第6話「友の裏切り?」
「信じる」って、いったいどういうことなのか──
それが問われる出来事が、ある日突然、彼らの日常を揺るがした。
⸻
【SNSに流れた“1枚の写真”】
ある日の夕方。舞は大学のカフェテリアで友人に声をかけられた。
「ねえ、舞ちゃん……この写真、本物?」
スマホの画面には、舞と健太が並んで歩く写真が映っていた。
どう見ても、距離感が“親密すぎる”。
場所は、箱根旅行の帰り道の駅。
人目も少なく、まさか誰かに撮られているとは思わなかった。
「……これは、ただの偶然。そんな意味じゃないよ。」
舞はそう否定したが、SNSでは既に“匂わせ”“略奪愛?”などという言葉が飛び交っていた。
その日の夜、葵蘭のスマホにも通知が届く。
《佐野葵蘭、親友と彼氏に裏切られる?》
──そんな文字が、匿名のゴシップ掲示板に踊っていた。
⸻
【葵蘭の沈黙】
葵蘭はその写真を見ても、驚くでも怒るでもなく、ただ静かに画面を閉じた。
けれどその手は、かすかに震えていた。
その夜、リビングで健太と顔を合わせたときも、彼女は何も言わなかった。
「……葵蘭、その……あれは、誤解なんだ。写真のこと、ネットの噂も……全部。」
「わかってるよ。私は、健太を信じてる。」
それだけ言って、葵蘭は部屋に戻った。
でも、扉が閉まる直前の彼女の横顔は、どこか寂しげだった。
⸻
【傑の怒り】
翌日、傑は練習の合間にその写真を見せられた。
チームメイトが茶化すように言う。
「坂下、これヤバくね? お前の婚約者と、彼女の彼氏だろ?」
「……誰が撮ったんだ」
傑は冷静を装っていたが、グラウンドに戻る頃には拳を握りしめていた。
夜、シェアハウスに帰ると、リビングには舞だけがいた。
「傑……信じてるよね、私のこと」
「舞、お前……正直に言え。健太のこと、どう思ってる?」
一瞬、舞の目が揺れた。
「……好きだった。少しだけ。でももう違う。私にはあなただけだから。」
傑はしばらく黙っていたが、低くこう答えた。
「……そう信じたいよ、俺は。」
⸻
【健太の選択】
騒動が落ち着かないまま、健太の元にも事務所から連絡が入る。
「今は距離を置け。交際がバレればCMの契約に響く。シェアハウスも、もう危うい。」
社長の判断は冷酷だった。
それでも、健太は言った。
「逃げません。俺はここに残ります。大事な人たちを守れるようになるまでは。」
⸻
【芽依の言葉】
数日後、葵蘭の姉・芽依がふらりとシェアハウスを訪れた。
玄関で、舞と葵蘭が鉢合わせる。
「……舞ちゃん。信じてるよ。あんたはそんな子じゃないって。」
そう言って微笑む芽依の目は、優しく、けれど鋭かった。
「でもね、信じるってのは、都合のいい言い訳に使っちゃダメ。
自分の“信じたい気持ち”に、ちゃんと責任を持ちな。」
その言葉が、舞の胸に深く刺さった。
⸻
【壊れかけた絆、揺れる想い】
シェアハウスの空気は、どこかぎこちなくなっていた。
食卓を囲んでも、会話は短く、目も合わない。
けれど、4人はまだ「壊したくない」と思っていた。
舞は日記にこう書いた。
「“裏切り”って、人の心を試す言葉だと思う。
でも、本当に壊れるのは、黙ったままでいること。」
そして、夜。舞は意を決して葵蘭の部屋をノックした。
「話せる……?」
「うん。私も、聞きたいことがあったの。」
その扉の向こうで、ふたりの親友は──ようやく“向き合おう”としていた。




