第1話「新生活の始まり」
あの卒業式から半年後。
4人は、それぞれ新たな一歩を踏み出していた。
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【葵蘭】
彼女は今、東京都内の芸能事務所に所属し、本格的に女優として活動していた。
初めての連ドラ出演、雑誌の撮影、演技レッスンに追われる毎日──
自由だけど、孤独でもある世界。
ある日、ドラマの撮影現場で、先輩女優に言われた。
「佐野さん、あなた笑顔は綺麗。でも、本音が見えないわ。」
その言葉が、葵蘭の胸に刺さった。
帰宅後、一人きりの部屋でスマホを開き、舞にLINEを送る。
「舞、みんなに会いたいな。」
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【健太】
ロサンゼルスでの撮影を終えた健太は、短い休暇を取って日本に一時帰国した。
記者に追われる日々の中でも、彼の心が向かうのは、あのシェアハウスだった。
久しぶりに立ち寄った空き家の前で立ち止まる。
「帰ってきたら、みんなまだいる気がするんだよな……」
ふと、ポケットの中の写真──4人で撮った卒業式の一枚を見つめる。
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【舞】
大学の講義に、ゼミ活動、学生団体の運営……毎日が目まぐるしく過ぎていた。
だが、舞の心は強くなっていた。
「私は、“誰かの隣”にいるだけの人生じゃない。」
そう思わせてくれたのは、葵蘭の存在と、シェアハウスの時間。
放課後、大学のカフェでパソコンを閉じ、独り言のようにつぶやいた。
「次にみんなと会うとき、私はちゃんと“私自身”でいよう。」
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【傑】
名古屋グランパスの試合が終わるたびに、舞の大学の話を思い出す。
試合後のインタビューで記者に言った。
「僕には、原点があります。どれだけ遠くにいても、あの時間が、僕を支えてくれる。」
代表候補合宿を目前に控え、さらなる飛躍が求められる彼だが──
心の一部は、まだあの家のままだった。
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そして──
秋のある日。
一通のメールが、4人それぞれに届いた。
差出人:佐野芽依
件名:シェアハウスに、もう一度集まらない?
内容:
「実はね、あの家、しばらく貸し出さずに空けてるの。みんなでまた、少しだけでも“再会”しない?」
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静かに、それぞれの心が揺れ動き始める。
それは、新たな生活と、新たな友情の幕開けだった。




