第6話「佐野美羽、シェアハウスに現る」
1. 新たな風の訪れ
秋の気配が漂い始めたある日の午後、シェアハウスの扉が静かに開いた。
そこに立っていたのは、10代半ばと思われる少女。黒髪を揺らしながら、少し緊張した面持ちで顔をあげる。
「はじめまして。私は佐野美羽です。葵蘭と健太の娘で…このたび、こちらでお世話になることになりました」
その声は柔らかく、けれど確かな決意を含んでいた。
光莉が微笑みながら迎え入れ、紬も優しく手を差し伸べる。
彰人はしばらく黙って美羽を見つめていたが、やがて控えめに言った。
「ようこそ。これからよろしくな」
美羽は小さくうなずき、照れくさそうに笑った。
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2. 美羽の秘密
夜になり、シェアハウスのリビングで美羽はみんなに話し始めた。
「私には、ずっと叶えたい夢があります。
母の葵蘭さんは、皆さん知っている通りGRT48のメンバーで、私も音楽に憧れているんです。
でも、母の背中を追うだけじゃなくて、自分の道を見つけたい。
それで、このシェアハウスで色々な経験を積みたいと思って…」
彰人はその話に耳を傾けつつ、内心で何かが動き始めていた。
「…そうか。お前も音楽を?」
「はい。まだまだ未熟だけど、ここでみんなと一緒に成長したいです」
光莉が言葉を継いだ。
「私たちもそれぞれ悩んでいる。夢もあれば、葛藤もある。
でも、みんなで助け合えば乗り越えられるはず。美羽さんも仲間だよ」
美羽は涙ぐみながらも力強くうなずいた。
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3. 彰人の揺れる想い
翌日、彰人はひとり屋上に立ち、夜空を見上げていた。
美羽の姿が思い浮かぶ。
「――俺は、あの子に何を伝えられるだろうか?」
自分でも気づかなかった感情が芽生えていた。
それは紬や光莉とは違う、純粋で新しい“恋心”だった。
しかしその一方で、紬と光莉との関係もまだ整理がついていない。
心の中の迷いが、ますます深くなるばかりだった。
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4. 新たな挑戦
シェアハウスの一角にある音楽室では、美羽がピアノに向かっていた。
誰もいない静かな空間で、彼女は自分の内側にある声を探す。
「私は、母のように誰かの心を動かせる音楽家になりたい。
でも、ただ真似をするだけじゃだめ。自分の色で奏でたい」
そんな美羽の真剣な姿に、光莉がそっと近づいた。
「私も応援するよ。お互いに頑張ろうね」
二人の間に、新しい友情が生まれた。
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5. 未来への決意
夜が更け、シェアハウスの窓から見える街の灯りがひとつ、またひとつと輝きを増していく。
彰人は胸の中で誓った。
「誰かを好きになることも、誰かを傷つけることも怖いけど――
逃げずに向き合っていく。未来は、ここから始まるんだ」
紬と光莉、そして美羽。三人の少女が、それぞれの想いを胸に秘めながら、これからの日々を歩んでいく。
そして、彼らの物語はまだ続く――




