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『ただいま、先生――10年越しの再会』


◆1. 春の便りと、懐かしい名前


「ほのか、これ…高校からだよ」


佐野家のリビングに届いた、一通の白い封筒。差出人には、母校「瑞牆学園高校」の名前と、そして…


苑香:「…“吉永雅子先生”って…」


修斗:「俺たちの担任だった…あの先生だよな」


高校卒業からちょうど10年。結婚・芸能界デビュー・出産・子育てを経て、ようやく少し落ち着いた今、2人のもとに届いたのは「退職記念同窓会」の案内だった。


苑香:「行こうか、修斗。恩返し…したいよね」


修斗:「あぁ。ずっと言いたかった。“ありがとう”って」



◆2. 母校へ――変わらない空、変わった自分たち


久々に訪れた瑞牆学園高校。満開の桜が、校門の上で春風に揺れていた。


苑香:「ねぇ…見える? 私たち、ここで…初めて手、繋いだよね」

修斗:「あの頃の俺らに言いたい。10年後、子ども5人いるよって(笑)」


変わらない校舎に、懐かしい校庭のにおい。2人はそのすべてを、胸いっぱいに吸い込んだ。



◆3. 再会――恩師の涙と、教え子たちの成長


会場の視聴覚室に入ると、そこには年を重ねた吉永先生が、変わらぬ優しい笑みを浮かべて立っていた。


吉永先生:「佐野くん…蝗さん…来てくれたのね。変わらないわね、2人とも」

苑香:「先生…」

修斗:「お久しぶりです!」


駆け寄る2人を、先生はそのままぎゅっと抱きしめた。


吉永先生:「…ずっとテレビや雑誌で見てたのよ。子どもも、5人いるんですって? すごいわ、本当に…誇らしいわ」


苑香:「先生がいたから、今の私たちがいるんです」


修斗:「俺…高校のとき、自分に自信なくて。先生が“君は演じる力がある”って言ってくれたこと、今でもずっと覚えてます」


吉永先生の目には、涙が浮かんでいた。



◆4. 子どもたちも一緒に――家族で「ただいま」


そこへやって来たのは、双子の花音と月詩、そして蒼空・冬翔・結愛の5人の子どもたち。


蒼空:「こんにちはー! 僕たち、修斗と苑香の子どもです!」

吉永先生:「まあ…こんなに立派に…! なんて素敵なご家族」


月詩:「パパとママの高校、キレイだね!」

花音:「ここで2人は恋をしたんだよ〜ってパパが言ってた!」


苑香:「ちょっと、花音! そういうのは内緒よ〜」

修斗:「でも、間違ってない(笑)」


吉永先生:「ふふ…こうして“家族で帰ってきてくれる”なんて、教師冥利に尽きます」



◆5. 黒板に刻む「ありがとう」


先生の退職祝いとして、生徒たちが黒板にメッセージを書いていく。

そこに、苑香と修斗もチョークを取って、こう書いた。


「“本物の自分”を見つけてくれた先生へ。ありがとう。

僕たちは、先生の教室から人生を始めました。」

――佐野修斗・蝗苑香より


吉永先生:「あなたたちの幸せが、私の一番の誇りです。これからも、家族みんなで“自分らしく”歩んでいってね」


修斗・苑香:「はい…先生。本当に、ありがとうございました」



◆6. 帰り道――桜とともに歩く、今


帰り道、校門を出たところで、家族5人で並んで歩く。


苑香:「ねぇ、またここに来ようね。いつか、この子たちの入学式とかで」

修斗:「うん。あの日の俺たちを見て、先生は信じてくれたんだな。今度は、俺たちがこの子たちを信じる番だ」


桜の花びらが、静かに5人の肩に落ちる。

高校からの“ただいま”と“ありがとう”が、風に乗って彼らの胸に残った――。


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