第1話「出会いとシェアハウス」
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瑞牆学園の春。校門をくぐる高校3年生の佐野葵蘭は、いつもと違う胸の高鳴りを感じていた。18歳。あと一年で卒業だ。だが今年はただの一年ではない。彼女には、秘密にしている大切なことがあった。
それは、彼氏の岡田健太と、親友の早坂舞、そして舞の婚約者であり健太の先輩でもある坂下傑。この四人で、ひとつ屋根の下に暮らしているということだ。
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瑞牆学園は広く、校舎は新しく、学園祭も盛大に行われる人気の学校だ。葵蘭は舞と同じクラスだが、健太は別クラス。傑はすでに20歳で社会人、サッカー選手として名古屋グランパスに所属している。高校の先輩でもあり、プロサッカー選手としての輝かしい未来を期待されている。
「葵蘭、今日からまたよろしくね」教室で舞が笑顔で声をかけてくる。舞は元々傑の熱烈なファンであり、傑と婚約中だという事実は、親しい人以外には秘密だった。二人はまだあまり公にできない関係であった。
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放課後。四人が暮らす共同住宅のリビングに集まる。広いリビングには、彼らの写真や思い出の品が自然に置かれている。部屋はそれぞれの個性が反映された空間だ。葵蘭は窓辺の席に腰かけ、健太はテレビの前でストレッチをしながら、舞はキッチンで料理の準備をしていた。傑は携帯でサッカーのニュースをチェックしている。
「今日もみんなお疲れさま。新しい一年も頑張ろうな」傑の声がリビングに響く。体育会系の彼の声には不思議と安心感があった。
「うん、傑先輩がいるから心強いよ」舞が照れたように微笑む。
葵蘭はふと、自分のスマホを見つめた。彼女の家族も、健太の会社の社長やマネージャーも、このシェアハウスの秘密を守ってくれている。もしこの事実が漏れれば、彼らの立場も夢も壊れてしまう。
「これからも秘密は守ろうね」葵蘭がみんなに向けて小さな声で言った。
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夜、窓の外には満天の星空が広がっている。四人はそれぞれの部屋に戻る前にリビングで語り合った。夢の話、将来の不安、恋愛のこと…。
「傑はプロのサッカー選手で、舞と婚約している。健太は俳優としてこれからの活躍が期待されている。葵蘭は芸能一家の期待を背負っている」と、彼らはそれぞれの役割と責任を強く感じていた。
「俺たちは家族みたいなものだな」健太がぽつりと言った。
葵蘭はうなずきながら、「そう、だからこそ支え合わないと」と返す。
秘密のシェアハウスは、単なる共同住宅ではなく、彼らの夢や希望、未来を守る場所でもあった。
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翌日、葵蘭は学校で友達に笑顔を向けながらも、心の中ではシェアハウスのことを思い返していた。
「ここでの生活が、私たちの人生をどう変えていくんだろう…」
新しい春、新しい出会い。秘密を抱えた四人の青春が今、幕を開けたのだった。