですよ。赤ちゃんのためにも」
苑香は小さく微笑み、そっとお腹を撫でた。
その姿には、舞台の華やかさとは違う、母としての静かな強さが宿っていた。
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一方、同じ頃、修斗は撮影スタジオで次の作品のリハーサルに集中していた。
マネージャーの高瀬が控室に声をかける。
高瀬マネージャー「修斗さん、苑香さんのこと、何か聞いてますか?」
修斗(笑いながら)「いや、特に気にしてないよ。仕事に集中してるから」
高瀬マネージャー「SNSでいろいろ噂が出てるみたいです。ファンも心配してる」
修斗「そうか。でも俺たちのことは家族とマネージャーだけの秘密だからな」
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苑香は女優活動を一時休止し、出産に備えていた。
ファンやネット上では、彼女の体調について様々な憶測が飛び交い、結婚や妊娠の噂も絶えなかった。
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そんな中、紬はシェアハウスの管理人として忙しく動いていた。
紬(一人言)「苑香ちゃんのこと、もっと助けてあげたいな…」
彼女はそっと、子供の服やおむつを買い揃え、小さな贈り物を準備していた。
いつか赤ちゃんと対面できる日を、心から楽しみにしている自分がいた。
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ある晩、碧と彰人は偶然バラエティー番組の収録現場で修斗と鉢合わせした。
碧「修斗、お疲れ様!またテレビで会うなんてな」
彰人「元気そうだな」
修斗「お、碧!彰人!びっくりしたよ。久しぶりだね」
碧「いやあ、偶然だよな。お互い忙しいし」
修斗「本当だ。今度ゆっくり話そう」
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紬はその日、苑香のために準備した子供用品をそっと届けに行った。
紬「苑香ちゃん、これ…よかったら使ってね」
苑香(目に涙を浮かべて)「ありがとう、紬ちゃん。心強いよ」
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5人はそれぞれの場所で、それぞれの未来に向けて一歩ずつ歩んでいた。
秘密の家族を守りながら、支え合いながら。




