第4話 「交わる運命、未来へのキックオフ」
春の風が街を包み込み、新たな季節の訪れを告げる瑞牆学園。卒業式を目前に控えたある日、修斗は校舎の屋上に立っていた。風に舞う彼の髪、その瞳は遠くを見つめている。目の前には変わらない景色。でも、確かに変わっていく時間の中で、彼はひとつの決意を胸にしていた。
彼のそばには苑香。演劇部の後輩であり、女優・モデルとして活動する少女。そして、彼の心を誰よりも強く揺さぶった存在だ。
「修斗くん……」
苑香の声に振り返った彼は、真っ直ぐに言葉を口にした。
「卒業したら……一緒に暮らさないか? この先も、ずっと。俺と、結婚してほしい」
苑香は一瞬目を見開いたが、すぐに微笑み、そっと頷いた。
「……うん。あなたとなら、どんな未来でも怖くない」
ふたりの間に交わされた約束。それは、誰にも明かせない**“秘密の誓い”**。この事を知るのは修斗と苑香、そして彼らの家族、紬、碧、彰人の5人だけ。学校では、そして芸能界でも決して口にすることのない、ふたりだけの秘密だった。
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決戦のフィールドへ
卒業式前日。青葉学園と鳳凰音楽学園とのサッカー決勝戦が始まろうとしていた。MFとして活躍する碧と、彼の双子の兄・彰人は、それぞれ別の高校でプロ内定をかけた大一番を迎えていた。
「兄さん、今日こそ決着をつけようぜ」
「望むところだよ、碧」
彰人は鹿島アントラーズ、碧は傑がかつて所属した名古屋グランパスに内定が決まっていた。ふたりの夢は、兄弟でプロのフィールドに立つこと。しかし、今は宿命のライバルとして全力でぶつかるのみだった。
スタンドからは舞と傑の姿。舞の目にはうっすらと涙が浮かぶ。
「もう……立派になって……」
傑はその肩にそっと手を添えた。
「俺たちの時代は終わった。でも、これからはあいつらの時代だ」
激しい接戦の末、試合は引き分けに終わった。だが、その実力と存在感は、すでにJリーグスカウトの目に焼きついていた。
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芸能界の新星たち
修斗は健太と同じ芸能事務所に所属し、俳優としての道を歩き始めていた。オーディションで彼と共演することになったのは、苑香。ふたりは演技の中で自然と心を重ね、スタッフの間では「本当に付き合ってるんじゃないか?」と噂が立つほどだった。
だが、ふたりはあくまで“仕事仲間”として振る舞っていた。
「大丈夫。私たちだけの秘密なんだから」
苑香の言葉に、修斗は安心したように微笑んだ。
夜のシェアハウスでは、紬が緊張した面持ちで修斗に報告をしていた。
「私……来年、瑞牆大学に進学することにしたの」
「おお! 舞おばさんや健太おじさんも行ってた大学だろ? すごいじゃん!」
「うん……それだけじゃなくて……。なんとね、篤志おじさんの双子の娘と、蓮さんの息子、未来おばさんの娘と再会することになるの」
「マジで!? そんな再会あるんだな……。シェアハウスの子供たち、みんなどこかで繋がってる」
彼らの物語は、過去から未来へと繋がっていく。
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最後の夜、そして新たなる旅立ち
卒業式の夜、シェアハウスのリビングに5人が集まっていた。
「ここで過ごした日々、全部宝物だよ」
紬がそう呟くと、苑香も続ける。
「みんなに出会えて、よかった」
「俺たちの夢はまだ始まったばかりだ。負けるもんか」
碧が言い、彰人も笑った。
「俺たち、兄弟でいつか代表戦に出ようぜ。世界の舞台で、な」
そして修斗は、静かに言った。
「俺は……苑香と、家族になる」
静寂の中で、誰かが息を飲んだ。
「……知ってる。知ってたけど、やっぱり言われるとドキドキするね」
紬が微笑んで言った。
「この5人だけの秘密。だからこそ、きっと強くなれる」
夜が更け、未来への扉が開く。
次回、第5話――
「未来への扉、永遠のシェアハウス」
紬が瑞牆大学で出会う仲間たち。修斗と苑香の新婚生活、碧と彰人のプロデビュー戦。そして、親たちの軌跡を継ぎ、次の世代へと繋がる物語の終着点へ。
運命は交わり、想いは繋がる。
――すべては、あのシェアハウスから始まった。




