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第9話「揺れる想いと未来への決断」


1. 彰人の揺れ動く心


夜の静寂の中、彰人は梨乃茅からのメッセージを何度も読み返していた。


「美羽が、本気で芸能界に進もうとしてる。母としても元アイドルとしても、応援したい。でも、あなたの気持ちもちゃんと聞きたいの」


梨乃茅の言葉は、どこか母としての懇願でもあった。

葵蘭と健太の娘である美羽は、何をするにもまっすぐで、情熱を隠さない。

その姿が、今の彰人の迷いを照らすようで、彼の心を揺らしていた。


「……俺は、誰のことを好きなんだ?」


光莉も、紬も、美羽も、それぞれに大切だった。

だが、恋は選ばなければならない。

誰かの隣を選べば、必ず誰かを置いていく。

それが痛くて、ずっと立ち止まっていた。



2. 美羽との再会


翌朝、彰人は一人、学園の裏庭で美羽と向き合った。

彼女は珍しく制服姿ではなく、母・梨乃茅のお下がりのジャケットを羽織っていた。


「ねえ、彰人。私、アイドルになりたいの。本気で、GRT48のセンターになるつもりでいる」


目に宿る覚悟。そこには少女の儚さではなく、芯の強さがあった。


「だけど――それでも、あなたのそばにいたい。家族としてでも、恋としてでもいい。ただ、私の人生にいてほしいの」


彰人は無言のまま、美羽の瞳を見つめた。

この子もまた、同じように自分の人生に全力で向かっている。



3. 紬と光莉の本音


同じ頃、リビングには光莉と紬がいた。

気まずい空気を破ったのは、紬だった。


「光莉、正直に言うね。私も、彰人のことが好き。……ずっと前から」


光莉は苦笑しながら、頷いた。


「私も。でも、私たちがこんなふうに競う必要ってあるのかな」


紬が少し驚いた顔をした。


「え?」


「だって、彰人が選ばなきゃ意味がないでしょ? 私たちは、待つしかない。……あの人が本当に、誰を大切にしたいのかを」


そこにあったのは、争いではなく静かな決意だった。



4. 彰人の選択


その夜、リビングに4人が集まった。

美羽、光莉、紬、そして彰人。


静まり返った空気の中、彰人が立ち上がる。


「ずっと逃げてた。誰も傷つけたくなくて、誰も選べなくて。でも、それって自分のことしか見てなかったんだと思う」


光莉と紬がまっすぐ彼を見つめ、美羽が一歩前に出る。


「だから――俺は、答えを出すよ」


部屋に一瞬、緊張が走った。


「……俺が今、一緒に未来を見たいって思ったのは――」


沈黙。


「……美羽だ」


光莉と紬の瞳が揺れる。

だが、彼女たちは泣かなかった。

どこかで、薄々感じていたのかもしれない。

美羽のひたむきな強さと、彰人のまっすぐな目が重なった瞬間。


「……ありがとう。ちゃんと答えてくれて」


紬がそっと微笑み、光莉も小さく頷いた。



5. 一歩、未来へ


深夜、テラスで美羽と二人きりになった彰人は、手を差し出した。


「これからは、君と一緒に歩いていきたい。恋愛としてだけじゃない。夢も、家族も、全部を背負いたい」


美羽はその手を取る。

「私も――全部、あげる。私の人生に、あなたがいてくれるなら」


月明かりが二人を包み込み、ゆっくりと新しい関係が始まっていった。


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