第5話「未来への扉、永遠のシェアハウス」
桜が舞う春の朝、瑞牆大学の正門前で紬は立ち止まり、目を細めた。制服からスーツに身を包み、彼女の瞳には新たな世界が広がっていた。
「やっと、ここまで来たんだな……」
その呟きに応えるように、春風が髪を揺らす。そこに、どこか懐かしい声が響いた。
「やっぱり紬ちゃんだった!」
振り向くと、そこにいたのは千夜。かつて海堂水産の御曹司・篤志の娘で、双子の兄・尊と共に子供時代を過ごした仲間だ。
「千夜! 嘘、なんでここに!?」
「ふふっ、瑞牆大学の経済学部に入ったの。一緒じゃん、また!」
尊もすぐに駆け寄り、笑顔で手を振る。その後ろには、桜木グループの御曹司・蓮の娘・瑞稀、さらに森財閥の現会長・梟師の娘で韓国のモデル・未来の子、綾華の姿も。
「まさかこんな再会が待ってるなんて……」
紬は目頭を熱くしながら微笑んだ。
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一方その頃、東京の撮影スタジオ。修斗と苑香は、新しいドラマの撮影初日を迎えていた。
「……カット! 修斗くん、最高だったよ」
監督の声が響き、スタッフが拍手する中、苑香は修斗に微笑みかけた。
「やっぱり修斗、芝居上手くなったよね」
「ありがとう……苑香が横にいるから、力が湧いてくるんだ」
二人は他の誰にも知られていない“秘密の夫婦”。高校卒業後、家族だけが知る静かな結婚を交わし、同じ道を歩んできた。
「ねぇ修斗、撮影終わったら……久しぶりに帰ろっか、シェアハウス」
「……うん。みんなの未来が繋がった、あの場所へ」
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名古屋グランパスの練習場では、碧がプロとして汗を流していた。
「碧ー! このパス、受け取れ!」
かつてのライバル、彰人がボールを蹴る。その背中には、鹿島アントラーズのエースナンバー。
J1の舞台で、二人はチームは違えど再び出会っていた。
「まさか、またお前と戦うことになるとはな」
「光栄だよ、彰人。兄としても、ライバルとしても」
二人の間には、言葉以上の絆があった。フィールドに立つ彼らの姿に、未来が輝いていた。
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そして春のある日、シェアハウスには懐かしい顔がそろっていた。
「ねぇ、覚えてる? ここのソファ、修斗と苑香が最初にケンカした場所」
「うるさいな、千夜……あれは誤解だって」
笑い声が広がる中、未羽がひっそりと窓辺に立っていた。彼女はかつて、彰人から想いを寄せられたが、それを優しく断った過去を持つ。
「……私は、ここに戻ってよかったのかな」
「未羽」
彰人がゆっくりと近づき、彼女の隣に立つ。
「……あの時のこと、後悔してないよ。だけど、今でもこうして話せてるのが嬉しい」
「うん、私も。今なら、ちゃんと笑える」
彼女の言葉に、彰人は静かに頷いた。
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夜、全員がダイニングに集まり、賑やかな食卓を囲んでいた。
「これからの話、しようよ」
修斗が言った。
「俺たちはそれぞれ別の道を歩いてるけど、心は繋がってる。だから、またここに、戻って来よう」
「『秘密のシェアハウス』にね」
苑香が続ける。
「紬の大学生活も、碧と彰人のJリーグも、私たちの俳優生活も……全部、ここから始まったんだもん」
皆が頷く。未来を見据えながら、それぞれの夢を手にした彼らにとって、この場所は“原点”だった。
⸻
翌朝、朝日が差し込むリビングで、紬が声を上げた。
「みんな、また会おうね。……大人になっても、この家族で」
笑顔と涙が入り混じる別れの日。
だけど、それぞれの背中には、新たな旅立ちへの希望があった。
——永遠に繋がる、シェアハウスの絆。
子供たち編、完結。
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