第5話「若き日の約束」
春の香りがようやく訪れ、梅の花が静かに咲き始める頃――
舞は押し入れの奥から、一冊のスクラップブックを見つけた。
タイトルは手書きでこう書かれていた。
「シェアハウス青春日誌」
中には、彼女たち4人が高校時代から記録していた写真や落書き、そして日記のようなメモがびっしりと詰まっていた。
「懐かしい…」
思わず声が漏れ、すぐに健太と葵蘭、傑を呼んで集まる。
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過去の約束、現在の自分
ページをめくると、高校2年の文化祭の写真が現れた。
舞がアイドルのコスプレをして、傑に変なポーズを強要している。
葵蘭は演劇部の舞台のポスターの前で、健太とふざけている。
――そして、あるページに、4人の直筆のメッセージが記されていた。
「未来の私たちへ」
もし、これを読んでるのが50歳以上の自分たちなら、まだ夢を追ってる?
シワは増えても、心は若くありたいね。
結婚してるかな?子供いるかな?
でも、きっと4人一緒に、笑ってる気がする。
未来の私たちに――負けるな!
(葵蘭・健太・舞・傑より)
健太が「うわ、字が若い」と笑い、傑は照れ隠しに「舞のポーズ、黒歴史じゃん」とつぶやく。
だがその目は、確かにうるんでいた。
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実現していた「夢」
「それにしてもさ、けっこう叶ってるよな。俺たちの夢」
と健太。
彼は今、俳優として舞台を中心に活動している。
地方の劇場で、小さな役でも光を放ち、演技指導もしている。
葵蘭は脚本家兼演出家として、若い役者たちを導いていた。
テレビに出ることは減ったが、その分、舞台を通して命を紡いでいた。
舞は現在、地元の演劇塾の代表として子どもたちを指導している。
傑は引退後、全国の学校やクラブを回ってサッカーを教えている。
「なあ、こうして見返すとさ」
傑が言った。
「俺たち、ちゃんと“生きてきた”って感じするよな」
葵蘭が、ぽつりとつぶやいた。
「夢を諦めなかったからこそ、今の私たちがあるんだよね…」
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若き日の約束
その夜、4人はスクラップブックの最終ページに、もう一度メッセージを記すことにした。
「未来の誰かへ」
私たちは、かつて夢見た通りに生きられたかはわかりません。
でも、出会い、愛し、ぶつかり、笑い、泣いて――
それでも共に生きた時間が、すべてを支えてくれました。
大人になるって、つらいこともあるけど、悪くないよ。
忘れないで、誰かと一緒に笑えた日々が、未来をつくっていく。
そして、いつかまた…
シェアハウスのリビングで、笑い合えますように。
――葵蘭・健太・舞・傑
その瞬間、外で風が桜の蕾を揺らした。
季節はまた巡る。若き日の約束は、静かに未来へ引き継がれていく。




