続編 「ふたりが、親になる日」
第一章:新しい命
ある春の日のこと。
陽葵は病院のベッドで、緊張と期待が入り混じった表情をしていた。
診察室から出た陽葵を、待合室で待っていた凛翔が見つけて駆け寄る。
「……どうだった?」
陽葵は、そっとお腹に手を当てて微笑んだ。
「新しい家族……できたみたい」
凛翔はしばらく言葉を失い、それから笑顔で彼女を抱きしめた。
「ありがとう、陽葵……!」
小さな命の鼓動は、ふたりの生活に優しく、そして確かに変化をもたらしはじめていた。
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第二章:親になる準備
妊娠生活は、幸せと不安の連続だった。
「名前どうする?」「ベビーベッドってどこに置く?」「陽葵の体、大丈夫?」
凛翔は不器用ながらも毎日勉強し、家事をこなし、陽葵を支え続けた。
ある日、陽葵が不安そうに言った。
「私、ちゃんとママになれるかな……?」
その言葉に凛翔は言った。
「陽葵が“ママになりたい”って思ってる限り、大丈夫だよ。ふたりで、一緒に親になるんだ」
その夜、凛翔の腕の中で眠る陽葵は、少しだけ強くなれた気がした。
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第三章:出産、そして対面
出産の朝。
長い陣痛の末、ようやく新しい命がこの世界に生まれてきた。
「おめでとうございます、女の子です!」
陽葵は汗に濡れた髪のまま、力なく微笑んだ。
「……凛翔、ほら……」
凛翔は抱っこされた赤ん坊を見て、涙をこぼしそうになった。
「……ちっちゃい、あったかい……陽葵、本当にありがとう」
ふたりの間に生まれた、もう一人の“家族”。
彼女の名は――紬。
その名のとおり、家族の絆をひとつひとつ丁寧に紡ぐように。
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第四章:はじめての夜
退院して数日。
夜泣き、オムツ替え、授乳――初めてのことばかりで、ふたりは眠れぬ日々を過ごしていた。
「ごめん、私、こんなに弱いママで……」
「陽葵。眠れてなくて、疲れてても……君がそばにいるだけで、紬は安心してると思うよ」
「……凛翔だって、ぜんぜん寝てないじゃん」
「まあ……“最初の修行期間”ってことで」
そう言って笑い合いながら、夫婦は交代で赤ん坊をあやす。
夜明け前のリビングに、小さな揺りかごのリズムが響いていた。
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第五章:小さな奇跡の積み重ね
紬が笑った日、寝返りした日、はじめて「まま」「ぱぱ」と言った日――
どれもが特別で、どれもが尊かった。
休日の朝。凛翔が赤ちゃんを抱っこしながら言う。
「この子が大きくなって“家族ってなに?”って聞いてきたら、なんて答える?」
陽葵はすこし考えて、優しく微笑んだ。
「“いちばん近くで、いちばん想ってくれる人たち”かな」
「……それ、いいな」
ふたりは目を合わせ、笑顔を交わす。
――家族が、またひとつ強くなった瞬間だった。
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―次世代特別編・子育て編:完―




